ほぼ天国!#沖縄センベロロード
【 センベロ 】
1,000円でベロベロに酔える酒場。酔っ払い達の楽園。おっさんパラダイス。
その言葉は知ってはいたが現実的に1,000円でベロベロに酔えるなんてありえないと思っていた。
なぜなら例えばハイボールは普通のお店なら600円くらい、立ち飲みであっても350円程度はする。1,000円で飲めるのは2杯と軽いおつまみ程度になるだろう。2杯ではベロベロどころか、鍛えぬいた肝臓の前ではあまりにも貧弱ゥゥゥ!
ところがだ。
沖縄旅行の計画を練っていると、ところどころでセンベロの文字を見ることに。そしてその内容に驚いた。
「なんだ、これは・・・」
あるお店のメニューがこちら。おわかりだろうか。
「ド、ドリンク4杯1,000円だと…? 」
1杯あたり250円。異常である。リアルガチに頭がおかしい。
「そ、そうだハッピーアワーだけなのかもな。ランチタイムだけとか… 」
そう思って何度も確認してみるが、そこに時間に制限の文字はない。
フルタイムだ、フルタイムハッピータイムなのだ。
たしかに4杯飲めば人によってはベロベロになるだろう。
(私はそれでも足りないが。「あなたのベロベロはどこから? 私は10杯目から」)
あったのだ。都市伝説ではなかったのだ。本当に存在したのだ。
「沖縄の地に… センベロは実在した!」
真相を確かめるべく我々取材班は沖縄へ飛んだ。
機内ではリサーチしたセンベロの情報を再度読み込む。収集した情報はこうだ。
・現在の那覇ではセンベロの店が同時多発的に発生している
・この現象をセンベロブームと呼ぶ人もいるらしい
・「ドリンク3杯+おつまみ1品」で1,000円がデフォルト
「こんなシステムで生きていけるのか。お店も、飲む客も。この島はまさに… 修羅の国… 」
ホテルに荷物を置くと、安全のために最低限の持ち物だけを身に着けた我々は、最初のセンベロ店をたずねた。
その時だった。
油断していた我々の目にセンベロの文字が飛び込んできた!
おそらくではあるが、使われているフォントや色彩、染料から推測すればこの文字が描かれたのはラスコーの壁画(紀元前1500年)と同時代。だとするならば、このセンベロというシステムの歴史は我々の想像をはるかに超えている。
我々はリアルタイムにこの歴史的記録を残していく事にした。
しかしまだ先は長いのだ。1軒目で3杯飲ると身が持たない。
オリオンビールのアルコール度数は5%。ストロー級の4回戦ボーイのジャブをガードの上からくらう程度のダメージ。ヘイ、カモン、ゴアヘッド、なのだ。
おでんを食べ、酒を飲み切ると、我々は思い切って会計を申し出た。
この瞬間。
身構える。油断はしてない。いつでも抜けるよう右手は銃に添えている。
店員がその鋭い眼光をこちらに向け、堂々と言い放った。
「1,100円です」
な、なに? !本当に1,100円なのか?
お通しの料金もなく、席料もサービス料もなく、純粋な、1,100日本円!ノーボッタ!
こ、これが沖縄のセンベロ…
いや、この店だけが特殊なのかもしれない。
我々は地雷原に足を踏み入れることした。国際通りだ。
こちらはドリンクは2杯なのだが・・・
い、いかん! 術中にはまっている!我ながらなんたる失態!
次だ、次行ってみよー!
ここまで使ったお金は3,100円!安い!
