その「5分前行動」おかしくないですか?
学校現場では、子供に「5分前行動」を要求する場合があります。
集団宿泊訓練などの校外での集団活動で用いられる場合が多いのではないでしょうか。
これが指導方法の一つとして認められるのであるなら、恐らく子供の時間意識や集団行動における活動時刻の守り方を育む上で教育的効果があると考えられているからでしょう。
確かに、集団行動において「遅れない」ということは大切です。
遅れれば、集団に迷惑を掛けます。また、自身も余裕をもって活動に臨みにくくなるため、思わぬ失敗を引き起こす可能性が高まると言えそうです。
しかし、しばしば教師が次のような「5分前行動」の要求をする場面に立ち会うことがあります。
これは、果たして教育的でしょうか。
「次の活動は10時開始です。だから、5分前の9時55分には集合していましょう。」
私は、この「5分前行動」はおかしいと考えます。
みなさんはいかがですか。
活動が「10時開始」ならば、集合場所に10時までに集合していればいいのではありませんか。
そうなるためには、10時になってから集合場所に移動を開始したら間に合いません。
だから、およそ5分前の9時55分頃に、移動を開始する。
そうすれば、集合時刻の10時に遅れない。
これが、5分前行動ではないのですか。
もちろん、現在の自分がいる地点から集合場所までの距離がかなりあり、9時55分よりも早く移動を開始しなくてはならないという場合があるかもしれません。そういうときには、9時50分とか、9時45分とかに移動を始めることになります。
それも含めて、<5分前行動>と総称するのではないのでしょうか。
<5分前行動>とは、<見通しをもった行動>の言い換えなのです。
そもそも上記のように9時55分に集合完了を望むなら、その活動の開始時刻を当初から9時55分に設定すればいいはずです。
上記の「指導」は、5分前行動ではなくて、「5分前集合」の要求になっていると私は感じるのですが、どうでしょうか。
そして、こういう指導をする教師に限って、
「みなさんが頑張ったので、5分前の9時55分に集合が完了しました。予定より5分早いですが、活動を開始しましょう。」
などとやったりするのではありませんか。
そのくせ活動終了時刻は予定通り、きっちりと活動を行う、なんて経験はないでしょうか。
そもそも集団宿泊訓練などの校外活動では、集合時刻までの時間は子供にとって貴重な休憩時間のはず。「5分前行動」の要求によってその休憩時間を削っていいのでしょうか。
5分前行動の指導とは、子供に、集団を意識し時間の見通しをもって行動する力を育むことが目的のはず。
そのためには、
「5分前に集合完了しよう」
ではなくて、
「5分前には集合のために動き出そう」
という指導であるべきではないでしょうか。
さらに指導を一歩進めるならば、
「10時に全員の集合が完了しているためには、自分は何時何分に動き出したらいいかを考えて行動しよう」
と投げかけることが、「5分前行動」の指導原理ではないでしょうか。