『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』感想🎞

良くも悪くも水木しげる生誕100年記念作品。

ストーリーの立ち位置としてはアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』6期のエピソードゼロに当たる。
6期を見ていた人間としてはエピソードゼロを見る事が出来て嬉しいが、TVシリーズとは毛色が異なっている。
ややグロテスク。水木のキャラクター表現として『総員玉砕せよ!』の描写も含む為、苦手な人は注意されたし。

特徴的な音楽はアニメ『ひぐらしのなく頃に』シリーズも手掛けた川井憲次さん。
やはり川井憲次さんの音楽はこういう怪しいムラ社会的な雰囲気によく合う。
とはいえ怪しいだけでなく、情緒の溢れるところが『ひぐらしのなく頃に』同様、この物語らしさを際立たせていると思う。

監督である古賀氏は物語の舞台である昭和31年の空気感を演出する事にこだわったようで、現代とは異なる作法を描写したり、早口の演技を指示したりする事で当時を再現した作品を作り上げた。

それにより序盤から多くの固有名詞が早口で飛び交う為、関係性を整理し理解する前に、初めて見る視聴者は置いてけぼりになってしまう。
そこも含め「何度も楽しんでね」という事かもしれないが、その度に一時停止したり巻き戻したりした身としてはストレス。
字幕表示推奨。

そういったリアリティを追求した表現がある一方で、派手な死傷描写が嫌に目立つ。
アニメであり、妖怪が関わる以上ある程度大げさな表現は避けられないが、本当にあそこまでの表現が必要だっただろうか?
視聴者に訴え掛けやすい派手な描写を安易に選んではいないか?
リアリティを追求しているからこそ、アニメならではの表現とのバランスはもう少し取って欲しかった所。
6期系統とはいえ配色の彩度が高い事からも、結局どのような作品にしたいのかちぐはくに感じ、また、強い独り善がりも感じた。

見どころとされる戦闘シーンは、確かにとても滑らかで素晴らしいクオリティだと思うが、6期鬼太郎の武器名を叫びながら戦う姿で馴染んだ身としては、少し寂しく味気ない。

鬼太郎や鬼太郎の武器の歴史を知れた事は楽しかったが、冒頭にも書いた通り「良くも悪くも水木しげる生誕100年記念作品」に尽きる。

今後6期の系統作品が制作されるのであれば、より6期の雰囲気が感じられる事を期待したい。

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