i.schoolって実際どうなの? -2020年度修了生のつぶやき-
そもそもi.schoolって?
i.schoolは、東京大学から独立したイノベーション教育プログラム。
大学生・院生がイノベーションを生み出すプロセスを1年間かけて学ぶ「i.school通年プログラム」を運営している。
・東大生だけ? →NO!
もともとは東大生向けだったが、今は全国各地(海外も)の大学/大学院から学生が参加している。特に昨年〜今年はオンライン開催がメインだったので、場所に関係なく参加できる。
・費用がかかる? →NO!
イノベーション教育専門の大学の先生、敏腕コンサル、伝説のイノベーターなど多様な人から、1年を通して学ぶことができて、なんと費用はかからない。
・怪しい組織? →NO!
i.schoolは今年(2021年)で12年目を迎え、130名以上の修了生が多方面で活躍している。
■ 2021年度のi.schoolプログラム内容はこちら ■
でも、「大変じゃないの?」「どんな人がいるの?」「どんなことを学べるの?」と、疑問で一杯なあなたのために、2020年度通年生だった3人でゆるく座談会をしたので、良かったら参考にしてほしい。
つぶやきメンバー(2020年度通年生)
てっしー:航空宇宙工学というキラキラした学問を探求する修士の学生。人工衛星の画像処理とかしてる。
わーさん:歴史学を専攻している修士の学生。江戸時代どんとこい。
りた:コンピュータサイエンスを勉強しようと大学院に入り、気がついたら農業をやっている、迷える子羊系の修士学生。
どんなきっかけでi.schoolに応募した?
わーさん:友達に教えてもらった。その人は修了生ではなかったんだけど、i.schoolのことは知ってた。当時、アイデアを発想した経験がなかったんだけど「どうやったらいいアイデアが出るんだろう」ということに純粋に興味を持った。
てっしー:僕は、入門プログラムに行ったのがきっかけ。大学2年生のときに、主題科目のシラバスをめくっていたらi.school KOMABA(編注:現在はi.school ZEROに改称、単位なし)があって。シラバスに書いてあることは全然分からなかったけど、面白そうと思って飛び込んでみたら結構ハマっちゃった。
わーさん:どんなところにハマった?
てっしー:モヤモヤ悩むところ。なんかよくわかんないなぁみたいな感じで議論が止まるときってあるよね。意外とその頭が働いている感じが面白くて、感覚の新しさにハマった。
りた:なるほどね。まさに向いてる人だ。入ってみないと向いているかどうか、わかんないもんね。
てっしー:そうそう。りたさんはどう?
りた:私は元々会社で改善プロジェクトをやっていて、改善することは勉強したけれど、延長線上での改善だけだと限界があるなって感じた。全く新しい、ジャンプするようなアイデアを生み出す方法が分からなくて。0それを探している中でデザイン思考に出会った。それでデザイン思考についての本を読んでいたら、それを日本で勉強できるのはi.schoolだと紹介されていたのがきっかけ。毎日i.schoolのサイトをチェックして、応募開始とほぼ同時に申し込んだ。
わーさん:毎日公式サイトを見てたの?すごいな。
どんな人に会えた?
てっしー:どんな人がいたかなあ。色んな人がいるよね。この3人でもだいぶタイプ違うし。専門分野で言うと…?
りた:文理どっちが多いとか感じたことないよね。
わーさん:どっちが多いという発想があまり当てはまらないというか、あまり特定の専門分野が必要な場面もないし。
りた:学年でいうと学部3年生から修士2年までいるのかな。
わーさん:ワークショップでは、企業からの参加で40代くらいの社会人の方も混ざるけど、違和感なく話せるよね。誰も専門的に突き詰めたことがない部分を扱っているから、みんな平等な気がする。
りた:最初の自己紹介で、各自の目標を書いたよね。その時に、アイデア発想法を学びたいタイプと、何か新しいことのシードを見つけたいタイプ、両方いるなと思った。私はどちらかというと後者。事業を起こしたいから、ヒントを得たいという気持ちが強かった。
てっしー:ってことは、ワークショップのテーマに注目してたの?事業の種をみつけるために。
りた:いや、そこはあまり気にしてなくて。アイデアをブラッシュアップする方法を自分の考えていることに適用することで、事業化したいと思ってた。
わーさん:そういう目的意識がある人に会えるっていう良さもあるよね。
てっしー:たしかに。自主的にミーティングをする時とか、そういう雑談を若干することもあったかなあ。
どれくらい忙しかった?
