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映画業界 ハラスメント体験記【奴隷日記#13】


昨日までの記事、長々とご愛読ありがとうございました。キリよく全10回にまとめようとしていたのですが、色々と描写を削っていくうちに、

「映画業界の実情を話すのなら、カットしちゃいけないんじゃないか」

と思うようになり、結局全13回となりました。


私がこのハラスメント体験記、奴隷日記というのを書き始めたのは、2020年の夏にまで遡ります。このnoteに活動を移行させる前、個人ブログにて多くの反響を読んでいたシリーズで、noteに移行させる上で、このシリーズだけはきちんとした形で残しておきたい、と考え、加筆・修正をして書き上げました。

「映画」というのは、夢のある仕事だと思います。たった1本の映画で、誰かの人生を大きく変えてしまう、そんな夢のある仕事です。けれど、その映画を作る人間に視線を向けてみると、全く異なるイメージが湧き上がります。

特に若者は、「やりがい搾取」と呼ばれるような薄給と長時間の拘束に耐え、最近マシになってきているとはいえ、暴力や暴言が横行しています。他の職業ではあり得ない環境が、映画業界には当然のこととして受け入れられてきたのです。

それは、きっと閉鎖的な環境だからでしょう。例えば、求人情報にしても、ネットで調べても調べてもなかなか出てこない。劇場でかかる商業映画を作る制作会社もHPさえ持たぬ企業だって多く存在します。雇用形態も、殆どがフリーランスという形態に支えられ、その実、福利厚生など存在しないに等しいです。偽装委託、偽装請負といった問題もそこかしこで見られます。

それでも業界が壊れずに成立したのは、夢を持った若人たちが、喰らいついてきた歴史があるからです。「こんなものに負けるか!」と。「俺は這い上がるんだ!」と。そうやって、幾多の若者が、映画に挑戦し、映画に傷つき、映画に殺され、あるいは映画に生かされてきたのです。

そして、そういうものたちが、「自分たちはこうだった」と歴史を積み重ね、また新たな若者たちに、同様の経験を強いらせています。これでは負の連鎖です。


けれど、時代の流れに沿うように、映画業界でも自浄の兆候は見え始めています。ネットフリックスの映画制作では、ハラスメント教育が導入され、その他の現場でも、そのような取り組みが始まりつつあります。また、アップリンクのパワハラ問題に端を発した、映画業界改善の流れは確かに、空気として存在しています。最近でも、遊山監督のセクハラ・パワハラ事件のように、様々な問題が白日に晒されることも多くなっています。

徐々に良くなってきている、それは確かです。

けれど、未だに存在するのです。そして、それを周りに言えずに、また、周りに話せたとしても大した行動をされずに、見過ごされているのです。それはこの記事を書きながら、私のTwitterに数名の方がメッセージを送ってくれた事が証拠です。

「今、アキさんのような人が現場の上司です」

「毎日殴られてて、もうやめたいです」

「あんなに働いても、給料が低すぎて生きていけない」

そんな言葉が、この知名度の低い新人映画監督の元にも届くのです。


今一度、映画業界に関わる者、何より映画を愛するものが、こういう問題だらけの業界に「これじゃだめだ!」と意思を伝えなければ、何か行動で示さなければ、一過性の問題として、加害者たちはどんどん雲隠れしていきます。だから、私もこのシリーズを書かせてもらいました。


日本の映画を支えるこれからの若者のために、映画を愛する皆様、是非ともこの問題を忘れる事なく、お願いします。もし、誰かが声をあげていたら、いいねでも、RTでもいいから、賛同の意思を見せてあげてほしい。

現場で誰かが殴られたり怒鳴られていたら、声には出せずとも、寄り添ってあげてほしい。それだけでも、きっと空気は変わっていくと信じています。

映画業界の端の端にいる、たった一本しか商業映画を持たぬ私ですが、映画を愛する者が、愛するままに生きられる世界を望んでいます。


閑話休題


ここからは、有料記事ながらも毎回購入が後を絶たない、大好評の会話形式のインタビュー取材を書きます。

前回は愛知での商業映画を振り返ったインタビュー取材を、会話形式で進めました。この映画を通してのJ太郎の思いや、今書いている商業現場へと至るまでの状況が詳しく描かれています。また、話の流れ上、今回の商業現場の具体名も出ています。気になられる方がいましたら、ぜひご検討お願いします。

今回は、奴隷日記を経て考える、今のJ太郎の心情を振り返ったインタビュー取材です。あの時、彼がどう思っていたのか、そして、周りの反応に何を感じたのか、そういう話になっています。また、終盤には現状の新作映画についての情報が載っていたり。購入費用は全額、J太郎や私が属するスタジオカナリヤというグループでの映画制作に、充てさせていただきますので、ぜひご検討ください。

また、サポートも随時お待ちしております。少しでも応援したいと思ってくださる方がいれば、我々も心強い限りです。ご検討お願いします。

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