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今期の異端児『怪病医ラムネ』


2021年冬アニメも放送開始から1カ月が過ぎましたが、診療×怪異アニメの『怪病医ラムネ』が意外にも面白いと思いましたので、今回紹介させていただきます。

診療アニメと申しましても、『ブラック・ジャック』のように医学を用いた治療は全く行いません。

悩みを持つ人の身体に入り込む「怪」という存在。その「怪」が人に憑りつくことで発症する「怪病」を治療するのが、『怪病医ラムネ』です。

その怪病をラムネ医師は「怪具」を用いて治療する、というわけです。

まずはキービジュアルを見てください。

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一見夕方アニメのようなキャラクターデザインですが、これでもきっちり深夜アニメですし、他作品の深夜アニメと比べると異色の存在であることは確かです。


そしてこのアニメ、1話冒頭からどれだけ奇抜なのかと言いますと。


少女の目からマヨネーズが出てくるんですよ。

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冒頭30秒でとんでもない色物アニメが始まったな...と思いましたね、ぶっちゃけ。クセがすごい。

少女の目からはマヨネーズ以外にも、醤油ソースが出てくるんですよね。目から調味料が出てくる「怪病」というわけです。

一見バカみたいな設定ではあるんですが、これが病気である以上はきっちり原因がありまして。

目から調味料が出る少女は役者、つまり子役なんですね。「普段から泣いていると、本番の演技で泣けなくなるから」という理由で、母親から泣くことを禁じられていたのです。もう役者を辞めたいのに本当の気持ちを母親に告げられない…そんな少女が「怪」に入り込まれた結果、目から涙の代わりに「調味料」を流すことで感情を吐き出していたのです。

ラムネ医師はそんな少女を診察し、急須コンタクトレンズを処方します。これが「怪具」というわけです。

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急須でお茶を飲んだ少女は本当の気持ちを抑えきれなくなり、役者を止めたいという気持ちを正直に母親へ告げてしまいます。少女を金稼ぎの道具にしか思っていない母親はもちろん激怒します。子役を始める前は毎日料理も作ってくれていたのに...と落胆する少女。

急須でお茶を飲むと目から調味料が出ない代わりに、思っていることが口から漏れてしまう。このことを忌避した少女は、自分の気持ちを抑え込みたい...とコンタクトレンズを付けてしまいます。すると、吐き出せなくなった感情が体に溜まっていき、みるみるうちに身体が壊死してしまいます。

壊死していく少女を見て、母親は「もうお金はいらないから自分の娘を助けて欲しい!」と切に願います。そうすると、娘が稼いだお金で買った金品やブランド物が不思議なことに消滅して、壊死しかけていた少女の身体も元に戻りましたとさ。めでたし、めでたし。


ラムネ医師が行った処方は荒療治なんですよね。この少女が「怪具」で助かるかどうかすら怪しいものです。基本的にはこの医者、患者当人の意志に委ねるんですよ。

今回の場合も、処方した急須によって感情を吐き出したところで、家庭の問題が解決するわけではない。母親が欲に塗れている限り、少女の環境は変わらないんですから。病気になるのは当人だけの問題ではなく、その環境にも原因があるという点は、「怪病」も通常の病と何ら変わらないと思うんです。人間、ストレスで病気を発症することもありますし。

感情を抑え込んだせいで涙が流せないという心の病のようなものを「目から調味料が出る怪病」に置き換えたうえで、きっちりアニメらしい脚本で展開してくれる。奇抜さは感じるものの、脚本はあくまで王道なんですよね。「とんち」が効いた作品ではありますが決して説教臭いわけでもないのです。しかも、それが滑っている訳ではなく、「とんち」の中にもしっかりとしたシナリオの面白さがある

また、最後のワンシーンでもストレートに話を落としてくれますし、これが非常にアニメらしいオチで素晴らしい。

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頭のネジが取れたような設定だなと思いきや、脚本は意外にも王道な『怪病医ラムネ』。これは案外隠れた良作になるかもしれません。


ちなみに、第2話は陰茎がちくわになった浮気男のお話で、深夜アニメ帯に放送するのも頷けますね。



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