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水泳事故を起こさないプール監視のために

児童クラブの存在は、保護者と子供にとって極めて大きい。
児童クラブがあるから、保護者は安心して働くことができるし、子供たちも有意義な時間が過ごせる。

この夏休みも、児童クラブの方々のお陰で、子供たちは思い出に残る夏休みをつくることができているといえる。

例えば、児童クラブの指導者が、地域の学校や施設で開放しているプールに子供たちを引率してくださることに対しても感謝の言葉を申し上げたい。

だからこそ、活動先のプールでの事故が絶対に起きないことを心より願う。

そこで、その一助になるかもしれないと考え、私が教師として水泳指導やプール監督を通して学んだことや大切にしていたことをお伝えしたい。

子供たちをプールで活動させる場合の「プール監視」に絞って述べる。


1.    前提

①必ず心肺蘇生法の講習を受けておくこと

 AEDの使い方も含めて、一次救命処置の方法を知らない指導者が子供たちをプールに引率するのは、危険過ぎます。

②子供の人数と活動に合わせた数の指導者が引率すること

 まず、どれだけ子供の数が少なくても、指導者は二人以上でなくてはいけません。
 
 あとは活動内容にもよりますが、一つのプールに指導者が四人は必要です。
 
小学校のプールのように、大、小の二つのプールがある場所で両方を利用するなら、できれば八人、それが無理ならば、六人は絶対に必要です。
 

③引率する子供たちの泳力を把握しておくこと

 泳げるのか泳げないのか、泳げるとしても何mぐらい泳げるのかをしっかり掴んでおくことが必要です。
 
 仮に「泳げる」と子供が言っても、初回は様子を見ると良いと思います。
 
 そして、25m泳げない子は、「大プール」は絶対に禁止するべきです。
 その子は、「学校では入っている!」と主張するかもしれませんが、それは教師が泳力向上のための指導として大プールを使用しているのであり、「自由に遊ぶ」形式では、25m泳げない子の「大プール」使用は危険です。

 さらに、身長の考慮も不可欠ですが、そのことは、この後に述べます。

2.    プールに子供たちを入れる前に


①まず、準備体操とシャワーで子供の「体の事前準備」を確実に

②プールの構造を把握します

 排水口(循環のための吸水口)の位置を確認します。
 事故が起きやすい場所です。
 子供が吸い込まれてしまう場合があるのです。
 位置を把握し、監視の時に、そこを特に注意してみます。

 深さの形状も把握しておきます。
 プールによっては、途中から底が下がっていて深くなっている場合があります。
 それを知らずに子供を泳がせていて、子供が溺水してしまったら大変です。

 なお、子供の身長よりも深いプールは、絶対に使用をさせません
首の深さで顔が出る状態でも危険です。水泳指導の経験が少ない方が引率するのです。
 水面が胸の位置ぐらいがギリギリセーフだと思ってください。

「コースロープにつかまれば…」などと考えないでください。危険です。
そもそも、コースロープは、つかまって浮くための物ではありません。
国際的な水泳大会で泳ぎ終わった選手がコースロープに体を預けている様子が映し出されますが、真似をさせてはいけません。コースロープが切れやすくなります。

3.      遊泳中の監視の仕方

①監視は対角線の位置で、ローテーションをして

 引率した子供の人数や活動にもよりますが、基本はプールサイドで監視します。
 それも、プールの長方形の各頂点に一人ずつ立ち、対角線状に手前を主にしてプール全体を視野に入れて監視します。
 だから、四人必要なのです。
 
 もし、二人で監視せざるを得ない場合は、対角線の位置に立って、同じ側にならないようにします。
 三人いたら、もう一人は、長方形の一つの長辺の真ん中辺りから監視すると良いと思います。
 
 そして、10分から15分に一回、監視位置をローテーションによって変えます。
 同じ位置で見続けることによる集中力の低下を防ぐためです。

 監視台からの監視は、不慣れな者はやめるべきです。
 集中力の持続の難しさ、交代時の監視の徹底の難しさ、いざという時の初動の遅れやすさなどが理由です。

 ちなみに、こうした基本を最近は教師でも知らなくなってきていることを実感しています。

②監視のポイント

・まず、「頭」を見ます
 水から出ているかどうか。一度もぐった頭が、再び、すぐに出てくるかどうか。
 「頭」を見ていると、「数が減った」時に、違和感を感じ取りやすくなります。

・次に、「動き」を見ます
 どんな遊び方、泳ぎをしているか。
 危険なことをしている子供はいないか。「引っ張る」「押さえ込む」ような動きは要注意です。
 
 また、「動きのなさ」にも気を配ります。じっとしていて動かない子はいないかを見ます。
 遊泳中の事故は、溺水だけではありません。心臓発作もあるのです。子供の健康状態全般を意識して子供を監視することが必要です。
 
 寒そうにしていたり、妙に動きが不活発だったりと体調不良の考えられる子がいたら、声を掛けたり、一度プールから出したりするべきです。
 
 もちろん、「飛び込み」は、禁止です。足からの飛び込みもさせません。遊泳中の他の子供にぶつかって事故になる元です。

プールサイドにも気を配ります。
 子供が走り回っていないか。転倒は重大事故につながります。
 
 プールサイドに危険物がないかも見ます。
 学校では、水泳指導の前に教師は、必ずプールの中、プールサイドに危険物がないかを見て回ります。ガラスの破片で遊泳中の子供が足の裏を切ることがあるからです。

4.    休憩中の見届け

 10分から15分に一回、子供をプールから出しましょう。
 人数を確認し、健康状態をチェックしてください。
 5分は休憩させたいです。こちらが思っている以上に、子供は水の中で疲労しています。
 疲労が、溺水につながる場合もあるのです。

 もちろん、必ず、飲水させましょう。
 水温が高い場合は、プールの水の中でも熱中症になる場合があると聞きます。

5.    プールから出た後

 人数を確認し、健康状態をチェックしてください。

6.    その他

 以前にも、この「ヒント帳」で書きましたが、人は、「静かに溺れる」そうです。
 パニック状態になって叫びながら水を掻き散らして溺れている姿は、映画やテレビドラマの世界です。
 だから、怖いのです。
「気が付いたら溺水していた」ということが、絶対にないように、その前に子供の異変に気づきましょう

 以上です。
 何かのお役に立つならば幸いです。