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クサギ染め、日記
あの不思議な青い実は、布をそのまま青色に染めるらしい。そう知った時から、ずっと試してみたかった。
クサギ。私のフィールドでは、隣人みたいに馴染みのある植物のひとつだ。
どこからでも生えてきて、放っておいたらすぐ殖えてしまうから、見つけたらとりあえず刈ろうかなと思う。
だからといって、嫌いなわけでもない。なにかと独自路線を行っていて、気になる存在。
刈っている時には変わった匂いがする。濃縮されたピーナッツみたいな。
夏は白い花が咲く。枝先にまとまって花束みたいに咲く。蕾はピンクがかっていて、とても可憐だ。
秋になると、花束のような姿は残したまま赤紫の萼と青い実に変わる。夏と打って変わって、強い色をしている。
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この青い実が、草木染めで青系の色が出る数少ない染料のひとつらしい。…
やってみたすぎる。
そこから何年か、実を集めるのにトライしてきた。
実生が出てきてから成長して実をつけるようになるまでは少なくとも2,3年かかるらしい。
フィールドにあるクサギを全てぼうぼうのままにしておくわけにはいけないので、実をつけそうな木を何本か残しながら、収穫の季節を待った。
去年はすこし採れたものの、量が少なすぎて断念した。(改めてよく調べたら冷凍保存しておけば使えたみたい)
そしてこの秋。やっと集まった実、67g。
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これを使って、文生地の白い手ぬぐいを一枚染めてみようと思う。
ちなみに、草木染めの経験は過去2,3回くらいしかない。ひとりでやってみるのもこれが初めてで、何より性分からして適当なので、やり方的な参考にはならないと思います。
まずは、染める布の方の下準備から。
牛乳がちょうどあったので、30分ほど漬けてから干してよく乾かした。
次に、クサギの実を煮出して漉す作業。
これを何回か繰り返して染料を作る。
萼から外してよく洗った実を、とりあえず500mlの水で煮出してみる。
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草木染めに使う鍋の素材はステンレスかホーローがいいらしい。
でも、うちにあるそういったこと(食品以外の何かを火にかけること)用の鍋はアルミしか無かったので、それでやった。
後で思い至ったことだが、染料によっては色が変わってしまったり、体に良くない化学反応が起きるかもしれない。次にやる時にはきちんと用意しておく。
火にかけているとクサギ独特の匂いがしてきた。生木を刈っている時よりはかなり控えめに感じる。
家族が「えんどう豆のさやの匂いがする」と言って見に来た。何の前触れもなく家のキッチンでにおいのある木の実を煮出し始めてごめん。
沸騰してから弱火にして15分ほど煮たあと、バケツにざると手ぬぐい(染める用とは別のもの)を被せて漉す。
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漉したものをすくって見てみる。
一見、人工的に感じるほど鮮やかだけれど、知っている自然の色。カワセミの羽の色だ。
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ところで、クサギの、特に若葉は食べられるらしい。
実のほうも、ひと通り図鑑などを読んで毒性があるなどの特記は見つからなかった。
知っている。「書かれていない」ことは、「やっていい」ということでは決してない。
猛スピードで舌の上を苦みが駆け抜けていった。
「え!?苦すぎる!!」の「る」に差しかかった瞬間にはもう無味、水分だけが口の中に残り、後味のえぐみも皆無。
間違いなく、人生で初めての味体験だった。
2回目からは実を潰してみる。水は1回目より少し減らして、300ml。煮る時間は同じく沸騰してから15分。
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2回目は実をつぶしたのと水を減らしたので透明感がなくなり、より濃い色になった。
まだ余裕で色が出そうだったので、2回目と同じ水の分量・煮出し時間でもう一度煮出すことにした。
3回目に取ったものは写真では分かりづらいが、緑がかった青になった。
1~3回目の染料を全て合わせたら、ほぼ黒色の液体になった。
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次はいよいよ布を浸して色を移していく作業。
どうせなら無媒染とミョウバン媒染、両方とも試してみたくなってきた。
染める予定の手ぬぐいを半分に切った。
投入。
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布が一瞬で色を帯びていくのに感動する。
とろ火にかけて様子を見ながら20分経ったところで、布だけを鍋から取り出して、バケツの水が透明になるまで流水でよく洗った。
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この写真はカメラの具合で肉眼で見るより色濃いめ
乾いたら薄くなるとはいえ、かなりしっかりと発色している。
ここから、半分にわけたうち一枚はミョウバンを溶かした媒染剤に、一枚はそのままもう一度染料に浸す。
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ミョウバン媒染の方がやや色温度低めに見えるが、そもそも浸している液の色が違うので、実際あまり変わらない気もする。
やり方が間違っている可能性もある。若干不安になってきたが、まあいいか。
また20分後。
無媒染の方は洗って染め終わりとする。
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青いバケツだと洗い終わりが見えない
媒染した方は洗ってもう一度、浸し→媒染→洗いの工程を繰り返した。
完成したものを並べて干してみる。
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肉眼で見てもこんな感じの濃度。左側、媒染した方がややこっくりとした染まり具合になった。
このまま乾かしていく。
夢中になっていたら、まあまあ夜も更けてしまった。完成を楽しみに眠った。
すっかり乾いた、完成の姿。
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両方とも肉眼で見るともう少し濃い色
特に大きな色の違いはないけれど、媒染したほうが若干緑がかっている。
媒染による違いというよりは、浸した染料の濃度に関係したものかもしれない。
どちらもほんとうに美しい色になった。
来年は近所の子どもたちと一緒にやりたいな。できたら実を採るところから。
きっと作業しながら、くせ〜!って言うんだろうな。そういうのも含めて、子どもたちのやわらかな心にもよく染まる色のような気がする。
今回完成したものは布の性質と相談しながら、何か小物に加工しようと思う。
色留まりの具合も含め、また日記にしたい。
おまけ
実を漉すのに使った手ぬぐいも染まった。
煮汁の色に一番近い印象。
何も手を加えていないのですぐ色が抜けるかもしれないが、これはこれで綺麗なのでそのまま乾かした。
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換気をして、終わった後に掃除もしたけれど、数日間はキッチンからうっすらクサギの匂いがする瞬間があった。
家族は「なんか、カメムシかも」と言っていた。
ごめん。