1年生の「居場所」:学校の中に「学校」でない所をつくる!
前回の記事(「ヒント帳16」)に対して、保育園の関係者の方から「スキ」を頂きました。
同じ考えを持ってくださっているのではないかと勝手に解釈し、意を強くする一方で、小学校教育の現場にいた者として、ご期待に添えなかった日々が続いたであろうことに、申し訳なく思うばかりです。
そうした思いが、今シリーズの動機にもなっています。
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1年生の「基地」をつくる!
ある年、1年生の担任になって1年部の教師集団でまず着手したのは、1年生のベースキャンプ:1年生の「基地」をつくることでした。
その時の学校では、1年生の教室の前に広めのホールがありました。「多目的スペース」などと言われる場所です。
そこに、校長に骨を折ってもらい(理解のある校長でした)、畳を手配して敷き詰めました。
確か30畳くらいあったと思います。
1年生の「基地」の誕生です。
100人近い1年生の、1年間の活動のベースキャンプができました。
教室があるではないかと思われるかもしれません。
しかし、教室は、いかにも制度としての「学校」を象徴する場所です。
教室とは違う空間、つまり、学校の中であっても、「学校」でない場所を作りたかったのです。
それはちょうど、こども園・保育園などと小学校を「つなぐ」場所にもなると考えていました。
私たちは、この場所に3つの機能をもたせていました。
① 1年生が安心して過ごせる場所
この場所を、物理的にも精神的にも1年生の「居場所」にしたいと思っていました。
そこでは、「何をしても自由」です。
遊び場にしている子もいました。
友達とお話を楽しむ場所にしている子もいました。
先生と1年生が大切な話をひそひそとしていたこともありました。
ふらりと教室からやってきて、一人静かに大の字になっていた子もいました。大集団での毎日にちょっと疲れていたのかもしれません。
② 集団生活のきまりをつくり体得していく場所
そこでは「何をしても自由」ですが、「みんなが使う場所」ですから、きまりが必要になります。
「危ないので走り回らない」「そこで使ったものは片付ける」「汚さずにきれいに使う」などのきまりが、つくられていきました。
1年の間に、きまりを破る子はほとんどいませんでした。その場所で怪我をした子も0でした。
③ 学びを創り出す場所
何だ、やっぱり「学校」じゃないかと言われそうですが、違います。
「学校の学び」ではく、「自分たちの学び」を創り出す場にしたかったのです。
畳を中心にして学年全員で集まり、思いや考えを出し合って、活動を創り上げていきました。
誰かの発言がきっかけになった時もありました。
教師がきっかけを与えたこともありました。
ある学級が、自分たちの学級で話し合ったことを提案して、学年全体で取り組んだこともありました。
「あいさつ大さくせん」
「あくしゅ大さくせん」
「田うえにちょうせん」
「1年生のうんどう会」
「1年生のあきまつり」
などの様々な習活動が、この場所から生まれていったのでした。
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この場所は、1年部の教師集団にとって、学級の壁のない場所でもありました。
1年生の子供全員を1年部の教師全員で育む、決して一人も取り残さないという決意の表れていた場所でした。
1年部教育のベースキャンプでもあったのです。