赤ん坊
なずなは、眠っている。細く茶色っぽい髪の生えた頭に手のひらを近づけてみると、ほのあたたかい空気がのぼってくるのがわかる。軽さと重さがこの子には等量詰まっている。この子だけではない。たぶん赤ん坊はみなそうなのだろう。突然ベッドからふわりと宙に浮いて、どこかへ飛んでいくような気さえする。風に吹かれて。いや、風に乗って。
これは、なずなという小説の一節だ。私はこの小説が大好きだ。
ここに出てくるなずなという名前の赤ん坊は、生後3ヶ月頃である。
今日、なずなとちょうど同じくらいの赤ん坊に会ってきた。
抱かせてもらったとき、思ったより軽い体、ずっしり重い頭にびっくりした。
柔らかくて、すべすべで、もっちもちで、純粋だった。
こんなに大きくなってしまった自分に違和感を感じるほどに、小さかった。
これからどんな風に成長するんだろう。
楽しみでしょうがない。
今は小さなその手と足で、風を掴み、風に乗り、どこまでも飛んでゆけ。