高学年の子供たちが積極的に合唱に取り組む指導のアイデア
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことによって、音楽の授業も「通常」を取り戻し、子供たちの歌声が教室に響き始めていることと思う。
だが、コロナ以前から、なかなか積極的に歌おうとしない子供たちの姿が見られることが、特に高学年の音楽授業では、あった。
音楽の学習としても、学級・学年経営の面からも、頭を悩ませてきた教師は多かったはずだ。
「もっと声を出しなさい。」
「ここは、フォルテで歌おう。」
「最高学年にふさわしい歌声を出そうよ。」
などと声を掛けても、目に見えて変化しないことが多かったのではなかったか。
ましてこの三年間の制限により、大声で歌わないことが「当たり前」になってしまった子供たちを変えていくことは、容易ではないに違いない。
そこで、「歌うことの意味」について目先を少しだけ変えた指導アイデアを紹介したい。
音楽発表会や学年音楽コンクールを開催することも、よい方法だと思うが、次のように、集団宿泊的行事とつなげる方法もある。
修学旅行で歌う!
以前、私の勤務していた小学校は、修学旅行の目的地の一つが広島の平和記念公園であった。
この平和記念公園には、アオギリの木がある。
平和記念資料館のすぐ横で、生き生きとした姿を見せるこの木は、被爆樹木である。
被爆後も命を絶やさず、生命の尊さ、力強さを私達に教え続けてきた「奇跡の木」なのだ。
このアオギリに寄せた歌がある。
「アオギリのうた」という。
当時小学生だった森光七彩氏が作った歌だ。
この歌を、アオギリの木の前で、子供たちが歌ったのである。
そのために、修学旅行前に練習を繰り返してきた。
もちろん、平和学習の一環として。
だから、ただの音楽の授業ではなかった。
平和について考え、自分たちのできることは何かを求めての歌だった。
「電車にゆられ 平和公園
やっと会えたね アオギリさん…」
アオギリの前で、子供たちの歌声は響いた。
「あなたたちは、すごいことをしたのですよ。」
6年部で音楽指導を担当していた教師が、歌い終わった子供たちに投げ掛けた言葉である。
自然体験活動で歌う!
こちらは、私の同僚の実践である。
自然体験活動に出掛けた5年生が、ロングハイクの目的地で、合唱を行った。
そびえ立つ2000mから3000mの山々に向かって、涼風吹く草原の丘で大きな声で合唱を響かせたという。
どうしたら子供たちが歌うことに意欲を湧かせるか。楽しさを感じるか。
また、仲間とともに歌う意義を見出すのか。
そんな観点からの指導の工夫である。
何かのお役に立てれば幸甚である。