詩
「蝿取紙〜ハエトリガミ〜」
蝿取紙を見るたびに私は愕然とするのだ
天井から垂れるテエプは
のんべんだらりと揺れている
だが一度でも心を許し足を踏み込むと
いやらしい顔でニタッと笑い
もう二度と彼を離さない
しだいに弱まる羽音
おびただしい眇眇たる命
着実に丁寧に消えゆく命
平和に見える世の中の
そっと後ろに回り込み
時間をかけて同化する
そして気付いた時には
我々は粘着質に足を取られ
もがくことも叫ぶこともできなくなる
静かにしかし着実に忍び寄る恐怖に
私は愕然とするのだ
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