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【エッセイ×ストーリー】買い物かごをバッグに替えただけ

効率や合理的なことを求めすぎて、つい大切なことを見失っている……。
そんな経験ありませんか?
わたしも見失っていた1人です。
何を大切にしていきたいのか、思い出したきっかけをnoteエッセイにしたためました。


「さてと、買い出しにでも行くか……」


会社員を辞めてフリーランスとなった今、ここ最近のお出かけといえば「買い出し」がメインになりつつある。


「買い物」ではなく「買い出し」。


似ているようでまったく似ていない、その2つの行動。知らず知らずのうちに、わたしは「買い出しマスター」になっていた。


それと同時に、心の奥に吹きすさぶ「すきま風」。
ビュービュー…カラカラ………と聞こえたような気もする。



(気のせいか……)


玄関のパントリーを開けて、いつもの買い物かごを取り出す。
数日分の食材や日用品をまとめ買いすることにしてから、エコバックよりも遥かに効率のよい「買い物かご」の存在に気づいてしまったのだった。


最近は、買い物かごの出動率100%
お気に入りだったエコバッグは、買い物かごの底でアシスタントの顔をして待機している。


「何かあればすぐに手伝いますよ」


自分の出番を心待ちにしながら、真四角の形状をした頼もしい買い物かごに寄り添っているのだった。


***


安定感も抜群で頼りがいのある「買い物かご」はもはや最強! 
何しろ、詰め方にさほと頭を悩ませることがない分、時短になるのだ。



何なら、スマートショッピングカートのあるお店なら最短時間も狙える!



田舎町ならではの車社会。後部座席に相棒の買い物かごを乗せる。
なかなかに場所を取ってくれるが、今ではわたしの大切な相棒だ。


ビュービュー…カラカラ………。


ん? またしても心の奥に吹きすさぶ「すきま風」が聞こえたような?
わたしは「すきま風」の存在に気づかぬふりを続けていた。でも、その正体に向き合うきっかけは突如としてやって来ることとなる。



「2025年はアーティストデート時間を作るぞ!」
わたしは密かに心に決めていた。週1回が難しいなら、まずは月1回からでも実践するつもりでいた。


アーティストデートとは……
週に1回、自分の心がワクワクすることを1人で行う。とくに、子どものころに好きだったことを行動にうつすと、創造性が刺激される。



在宅ワークでパソコンとにらめっこする日々。頭のなかは、締切り、自分の執筆したいことや勉強したいこと、家事、献立、買い物リスト、ペットのことでゴチャゴチャ。


やらなくちゃいけないこと、やるべきこと、やりたいこと。
それらに終わりがないことに気づいた。


ならば、どこかで区切りをつけねば……。


ゴチャゴチャすべてが終わるのを待ってアーティストデートを計画していたら、いつのことになるやら……。



🌟アーティストデートの決行日は月末とする


2025年のスタートとともに自分の胸に誓いをたてた。

おしゃれなカフェでゆっくりとランチを堪能しながら、読書タイムを作るぞ!


ところが、月末が近づくにつれて優柔不断な心がざわめき始めた。


効率的な自分の登場
どうせなら、Wi-Fiのあるカフェで作業時間を作ったら?
やらなきゃいけないことあるよね?

正論派の自分登場→
HSPで音に敏感だから、人が多いと執筆に集中できないでしょ……。

めんどくさがりの自分登場
寒いし、やらなきゃいけないことがあるなら家でやった方がはかどるかもよ


頭のなかに三者三様の考えが浮かんできて、わたしの計画を邪魔しようとする。

わたしの分身はなかなかに手強い。はりきっていたはずの気持ちが、一気に揺らぎ始める。


(そうなんだよねぇ……。おしゃれなカフェはたくさんあるのに、Wi-Fiが使えて人が少なくて……気に入るカフェがなかなか見つからないのよ)

3人の分身とともに、心のなかで井戸端会議が始まる始末……。


いかん、いかんっ!!! と慌てふためき、わたしは頭のなかの3人を打ち消した。


えーい、どうにでもなれ!
執筆なし。わたしは気分転換したいんだ!


いくつかの気になるカフェをピックアップし、今の自分にしっくりくるお店を選び始める。そして、自分の心の声にそっと耳を澄ます。


どんな雰囲気の場所に行きたい?
どんな食材を食べたい?
どんな時間を過ごしたい?


☟ ☟ ☟


ゆったりと流れる時間のなかで、体に優しい食材を食べながら本を読んだり、自分の考えをノートにまとめたりしたい。


答えは導き出された。そうと決まれば、今回はあのお店に行ってみよう!
わたしは「うつわカフェ」を選び、おしゃれをして出発の手はずを整えた。

バッグのなかにそっと本を忍ばせる。
それは、ジュリア・キャメロンの『いくつになっても、『ずっとやりたかったこと』をやりなさい』


きっと、今のわたしのお守りになるに違いない。




玄関の鏡で身だしなみをチェックしていると、頭のなかに効率的な自分が登場する。


「せっかく出かけるなら、帰りに買い物した方がよくない?」


それもそうだな……と思い、ふと鏡の横のパントリーに手がのびかけた。


………………。


いや、今日は買い物かごは置いて行こう。
効率や正論、めんどぐさがりの自分の分身とともにお留守番してもらおう。


***


カフェの前に立ち寄った本屋さんで、素敵な表紙やタイトルに心をワクワクさせる。何度も棚の前を行き来して、胸が高鳴る本をそっと手に取る。


「やっぱりこの本が気になる」


その後……アンティークの棚いっぱいに並べられた個性的な和食器を眺めながら、わたしはしみじみと感じていた。このカフェを選んでよかった。そして、この本を買ってよかったと。



健康的な食材をふんだんに使ったランチを食べ終え、読書を愉しみ、思いついた考えをノートに書きめぐらす。


家を出て、本屋さんへ行って、カフェでランチしただけの数時間。
癒される素敵なカフェの魔法なのか、ほんの数時間のアーティストデートで生まれ変わっている自分がいた。


そして、わたしは気づいたのだ。


効率や合理的な生活を重視するあまり、人生の愉しみ方を忘れていたことに。本当は、おしゃれやカフェ巡りが好きなのに、日常にどっぷり浸かりきって大切なことを見失っていた。


わたしは今日、買い物かごを置いてバッグに持ち替えただけで、心弾む時間を過ごせた。


そしてわたしは心に決める。毎月アーティストデートする。
買い物かごだらけの毎日から卒業だ!


フジコ・ヘミングのような素敵な店主のマダムに見送られ、カフェを後にする。真冬の冷たい風が頬をなでる。その風は、心の奥に吹きすさぶ「すきま風」とは違って、ひんやりとして心地よい風だった。


運転席に乗り込むときに、ふと目に入った後部座席。
真四角の形状をした頼もしいアイツがいない分、ガランとしている。


そして助手席に置いたバッグのなかには、1冊の真新しい本。
最後のページまでめくられるのをソワソワしながら待っている。そんな雰囲気を何となく感じながら、わたしはエンジンをかけていた。


***

アーティストデートに興味のある方は、ジュリア・キャメロン著「いくつになっても、『ずっとやりたかったこと』をやりなさい」を読んでみてくださいね↓↓↓


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いさな(藤原 勇魚) 植物・自然Webライター|kindle作家
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