芸術家人生を彫刻する(総論1)
あなたの描く理想の芸術家像はどんな人で、どんな暮らしをしているでしょうか。
現在のあなたは、その理想にどれだけ近いですか。
そして将来、理想の芸術家になるために、あなたは今何をしていますか。
作家にとって一番大切なものは制作だと思います。
しかし、芸術家だって社会の一員。日々暮らしていけなければ、制作は出来ません。
つまり、どうやって芸術家としてキャリアを築き、生きていくかを考えていくことは、制作と共に非常に重要な問題なのです。
私は大学(学部)卒業後、高校教員として数年間働いた後、海外でキャリア(約7年間)を積みました。
そのキャリアは必ずしも制作とは直結しないこともあったのですが、大きなビジョンを描いて行動してきた事で、最終的にはそれらが緩やかに結びついて、キャリアとして築く事ができたと考えています。
そして、36歳の時に大学(母校)の常勤職に付き、現在は教育と制作・研究活動を行っています。
大学の教員を芸術家と呼んでいいかどうかは、議論が分かれるところではありますが、私自身は、自分が描く理想に近い制作環境の中で制作を続ける事ができており、次の段階(作品を継続的に制作・発表していく)に進む事が出来たと感じています。(次のステージはもっと厳しい世界であることは理解しているつもりですが)
現在の職を得る事が出来たのは、芸術の実力以上に、キャリアを築くための「戦略」を描いていた事が、最も大きな要因であったと考えています。後述しますが、唯一無二の存在となる事を求められる芸術の世界。私と同じ事をやっても(やる人はいないと思いますが)、同じようにはなりません。しかし、私自身の経験やこれまで考えてきた事をここで共有する事で、その「考え方」を参考にしてもらえればと考え筆をとりました。