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【論文メモ】Corporate Governance and the Environmental Politics of Shipping (Alger et al., 2021)
1. 概要世界の海運業界、特にコンテナ船セクターにおいては、少数の企業がマーケットを支配している。世界最大のコンテナ船社のマースクは、その影響力を利用し業界全体の環境基準の向上を後押ししている。それは環境問題の改善を促進する一方で、ただでさえ低い利益率に苦しむ中小の海運会社のコストを上昇させ、寡占状態を強化している。 2. メモ・Strange(1976)は、海運業界は国際機関によるコントロールが難しく、結果としてどんどん非効率・不平等・不安定になっていくと述べた。 ・環
【論文メモ】Norwegian ship-owners' adoption of alternative fuels (Mäkitie et al., 2022)
1. 概要海運業界のGHG排出量の増加は、止めるのが難しい(hard-to-abate)と考えられている。本論文では、281社のノルウェー船主をアーリーアダプター(既に代替燃料を導入している)、アーリーフォロワー(5年以内に導入予定)、レイトフォロワー(将来的(6年以上)に導入予定)、ラガード(導入予定なし)に分類し、調査・分析を通して、船主毎の代替燃料への対応の違いを分析する。 2. メモ・アーリーアダプターは革新的な技術の供給者のためのマーケットを形成し、更なる技術発展
【論文メモ】Competitiveness and business strategies of shipping companies (Španja et al., 2017)
1. 概要本論文では、海運業界における競争力に影響を与える要因および海運会社がマーケットで優位に立つための戦略を、クロアチア最大のタンカー船社であるTankerska d.d.と世界最大の会社の一つであるRoyal Dutch Shellを例に分析した。 2. メモ・海運会社の競争力を左右する要因は運賃、燃料価格、為替変動、船籍、人的リソースなど複数存在する。 ・燃料価格は様々な要因により変動するが、歴史的には上昇傾向にあり、この傾向は今後も続くと見られている。 ・海運
【論文メモ②】How to decarbonise international shipping: Options for fuels, technologies and policies (Balcombe et al., 2019)
1. 概要2050年までにGHG排出を50%削減するという国際目標への道のりは不透明だが、有望な選択肢は多数存在する。本論文では、それぞれの選択肢の包括的な分析とそれらの組み合わせることによる国際海運の脱炭素化の可能性の研究を行う。 2. メモ・燃料電池は騒音や振動がほとんど出ないことは、海洋生態系に音響的影響を与えている海運業界にとっては良い点である。 ・主機がLNG燃料で、世界で初めて補助推進として燃料電池(水素もしくはメタノール)を使った商船であるViking La
【論文メモ①】How to decarbonise international shipping: Options for fuels, technologies and policies (Balcombe et al., 2019)
1. 概要2050年までにGHG排出を50%削減するという国際目標への道のりは不透明だが、有望な選択肢は多数存在する。本論文では、それぞれの選択肢の包括的な分析とそれらの組み合わせることによる国際海運の脱炭素化の可能性の研究を行う。 2. メモ・海上輸送はトンマイル当たりのCO2排出量は他の輸送手段より少ないが、絶対量では環境へのインパクトは大きく、もし海運業界を一つの国と仮定すると、世界で6番目のCO2排出国となる。 ・世界最大のコンテナ船社であるマースクは、2050年
【論文メモ】How shipowners have adapted to sulphur regulations – Evidence from Finnish seaborne trade (Solakivi et al., 2019)
1. 概要2020年1月1日から、船舶燃料の硫黄含有量を0.5%以下にするIMOの規則が有効となるが、Sulpher Emission Control Areas(SECA)では2015年から施行されている。本論文では、フィンランドの港湾に寄港した船を例にとり、業界が規則にどのように対応したかの経験的証拠を提供する。 2. メモ・2008年、IMOはMARPOL Annex IVに基づき燃料油の硫黄含有量を上限を定めた。 ・複数文献では、本規則により海上輸送(特に近海輸送
【論文メモ】Roles and Issues of Bioenergy in a Decarbonized Energy System (Aikawa, 2022)
1. 概要エネルギーシステムの脱炭素化のためにバイオエネルギーに期待される役割を概観した上で、温室効果ガス(GHG)削減効果を評価するLCA手法の基本的な枠組みと論点を整理した。 2. メモ・気候変動対策としてバイオエネルギー利用を推進する際の根拠は、バイオマス起源のCO2が、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収されたものであり、燃焼時に大気に放出されるCO2を差し引きゼロとみなすことができるためである(炭素中立/カーボンニュートラル)。 ・IEA (Interna
【論文メモ】Financing a sustainable ocean economy (Sumaila et al., 2021)
1. 概要我々の地球のシステムや暮らしに不可欠なものである海が、気候変動により人為的なプレッシャーや気候変動により脅かされている。持続可能な海洋経済には十分な資金が必要だが、未だ大幅に不足している。本論文では、資金調達に対する障壁を明らかにし、その障壁を取り払い官民双方からの投資を促進する方法を提案する。 2. メモ・2010年の全世界の海洋経済(漁業、海運、洋上浮力、観光、海洋生物工学)の経済効果は1.5兆米ドルであり、コロナ禍以前の予想では2030年には3兆米ドルにまで
