【論文メモ】How shipowners have adapted to sulphur regulations – Evidence from Finnish seaborne trade (Solakivi et al., 2019)
1. 概要
2020年1月1日から、船舶燃料の硫黄含有量を0.5%以下にするIMOの規則が有効となるが、Sulpher Emission Control Areas(SECA)では2015年から施行されている。本論文では、フィンランドの港湾に寄港した船を例にとり、業界が規則にどのように対応したかの経験的証拠を提供する。
2. メモ
・2008年、IMOはMARPOL Annex IVに基づき燃料油の硫黄含有量を上限を定めた。
・複数文献では、本規則により海上輸送(特に近海輸送)が陸上輸送に取って代わるのではないかと予想した。
・フィンランドのように、沿岸海域全体がSECAであり且つ対外貿易を海上輸送に依存している国々は重い経済的負担に不満を訴えた。
・硫黄分の削減方法(スクラバーの搭載・低硫黄燃料の使用・代替燃料の使用)は、燃料価格、船舶の航海地域、船齢など様々な要素により選択される。
・スクラバーの搭載コストは最低でも150万ユーロで、維持費用は年間10万ユーロ以上かかる。
・全世界の商船隊にスクラバーをレトロフィットした場合のコストは2,000億米ドルに上る。
・スクラバー搭載のコストが回収(=LSMGOへの変換コストを下回る)されるまでには2~5年を要する。
・2017年にフィンランドに寄港した船の内、8%がスクラバーを搭載していた。一方で、2013年には3%、2017年には6%がLNG燃料船であった。
・2017年時点で、RORO船の50%がスクラバーを搭載しており、他の船種と比べて突出している。RORO船は定期航路に投入され、恒久的にSECAを航行する場合が多いためであると思われる。
・2017年にフィンランドに寄港したRORO船の内、スクラバーを搭載した船の平均船齢は12.6歳で、搭載していない船の平均船齢は21.3歳であった。
・2010~2017年の間、IFOとMGOの価格差はトン当たり170米ドル近辺で推移した。
・Lindstad et al.(2015)は、ECAでの年間燃料消費量が1,500トン以下の船舶はMGOを使用するのが費用対効果が高いを結論付けた。
・Jiang et al.(2014)は、既存燃料油とLSFOとの価格差はトン当たり200米ドル以下に収まっており、これは損益分岐点を下回ることを示した。
・世界最大のコンテナ船社であるAPモラー・マースクは低硫黄燃料を使用する戦略を打ち出した一方、欧州最大のRORO船社であるグリマルディ傘下のフィンラインズはバルト海トレードに新たに投入する3隻のRORO船にスクラバーを搭載している。
3. 出典
SOLAKIVI, T., LAARI, S., KIISKI, T., TÖYLI, J. & OJALA, L. 2019. How shipowners have adapted to sulphur regulations – Evidence from Finnish seaborne trade. Case studies on transport policy, 7, 338-345.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?