ワーママのひとり旅
子供たちが小学生のころ、フルタイムで働いていた私は、ひとりになる時間がどうしても欲しくて、たまにひとり旅をしていた。
ただ、敷地内同居している義父母には子どもを置いてひとり旅に行くとは言えず(言うとなにかとめんどくさいから)、子供たちにも「出張」と嘘をつき、夫に共犯になってもらい旅をしていた(逆に、夫がひとり旅をする時は、同じように私が共犯者になっていた)。
だから、一泊が精一杯。
それでも、四六時中誰かといる生活から解放され、仕事子育て家事から解放されるひとり旅は至福の時だった。
そんな私にとってひとり旅の醍醐味は、なんといっても自分のタイミングで好きなところに行けることだ。
普段、家族や仕事に振り回され、家族旅行中でさえ、自分が何かをやりたいと思わないことがストレスを最小限に抑えられる方法だと悟っていた私にとって、「自分のタイミングで好きなところに行ける」というのは、最上級の贅沢であり幸せだったのだ。
そんな至福の時間を過ごすため、私にはいくつかのこだわりがあった。
①行程
予定は詰め込まない。
絶対に押さえておきたい場所をひとつ決め、あとは行けたらラッキーくらいの候補を挙げておく。
そういう心持ちでいれば仮に行けなくてもがっかりしないで済むし、現地でたまたま見つけた楽しそうなところに柔軟に行ける。
また、ひとり旅は家族連れでは行きづらい大人な場所に行ける大チャンス!
私は写経したりダイニングバーで食事やお酒を楽しむのが好きだった。
②ホテル
やはり駅近が便利。
駅近でなくても駅へのアクセスが良いところをチョイスすると動きやすかった。
また、ひとり時間を優雅に過ごすために、足をしっかり伸ばせる大浴場(温泉であればなお良し)と、朝食バイキングは必須。
朝、ひとりでゆっくり飲む食後のコーヒーは最高だった。
③移動手段
目的地までの移動も楽しみのひとつ。
普段見れない景色を眺めるために座席はいつも窓際をチョイスしていた。
その中でも、空の旅の時は窓際が必須。
めったに飛行機には乗らないので、上空からの景色をこの目に焼き付けておきたかった。
③荷物
一泊であればショルダーバッグやトートバッグひとつで十分。
荷物はできるだけ少なくがモットー。
最悪、財布、スマホ、コンタクトレンズ(眼鏡)があればなんとかなる。
そのくらいの気持ちでいた方が気楽である。
あと、荷物の小分けにはジップロックが便利。
④困った時
私の一泊旅行はいつも国内。
なので、わからないことがあれば聞けばいい、と思っていた。
以前、イタリアに行った際、少し迷子になってしまい、言葉が通じず青ざめたことがあった。
それに比べれば「ここは日本、言葉は通じる」わけで、わからないことがあっても怖くはない。
なんとかなる。
余談だが。
以前奈良へ飛鳥大仏を見に行った時、バス停で地図を広げていたら、親切な中国人観光客さんが声をかけてくれ、行き方を教えてくれた。
日本で日本人の私が中国人観光客さんに行き方を教えてもらうという、なんとも奇妙な体験をした。
こういうのも旅の面白さである。
自分のペースで動けるのがひとり旅。
食べたいものを食べたいタイミングで上げ膳据え膳で食べられるのがひとり旅。
この時ばかりはわがままに過ごした。
心のトゲトゲを落とせたら、明日からまたワーママを頑張れたから。
数回しか行けなかったけれど、この体験は一生忘れない。
そして、共犯になり私を快く送り出してくれた夫に、ほんっと感謝している。