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Jリーグのクラブチームの決算書分析 ~売上高編~

 公認会計士・税理士の伊勢です。「経営者の右腕となって、数字で意思決定に貢献する」ことを経営理念とし、会計事務所を経営しています。
 私自身、スポーツは人々の生活に活気を与え、地域の活性化に貢献するエンターテインメントであると考えていることから、スポーツビジネスには関心を持っています。
 今回はJリーグ(J1)の各クラブチームの決算書を基に、売上高について分析をしました。私自身の勉強とそのアウトプットも兼ねてここに記載いたします。
 
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伊勢会計事務所
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1 売上高(営業収益)の全体像

 Jリーグは毎年各クラブの経営情報を開示しており、今回は主に「クラブ個別経営情報開示資料」で各クラブの決算情報を確認しました。
 ポイントを要約すると次の通りとなります。グラフ(筆者作成)と併せてご覧いただければと思います。

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2019年度におけるJ1所属クラブの売上高の平均は約50億円。
・売上高は5年連続で増加しており、5年前の約1.5倍となっている。
2019年度におけるスポンサー収入の平均は約22億円。
・スポンサー収入も増加しており、5年前の約1.4倍となっている。
・売上高の約4割をスポンサー収入が占めており、クラブ経営上スポンサーの獲得が非常に重要であると理解できる。

 2018年及び2019年のヴィッセル神戸における売上高とスポンサー収入の構成比が突出して高くなっています。2019年の売上高は114億円でスポンサー収入の構成比が64.7%です。

 神戸を除いた売上高の平均が45億6,900万円、スポンサー収入の平均が19億700万円(41.7%)ですので、J1全体としては売上高に占めるスポンサー収入の割合は減少しながらも、全体の売上高は増加させることができているといえます。

 とはいえ、売上高の約4割をスポンサー収入が占めており、サッカークラブの経営を行う上でスポンサーの獲得が非常に重要であると理解することができます。

 次の項からは、2019年における売上に関して特徴の見られた次のクラブを取り上げて見ていきます。なお、ヴィッセル神戸については他の機会に見ることとし、今回のご紹介からは省いています。

・サガン鳥栖
・川崎フロンターレ
・浦和レッズ
・横浜F・マリノス

2 サガン鳥栖の売上高

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 2019年におけるサガン鳥栖の売上高は25億6,100万円となっており、2018年と比較して39.8%売上高が減少しています。下落率としては最も高い水準となっています。

 大きな要因はやはりスポンサー収入の減少で、2019年は8億1,000万円と2018年と比較して64.7%減少しています。報道にもあったように、大口スポンサーであった「Cygames」と「DHC」の撤退が大きな影響を与えたようです。

 スポンサー収入の獲得が重要であることは先述のとおりですが、スポンサー収入の内訳のバランスを考えることもまた、クラブチームの経営を考える上で重要であると理解できます。

3 川崎フロンターレの売上高

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 2019年における川崎フロンターレの売上高は69億6,900万円となっており、スポンサー収入は21億4,300万円(30.8%)と構成比としては平均よりも少ないのが特徴です。

 売上高は全体の3番目に高い水準となっていますが、これに大きく貢献しているのがJリーグ配分金17億9,200万円(25.7%)です。そのほとんどが「理念強化配分金」であると推測しています。

 理念強化配分金は、J1リーグ戦の年間順位1位から4位のJクラブに対
して最長3年間にわたって支給されるものであり、DAZN(ダゾーン)の放映権収入を原資として2017年から配分が開始されました。川崎フロンターレは2年連続でリーグ戦優勝していますので、この配分金による受領が突出して高くなっています。

4 浦和レッズの売上高

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 2019年における浦和レッズの売上高は82億1,800万円、スポンサー収入は38億4,100万円(46.7%)であり、売上高は全体の2番目、スポンサー収入は全体の3番目に高い水準となっています。

 特徴的なのは入場料収入が23億円(28.0%)であることです。23億円は、2番目に高い横浜F・マリノスの約2倍となっており、ダントツで高い収入を得られています。この水準を5年連続で維持しています。

 浦和レッズは、2002年のワールドカップのために作られた埼玉スタジアムをホームスタジアムとしています。その収容人数は日本で2番目の63,700人であり、この強みを最大限に生かしているからこそ多くの入場料収入を得られていると理解できます。実際に、2019年における浦和レッズの平均観客動員数は34,184人と、最も高い観客動員数を誇っています。

5 横浜F・マリノスの売上高

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 2019年における横浜F・マリノスの売上高は58億8,400万円、スポンサー収入は22億6,300万円(38.5%)であり、入場料収入に関しては12億8,600万円と浦和レッズに次いで2番に高い水準となっています。

 この入場料収入に関して、2番に高い水準であることを前向きに捉えるべきかというとそうではないと思います。横浜F・マリノスのホームスタジアムが、日本最大の72,327人の収容人数を誇る日産スタジアムであるためです。埼玉スタジアムよりも1万人弱収容人数が多いにも関わらず、入場料収入は浦和レッズの5割強に留まっています。

 また、入場料収入とは、次のように算出されるものと考えられますが、2019年における横浜F・マリノスの平均観客動員数は27,010人と浦和レッズの8割程度の水準となっていますので、浦和レッズと比較してチケット単価も低い水準にあると推測できます。
 したがって、観客動員数だけではなくチケット単価にも課題があると考えられます。

入場料収入 = 観客動員数 × チケット単価

6 終わりに

 今回はJリーグ(J1)の各クラブチームの決算書を基に、売上高について分析をしました。人件費を中心とした費用や利益、貸借対照表についても分析しましたので、ぜひご覧下さい。

参考サイト:Jリーグクラブ個別経営情報https://aboutj.jleague.jp/corporate/management/club/ 

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