見出し画像

運動会リレー系「競わせる」だけではだめ!学年集団を育てる指導展開の「極意」!?

 運動会では、団体競技で「リレー系」を行う場合がよくあります。
 例えば、「台風の目」、「だるま運び」、「大玉運び」、そして、バトンをつないでいく一般的な「(学級全員)リレー」などです。

 この学年団体競技のための練習を、きっと4時間前後は行うのではないでしょうか。

 この4時間前後の時間をどのように組み立てるのかは、かなり大切なことだと思います。

「競わせる」だけでは

 団体演技なら、段階的な指導を積み重ねて「完成」させていくのでしょうが、団体競技の場合は、毎回「レース=勝負」という場合が多い気がします。

 しかし、それでは、子供たちは、ただ「隣のクラスに勝ちたい」と思うだけだったり、意欲的に取り組まなかったり…ということが多いのではないでしょうか。その結果、教師だけが「燃えて」、叱咤激励したり、学級だけの練習時間を取ったりなどという様子を見掛けたことがあります。

 「今」の子供たちは「昔」と違って興味の対象が多様化し、学級内に共通の文化が生まれにくくなっています。
 「級友と同じことに取り組むことを楽しむ」気持ちが、前提として不足していると思います。「学級対抗」で何かを行えば、学級集団が団結したというのは「昔」の話です。教師だけが「燃えて」も、子供たちは付いてこないでしょう。

 だから私は、学習集団として学級・学年集団を育てることをオススメします。

 学年団体競技のための「単元」展開の工夫として、次の進め方はどうでしょうか。

団競指導の「単元」展開の工夫

①運動会の練習も体育の授業時間です。
 だから、体育の資質・能力を育てることを考えます。
 「行事の練習」感覚で行い、毎時間同じことを繰り返すから、子供が「燃えない」のです。1時間ごとの「目標」がないからなのです。

②そこで、「学年大会」という設定にして、各時間の目当てをしっかりともたせます。
 例えば、「リレー」だったら、「学年リレー大会」を開くという設定で、「練習」の時間を構成します。
 その時、4時間前後は行うであろうその「練習=大会」の時間の1時間ごとに、「目当て」を設定します。
 例えば、「バトンを落とさない」「リードをしてバトンをもらう。ただし、オーバーゾーンをしない」、「元気のよい声(拍手)で応援する」、「コーナーをスピードに乗って走る」などと、子供たちの実態や学年の体育のねらいに応じて、段階的に毎時間設定します。

 そして、その目当てが達成できた学級は、「目当て点」を5点もらえます。もし、全学級が達成できていたなら、「目当て点」では引き分けです。そこに「順位点」も合計して大会の総合結果を出します。例えば3クラスなら、1位が3点、2位が2点、3位が1点などとします。

 運動会当日については、「まとめの大会」とし、これまでの「目当て」を達成することを目標とさせます。
 
 この方法で行うと、次のよさがあります。

・「バトンを落とさない」などの目当てに向かって練習をしたり、「大会」に取り組んだりすることで、体育学習としての<知識及び技能><思考力、判断力、表現力等>のねらいに迫ることができます。
・それにより、子供たちの目標が明確になり、勝敗だけにこだわらなくなります。たとえ総合結果が最下位になっても、「目当て」が達成できたクラスの子供達は、ある程度の満足感を感じているようでした。そして、最下位という総合結果に、不満はあっても感情的にならずに受け入れている様子が見られました。
・その結果として、学級内、学級間がギスギスすることもなく、むしろ、学級・学年内に一体感が生まれました(担任教師が熱くなりすぎない限りは)。<学びに向かう力、人間性等>に関する学習事項に迫れていたと思います。

団競指導の「単元」展開の過程

 上に記したことを「単元」展開の過程として、表すと次のようになります。

<第1時>競技方法や場所、ルール、チームや順番決め、さらに、並び方や待ち方、安全指導など。時間があれば、「お試し」で一度レースがやれるとよい。子供がイメージできるようになる。

※ちなみに、運動会に限らず、体育では単元の導入となる1時間目は重要です。きちんと「やり方」を決めたり教えておいたりしないと、次の時間から「内容」に迫っていけません。

<第2時>「学年◯◯大会 第1回目」
私は、次のように1時間を組み立てました。 

①準備体操
②その時間の「学年大会」の「目当て」発表
③学級ごとの練習タイムの設定
④「学年大会」
⑤結果発表、教師からのアドバイス、振り返り

ポイントは、③の「学級ごとの練習タイムの設定」です。ここで、目当てに向かって学び合いながら取り組みます。
 例えば、2年生でも、4人一組になって台の上のボールを落とさないように運ぶ「作戦」を、ちゃんと話し合って考え、練習ができました。

<第3時以降>「学年◯◯大会 第2回目」「第3回目」…というように、目当ての難易度を上げながら、2時と同じように進めていく。

子供たちの「大会」への意識の高め方

 子供たちの「大会」への意識の高めるための方法として、私は学年掲示と学年だよりを利用しました。
 学年掲示板に毎回の大会結果を表にして示しました。
 「次の大会」の「目当て」を予告として示したこともありました。子供たちが見通しをもって自主的に練習に取り組めるようにするためです。

 学年だよりでは、そんな大会での子供たちの様子を描写して伝えました。保護者に対して意図を説明し、理解を得たり、「応援」をお願いするためです。保護者も巻き込めれば、学級・学年集団は、ますます育ちます。

その後の学年行事への発展

 おまけです。
 運動会への取組を通して行った「学年◯◯大会」が、その後の学年体育の盛り上がりにつながっていったこともありました。「運動会でのリベンジを果たしたい!」という子供の声で、秋にもう一度同じ競技で「大会」を開いたり、年度末に「お別れスポーツ大会」を開催したりといった具合です。
 運動会は、通過点なのですね。「点」と「点」をつなぐから、子供が育ちます。