【論文メモ】Biodiesel as alternative fuel for marine diesel engine applications: A review (Mohd Noor et al., 2018)
1. 概要バイオディーゼル燃料は、有毒ガスの排出を削減し石油由来の燃料への依存から脱却するための環境に優しい代替燃料として選ばれた。本論文では、船舶エンジンの燃料としてのバイオディーゼルの包括的なレビューを行う。 2. メモ・バイオ燃料やバイオガスは、代替エネルギーの一つの形であり、消費者の間で急速に注目を集めている。 ・バイオディーゼルは、燃焼特性が既存のディーゼルとほとんど同じであるため、エンジンのシステムを改造することなく使用できる。 ・バイオディーゼルは複数の原
【論文メモ】Optimal portfolio choice for ship leasing investments (Yu et al., 2019)
1. 概要船舶リースの典型的ビジネスモデルは、傭船料収入のために船を購入することだが、船舶や航空機などの輸送機器は、株式や債券と違い有形で耐用年数に限りがある。著者は、ポートフォリオ理論と業界のエビデンスに基づき、管理しやすくかつ厳選された船舶の組み合わせからなる最適なポートフォリオを構築した。また、船舶ポートフォリオの特性を調査するため、様々な船型の運賃リスクを定量化した。 2. メモ・海運は資本集約型の産業であるため、資産の配分の重要性は非常に高い。 ・非常にリスクの
【論文メモ】Renewable ammonia as an alternative fuel for the shipping industry (Al-Aboosi et al., 2021)
1. 概要アンモニアは、GHG排出量が比較的少ないこと、高いエネルギー密度、コスト競争力、製造・貯蔵・流通のインフラが広範に整備されていることなどから、次世代の船舶燃料として魅力的なオプションである。本論文では、アンモニア(特に再生可能アンモニア)の船舶燃料としての利用可能性を検証する。 2. メモ・IMOは、2050年までにGHG排出を50%削減(2008年比)し、最終的には2100年までに排出を完全になくすという目標を設定した。 ・同目標を達成するための手段として、カ
【論文メモ】A Literature Survey on Market-Based Measures for the Decarbonization of Shipping (Lagouvardou et al., 2020)
1. 概要本論文では、船からのGHG排出削減のための費用対効果の高い対策として、IMOの加盟国や機関から提案された様々な経済的手法(Market-Based Measures, MBMs)についての最新の文献のレビューを行っている。 2. メモ・伝統的に、GHG排出削減の手法としては「命令・管理」とMBMsの二種類が存在する。 ・"Goal-based"と呼ばれる手法は、排出削減目標が示されるだけで具体的な削減方法は各船主に委ねられるのが特徴で「命令・管理」手法に分類され
【論文メモ】Strategic Analysis of the Automation of Container Port Terminals through BOT (Business Observation Tool) (Camarero Orive et al., 2020)
1. 概要港湾は、Port 4.0の構想に向かってデジタルトランスフォーメーションの真っ只中にあり、デジタル化された環境に優しい港湾をつくるためには、市場からもたらされる新技術の導入が必要である。 それらの技術は、機能的なアプローチにおいて自動化されたターミナルの発展を可能にしてきた。 本論文では、ターミナルの自動化におけるサポート材料や障害を数値化し、現実的な状況を考慮した上で自動化に取り組む各当事者がどういった施策を行うべきかを判断するための方法論を提供する。 2.
【論文メモ】Alignments between strategic content and process structure: the case of container terminal service process automation (Wang et al., 2017)
1. 概要荷役設備の技術的な進歩はコンテナターミナルのオペレーションの自動化を可能にした。一方で、ターミナルの自動化の普及にも関わらず、それによる利益を理論的に検証したガイドラインはほとんど存在しない。 本論文では、戦略的コンテンツとプロセス構造が連携しているかに着目することで、ターミナルの自動化について分析した。20のコンテナターミナルのケーススタディを行った。 2. メモ・国際的なコンテナトレードの急速な成長により、国際的なサプライチェーンにおけるコンテナターミナルの
【論文メモ】Comparative life cycle cost analysis of low pressure fuel gas supply systems for LNG fueled ships(Wang et al., 2021)
1. 概要環境的・経済的な利点を考慮すると、LNGは理想的な船舶の代替燃料である。 本論文では、低圧FGSSにおけるライフ・サイクル・コスト(LCC)の分析を行った。異なる船型・FGSSにおいて9つのケースを比較した。 2. メモ・2000年にノルウェーで世界初のLNG燃料のフェリーであるGlutraが建造されて以来、200隻以上のLNG燃料船(LNG船や内航船を除く)が航行中または建造中である。 ・LNG燃料の論点の一つはガス燃料供給システム(FGSS)である。LNG
【論文メモ】Modeling the impacts of alternative emission trading schemes on international shipping (Wang et al., 2015)
1. 概要国際海運のCO2削減のために様々な経済的手法が提案されてきたが、その中でも有望なものの一つが排出権取引(ETS)である。 本論文では、コンテナ船とバルカーの2つのセクターにおけるOpen ETSとMaritime only ETS(METS)の効果の分析及び評価を行っている。 2. メモ・米国ではSO2の排出プログラムが成功を収めている。 ・EU-ETSは世界で最も大きなETSで、EU圏内のCO2排出の45%を占めている。 ・海運業界にETSを導入する場合、