わーさん:自分は休学したから、時間はわりと自由に使えてたかな。
りた:正直なところ、結構大変だった印象。前期は10個ぐらい授業があって、ワークショップの課題と宿題のリストがこう結構貯まっていってた。後期になると、少し余裕が出てくるようになったかな。
わーさん:忙しいときは、週1で19時から22時ぐらいまでワークショップやって。通常は月1、2回ぐらい土日にワークショップがあった感じだよね。
てっしー:うん。チームによっては、そのワークショップの時間外で追加のの議論をしたり、インタビューをしてたよね。2週に1回くらい。僕も修士1年で就職活動をしてたので、正直、前期は、バタバタしてた。就活とうまく両立する工夫は必要だった。
りた:オンラインだったのがありがたかったよね。移動時間もかからないし。
わーさん:本当にそう。自分はあのスタジオまで通うのに1時間半くらいかかるんだよね(笑)。だから、オンラインじゃないとそもそもスケジュールとして成立してたかどうか怪しい。(編注:2021年度は事態収束までオンライン開催予定、後半は検討中)
どんな学びが得られた?
てっしー:違和感を扱うスキル。日常生活のなかで、なんでこのおばさんは手押し車なのに歩くの早いんだろうとか、そういう違和感に敏感になって、なんでだろうなーと考えるのが速くなった。就職活動のケース面接でもそういうスキルが役立ったと思う。
わーさん:自分は、「自分は文系人間だから技術を扱えない、だから何かを起こせない」という誤解・コンプレックスは解消された。アナロジーとか今ある技術を組み合わせることで、技術ではなくニーズを自ら導き出してイノベーションを起こせるんだという大きな気付きはあった。
わーさん:i.schoolで学べる手法としては、アナロジー思考とバイアスブレイキング(編注:i.schoolで扱う手法)が大きなキーワードだと思う。アナロジー発想は、それまでの日常ではあまり使わなかったけれど、この1年間使い続けて鍛えられたと思う。バイアスブレイキングについては、それまではバイアスの破壊とアイデアの発想が結びついていなかったんだけど、今ではバイアスを破壊する方法もアイデア発想のスキルとして身についたし、「あ、これは生かすことができるんだ」っていうマインドも身に付いた。
りた:たしかに、(自分の中の)バイアスに気づく機会が増えたと思う。
わーさん:うん、それはすごいある。
りた:ワークショップ2でお金について扱ったときに、新卒でフリーランスになるという事例と出会ったんだけど、「いや、そんなのありえない」って思ったんだよね。でも後から考えたら、それがバイアスだったんだと、すごい衝撃を受けた。やっぱり自分の中にはめちゃめちゃバイアスあるし、それに気付いてないなって言うのは1年を通して感じた。
わーさん:学びとしては副次的要素ではあるんだけど、今まで触れたことのない情報に触れ続けることで、例えば「フリーランス、やってみたいな」と思ったり。こういうワークショップでなければ、そういうことはまず思わなかった。
てっしー:日常生活でバイアスに気づけるようになったっていうのは、教育プログラムとしても1つ得られたものではあるよね。
りた:innotalk(イノトーク)でいろんなタイプのイノベーションを起こしている人の話を聞けたのも結構面白かった。イノベーションを起こす人は、アメリカ西海岸のTシャツを着た若いお兄さんだと思ってた。実際は大企業にいる人も起こしてるし、地方にいる人も起こしているし、いろんな年代の人も起こしている。「スティーブジョブズのような激しい人生じゃなくてもイノベーションを起こせるんだ。自分も挑戦できるかも」というマインドを持てた。
わーさん:いろんな解法を見つけた時の感覚に似ている気がする。自分なりのイノベーションを起こし方を探ることができる機会であることは、自分も確かに感じたね。
てっしー:ちょっと話戻るかもしれないけど、i.schoolの人って派手ではないんだよね。地道にイノベーションを起こそうと目指している人たちの集まりであって、カリスマ性はそんなに感じない。
わーさん:たしかに。
学びをどんなことに活かしたい?
