マガジンのカバー画像

カントクのつぶやき

44
伊勢真一カントクのつぶやきです。月1で更新しています。 「カントクのつぶやき」がはじまったのは1999年。 ツイッターがはじまるずっと前から、カントクはつぶやいていました。 月に…
運営しているクリエイター

#伊勢真一監督

「デクノボウ」

2024年 10月 「心が折れてしまう…」 と、うめくように呟く声をしぼり出す初老の女性は、ダンナさんが病気だ、とも言っていた。 今年の始めに地震の被害にあい、避難所での暮らしを余儀なくされ、この度の水害でその避難所が又、暮らすことが叶わない状況になってしまった能登の、ニュース報道のヒトコマだ。 「頑張らないわけにはいかない…」 と、女性は、もう一言、呟いた。 私は、私たちは、なんにも出来ずに傍観するデクノボウの自分を持てあましながら、黙ってしまう。 映画『大好き 〜奈

「映画というベッド」

2024年 1月  能登半島の震災は、まだ被害の全貌がワカラズ、ただ心配に心配を重ねるばかり…。そんな思いを抱えながら、正月7日、新年最初の上映会が、横浜市の泉公会堂であった。映画『奈緒ちゃん』シリーズの撮影の舞台、私にとっては言わばホームグラウンドだ。三十年近く前に「奈緒ちゃん」が完成した時、最初の完成上映会をやった場所で、次回作『大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』も、5月11日(土)にここでお披露目をする予定だ。  新年早々、満員のお客さんになれば、と願っての上

「出逢いと別れ」

2023年 12月  今年も懲りずに映画を観せることに取り組んだ一年だった…。「コロナ」以降、いせフィルムが自ら主催する自主上映が多くなった。自分たちが上映をやり続けることで、自主上映活動を焚き起こそうと考えてのことだ。 けれども、まだまだ客足は戻って来ていない。やればやるほど赤字が増えるばかり、という状況が続いている…。  行けるところまで行くのだ。  自主製作も自主上映もツベコベ考えずに、やるっきゃないのだ! 逆算して人生を考えることが出来るほど利口じゃないのだから。

弱さの光

2023年 6月  5月の終わりから、随分沢山の夢を見た。あれは夢だったのか、「映画」だったのか、それとも私の記憶の断片だったのか…。  実は、5月の終わりに入院、手術をしてました。「がん」でした。何とか手術を終え、ようやく退院したところです。  その手術後数日、モーレツに眠り、そして夢のようなものを、浴びるほど観たんだ。あれは一体何だったんだろう…。まさしく、カオスという感じで、そのほとんど全てをキレイサッパリ忘れちまったけど。  おかげさまで手術はうまく行きました。

大好き〜好きなものは好き。

2023年 5月  紫陽花の季節。  日曜画家だった母が好んで描いた花だ。決して上手くはなかったけど。  母を疎ましく思っていた頃には、紫陽花を好きになれなかったけど、この頃は素直にキレイだ、イイナと想うようになった…。  この春は新作『Pascals(パスカルズ)〜しあわせ のようなもの〜』の上映と、次回作『大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』の製作資金集めのための上映会に、夢中になって取り組んでいた。  映像の仕事を始めてから50年、いつだって夢中だったから、ずっ

春は来る

2023年 4月 どんなことがあっても、春は来る…。 私のスマホは今、野の花々で満杯… ガラケイからスマホに携帯電話を変えて一番良かったのは、映像機能を使って自前の花園を楽しめることかな? 仕事の行き帰りに路端で撮りためた花々が 「ヨオ、元気にやってるかい?」 と、赤・青・黄色・白…色とりどりに声を上げて春を告げてくれています。 と言っても、私は花の名前をほとんど知らない。 花に元気づけられて、この春から、今も撮影中の「奈緒ちゃん」シリーズ次回作の製作・上映支援プロジェ

「しあわせのようなもの」

2023年 2月 1月29日(日)。日比谷図書館のホールで映画生活50年の記念上映会を企画し、150人近い方々が集ってくれた。上映作品は長編処女作『奈緒ちゃん』と最新作『パスカルズ〜しあわせのようなもの〜』。最新作はお披露目上映だったので、ドキドキだった。  感想はいつもながら映画以上に豊かなイメージを語ってくれています。私の映画は作品そのものよりも感想の方が素晴らしい、と口の悪い仲間は言うけど、本当にそうだ。 映画が観た人の心の扉を開けて、イメージを引き出しているんだか