【論文メモ】Renewable ammonia as an alternative fuel for the shipping industry (Al-Aboosi et al., 2021)

1. 概要

アンモニアは、GHG排出量が比較的少ないこと、高いエネルギー密度、コスト競争力、製造・貯蔵・流通のインフラが広範に整備されていることなどから、次世代の船舶燃料として魅力的なオプションである。本論文では、アンモニア(特に再生可能アンモニア)の船舶燃料としての利用可能性を検証する。

2. メモ

・IMOは、2050年までにGHG排出を50%削減(2008年比)し、最終的には2100年までに排出を完全になくすという目標を設定した。

・同目標を達成するための手段として、カーボンフリーであるアンモニアを船舶燃料に使用することは大きな関心を集めている。アンモニアのメリットとしては以下が存在する。


1)比較的高いエネルギー密度(アンモニア:22.5 MJ/kg、メタノール:22.7 MJ/kg、燃料用石炭:15 MJ/kg、無煙炭:27 MJ/kg、天然ガス:55 MJ/kg、ディーゼル:45 MJ/kg、水素:142 MJ/kg)

2)圧縮(20℃で0.8MPa)や冷却(-33℃)することで容易に液化が可能な点

3)年間1億5,000万トン(2019年実績)の生産が行われており、既に製造・貯蔵・流通のインフラが整備されている点

4)可燃範囲が狭く、安全に船上に保管できる点

5)オクタン価(アンモニア:120、ガソリン:86~93)が高く、少し手を加えるだけで内燃機関での使用が可能、また燃料電池にも直接使用可能な点


・最も一般的な商業用アンモニアの製造方法はハーバー・ボッシュ(H-B)法と呼ばれ、窒素(N2)と水素(H2)を400~600℃、100~200気圧という高温・高圧の環境で化学反応させてアンモニアを合成する。

・世界の水素生産の95%以上は化石燃料を変換させることによって生産されており、また世界中の水素の約半分はアンモニアの生産に使用されている。

・技術の進歩にも関わらず、H-Bプラントでは未だに多くのGHGを排出している(人為的に排出されるCO2の約1.2%を占めている)。

・グリーンアンモニアとは、再生可能な原料とエネルギーを使用して生産されたアンモニアを指す。

・グレーアンモニアは、化石燃料由来の原料とエネルギーを使用して生産されたアンモニアを指す。

・ブルーアンモニアは、化石燃料由来の原料とエネルギーを使用して生産されたアンモニアの内、生産過程で排出されたCO2の回収を前提としたアンモニアを指す。

・2030年までに、グリーンアンモニアのマーケットは約8億5,000万米ドルに成長すると予測される。

・グリーン窒素は、低温蒸留法・圧力スイング吸着・膜分離といった方法で産業的な規模で生産されている。

・水と窒素を直接アンモニアに変換することで、水素の生産過程を省略する電気化学的な方法も存在する。

・グリーンアンモニアを生産するパイロットプラントは既に世界各地で成功を収めている(オックスフォード、福島、ミネソタ、ピルバラ、サウジアラビア)。

・技術の進歩と共に、グリーンアンモニアの生産コストは競争力を増すと予想されている。

・バイオマスを原料とした生産方法においては、地理的な位置が原料(木材・わら・バガスなど)コストや人件費に大きく影響する。

・また、バイオマスからアンモニア生産する場合、自己熱改質法(ATR)や水蒸気改質法(SMR)、CO2リフォーミング(CR)などの生産方法によりコストに大きな違いがある。

・GHG排出量を測定する環境分析は、Well-to-Tank(油田から燃料タンクまで、WtT)とTank-to-Propeller(タンクからプロペラまで、TtP)の2種類からなるライフ・サイクル・アセスメントを基礎としている。アンモニアは炭素を含まない分子なので、TtPは無視されてきた。

・燃料補助金は、代替燃料の市場での普及と既存の船舶燃料(HFO、MGO、MDO)からの脱却に重要である。

・燃料補助金(USD/ton CO2eq reduced)は下記等式により導かれる。

・グレーアンモニアの場合、補助金の平均はHFO比で$133、MGO/MDO比で$64となる(TtPベース)。

・グリーンアンモニアの場合、補助金はHFO比で$464、MGO/MDO比で$393となる(WtTベース)。

・ブルーアンモニアの場合は、CO2の回収や水素の生産方法により異なるが、例えば原料となる水素の10%が再エネ由来である場合、補助金はHFO比で$166、MGO/MDO比で$97となる(WtTベース)。

・グリーンアンモニアを海運業界に導入するには、生産・貯蔵・流通のインフラを整える必要がある。バンカリングのオペレーションの見直しに加え、主機のレトロフィットやリデザインも求められる。

・船舶燃料のアンモニアへの変換については、短期的にはグレーアンモニア、中期的にはブルーアンモニア、長期的にはグリーンアンモニアを導入するといった戦略が可能である。

3. 出典

AL-ABOOSI, F. Y., EL-HALWAGI, M. M., MOORE, M. & NIELSEN, R. B. 2021. Renewable ammonia as an alternative fuel for the shipping industry. Current Opinion in Chemical Engineering, 31, 100670.

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