わーさん:自分のやり方でイノベーションを起こす。ネタはまだない。
わーさん:一言で言えば、自分でイノベーションを起こしたい。イノベーションを起こしたい課題はいくつかはあるけども、これっていうのは自分の中ではまだ定まってなくて。だから色々やってみようと思っている。せっかく良い武器を1年かけて鍛えたわけなので、使わない手はない。
わーさん:i.schoolに入ったときは、ソーシャルビジネスに興味があって、ダイレクトに社会課題を解決したいと思ってた。だけど、今は割と普通のビジネスにもかなり興味がある。この辺りは柔軟に考えたいなと思う。
てっしー:日常生活でイノベーションを起こす。普段の仕事や研究の中で、小さなイノベーションを積み重ねていきたいと思う。
てっしー:研究でも、アイデアを考える時がある。例えば、既存の手法がある中で、どんな新しい手法を作るかっていうのは、結構、アイデア勝負なところがあったりする。そこで先行研究者のバイアスを探してみる。これにはi.schoolでの学びが役立つ。そういう小さなイノベーションがちょっとずつ積み重なって自分を創っていくのかなって思う。
わーさん:自分もそう思う。結構な大げさなことを言ったけれど、たとえ規模が小さくても、自分で考えたことで社会に変化を与えたいと思ってる。
りた:常に新しいものが生み出ているところにいたい。自分は、どんな素晴らしい会社にいても将来どうなるかわからないという強い不安がある。だから、生き延びる方法は、常に何か新しいものが生み出ている所にいることだと思ってる。
わーさん:それにはかなり共感する。
りた:イノベーションを起こすことが、生き延びる可能性が高い唯一の術みたいな感覚を持っている。
てっしー:「イノベーション本気で起こしたい人」と応募要件に書いてあるけど、あれを一義的に取られるのもまあちょっと残念な気がするよね。例えばイノベーティブな組織に身を置いてみたい人とか、いろんなイノベーションを起こし方とかってあるはずで、自分が起こすだけじゃなくてね。
わーさん:それでいくと、自分も、自分でイノベーションを起こしたいというよりかは、自分のやり方でイノベーションを起こしたいという表現が近いかな。
りた:新しい方法を創出するってことね。
わーさん:教わったことって、自分が完全に再現できるわけじゃない。いろんなアイデア発想法をうまく組み合わせて、なんかやれないかな、と思う。
どんな人におすすめしたい?
・考えるのが好き
てっしー:日常生活の中で、スーパーの商品棚に餃子の皮が3種もあるのはなぜだろう?とか、そんなことを寝ずに考えている人がi.schoolに来ると、考え方の作法を持って、コントロールしながら考えることができるようになるので、もっと考えるのが面白くなると思う。
・とりあえず、申し込んでみる
りた:普段から思考実験を繰り返してるわけではない私みたいなタイプの人はとりあえず申し込めばいいと思う。
てっしー:申し込んできて、見えることあるかもね。
りた:そうそう、このプログラムに合っているかどうかは、ベテランの先生達が面接の中で確かに判断してくれるから、わからなければ申し込めばいいと思う。
・建設的な批判ができるようになりたい
わーさん:参加前の自分は、批判や指摘だけはできるけど、そこから先の提案する力が足りていなかったと思う。「ここが気に入らない」と指摘するだけなら誰でもできる。じゃあどうすればいいかをうまく考えられない、言えない自分がすごく嫌いで。建設的な批判ができるようになりたいなと思って参加した。
てっしー:たしかに、i.schoolでは、相手を否定しない、ということは基本のルールとして1年間徹底されるね。「ここはいいと思う、でもこうだよね。だからこうしようよ」という3点セットで発言するクセはいつの間にかついてたよね。たぶん通年生全員そうじゃない?
てっしー:だからこそ、イノベーティブというか、ちょっと外れるような発言も自由にできて、学びも深まる。心理的安全性がある環境ではあるのかなと思う。建設的な批判がみんなできるからね。
通年生募集してるよ
ここまで読む気力のあった人は、i.schoolに向いている可能性が高い。i.schoolの通年プログラムは、例年2月〜3月上旬の期間で募集している。
公式HPによれば、「随時選考を進めているため、後半になるにつれて選抜基準が上がります」とのこと。ぜひ早めに応募しよう。
■ 通年生の詳細&申し込みはこちら ■
公募生募集してるよ
i.school通年プログラムに参加できなかったとしても、開催しているワークショップに学生であれば公募生として応募できる。選考の上参加可能かどうか通知している。
開催予定のワークショップで随時公募しているので、チェックしてみて欲しい。
■ 2021年度のi.schoolプログラムスケジュールはこちら ■
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