だが、我々は気付いていなかった。
この時にはもう、魔界に足を踏み入れていたのだ。
《 暗琉天破:魔界に到達した北斗琉拳の拳士だけが使える奥義。圧倒的な魔闘気の流れの生む一瞬の無重力空間により、相手に位置を見失わせるという技。喰らった者は地が無いような感覚に陥り、身動きが取れなくなる》
自分が今どこにいるのか、方向すらわからない。
国際通りから右に入った。そのはずなのだが、位置がわからない。
しかし容赦なく襲いかかってくる尿意に抗うことはできず、我々は前へ前へと道を突き進むしかなかった。
ふと鮮魚店が目に入った。さしみセット、牡蠣がある。魅力的だ。
店に入ると地元の民だろうか、若者たちがテーブルで呑んでる。その中の一人が「何飲む?」と聞いてきた。「あはは、ビールかな」と愛想笑いで返したが、その人が店主(店員?)だった。
節子じゃなかった。てっきり節子が「何でおじさんはすぐ酔ってしまうん?」と言ってくるのだと思っていた。一瞬でもノスタルジーを感じた自分を恥じた。
行こう。歩こう。
市場風のトラップ(迷路)に入る。
どこだ。遠い。わからない。
だがハッキリと、脳の奥から、本能が語り掛けてくる声が聞こえる。
「ここで足を止めたら死ぬ(漏らす)」
進むのだ。
自分がどこにいるのかわからくとも、道がわからなくとも、後ろを振り向かず、前に進むのだ。
すると灯りが見えた。
5軒目にたどり着いたのがこの店だ。
実はこの店が、後に『沖縄センベロロードMVP』に選ばれることになる店だ。その日は奇しくも大谷翔平が満票でア・リーグMVPに選出された日でもあった。運命を感じざるを得ない。
質、量、種類、味、すべてに満足した。
そしてなんと! 店内にトイレがある。
当たり前じゃない。当たり前じゃないのよ、トイレがあるのは。飾りじゃないのよトイレは HaHa ♪
接客もよかった。明るく話しかけてくれるおねぇさんが緊張をほぐし、我々取材班の心の扉を開かせてくれた。
センベロの取材はもう十分だ、自然にそう思えた。
取材を終えた我々が向かったのはとあるバーだった。
間違いなかった。ソファーに体を沈め、ゆったりと静かにグラスの塩をなめながらソルティドッグを口にふくんだ。うまい。今日一番の”うまい”が出た。
「観光ですか?よくこのお店ご存じでしたね。こんなところ観光客は来ないですよ」
バーテンダーさんが話しかけてきた。実はこのお店、ある人から聞いていたのだ。
「あ、その。こっちの人から、この店がいいよって聞いてたんです」
「そうですか。ホテルはどこに?」
「県庁前です」
バーテンダーさんは笑って言った。
「じゃあ、お帰りになる途中に、〆のステーキを食べに行かれたらいいですよ」
「〆にステーキ?」
「こっちじゃ、それが当たり前さー」
騙されたと思って行ってみたが、これがうまかった。
時間を見て欲しい。ホテルに着いたのは午前1時前だ。
6時にスタートして7時間。ラストのステーキハウス88まで合わせて7軒。飲み倒した。
この取材を通してわかったことは一つ。
センベロは実在した。
我々取材班にはこの事実を後世に伝える義務がある。そのためにこのnoteを残そう。
いつの日か「我もセンベロを!」という勇者が現れたのならば、きっとこのnoteを読むことになるだろう。センベロ使いはセンベロ使いと引かれ合うからだ。
” その者、青きラベルのビールをあけ、金色の液体を飲み干すべし ”
その時は物語の主役は君だ。君が主人公だ。
飲むがいい。酔うがいい。センベロるがいい。先人たちにかまうことなかれ!
沖縄センベロ伝説は君が成せ!
めんそーれ!
よかったよ沖縄。
安くて美味くてたくさん飲めて、ほぼ天国だった。
ありがとう沖縄。
そして、さようなら沖縄! また来るよ!
-- 『Paradise City』 Guns N' Roses --
連れてってくれよ、パラダイスシティへ
芝生が緑で、センベロで、かわいい女の子がたくさんいる街へ
なあ、連れてってくれよ
書き疲れたので2日目の様子は書かないィィィ!
” #沖縄センベロロード ”で検索だ!
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