【論文メモ】Poseidon Principles: Legal Directions for Implementation & Enforcement (Rebelo, 2020)

1. 概要

ソシエテ・ジェネラルとダンスケ銀行が中心となり、日々上がっている環境基準を守らない海運会社への融資を制限するためにポセイドン原則と呼ばれる枠組みが作られた。

本原則は、署名金融機関が借り手に対してどのような融資契約上の義務を課すべきかについての疑問を浮上させている。

本論文では、ポセイドン原則におけるStandard Covenants Clause(SCC)の法的拘束力や法的影響を分析する。

2. メモ

・ポセイドン原則は、2050年までにGHGの排出を50%削減(2008年比)するというIMOの要求に応えることを目標としている。

・2008年の金融危機以降、資金源を確保する為に株式市場により頼るようになった海運会社により船舶金融は大きく進化してきたものの、未だに銀行ローンが主流となっている。

・グリーン・ファイナンスというコンセプトは、金融を通して持続可能なプロジェクトを開発・促進・実行・支援するために、全ての民間もしくは公的な機関により行われる全てのイニシアチブを指す。

・海運において有名なグリーン・ファイナンスの例は、ドイツ復興金融公庫(KfW)のスクラバープロジェクト、欧州投資銀行(EIB)とINGグループの協調が挙げられる。

・上記プロジェクトにおけるEIBが借り手に要求する環境義務は過剰だという批判を招いた。手続きの複雑さも相まって、多くの船主は事実上EIBの支援の対象にならなかった。

・グリーン・シッピングの外部不経済、及び技術的・経済的データが十分に普及しないことは、環境に優しい技術が投資に対して高いリターンを得られないと見做され好条件での融資を引き出すことができないことを意味する。

・現在の経済的状況は、過剰な官僚的手続きなしに迅速に資本にアクセスし、喫緊の目標を達成することを求めている。

・資金が当初の目的に沿って使用されたかを確認する為にも環境協約の合意は不可欠であるが、それらの協約は不透明な基準に基づいたものや賠償手段が十分ではない。

・ポセイドン原則のSCCは環境協約の範囲内での未来のデータの開示を要求しているが、それらの契約への組み入れ方は自由となっており、本原則のウェブサイトでは協約の組み入れは「推奨される」ものであって「強制的な」ものではないと記されている。

・金融機関は報告基準を守らせる為に強制命令を求めるが、損害を数値化するのは難しい。

・本原則の署名金融機関は、自社のグリーンなイメージが借り手の契約違反により失われる権利と同等であるという難しい議論に挑まなければならない。

・SSCの違反によるイメージの悪化という、無形の結果によりもたらされる損害に対する賠償は限られたものとなるだろう。

・債務不履行事由の条項に損害賠償を盛り込むことは可能かもしれない。

・環境に優しいパフォーマンスの動機付けが訴訟や莫大なコスト負担への恐怖によるものであってはならない。

・環境に関する契約不履行や訴訟、イメージ悪化に伴うコストは、グリーンな枠組みを支持することが融資契約の当事者全員の利益になることを意味している。

3. 出典

REBELO, P. 2020. Poseidon Principles: Legal Directions for Implementation & Enforcement. https://openaccess.city.ac.uk/id/eprint/25001/1/CLS%20WP%20Poseidon%20Principles%202020%2011.pdf.

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