第二次世界大戦時のプロパガンダ放送~東京ローズとは何者か?~/Tokyo Rose - Tokyo Rose Radio Traitor Or Radio Patriot [Radiola]
Artist: Tokyo Rose
Title: Tokyo Rose Radio Traitor Or Radio Patriot
Label: Radiola
Genre: Non-Music, Spoken Word
Format: LP
Release: 1977
https://www.discogs.com/ja/release/4111411-Tokyo-Rose-Tokyo-Rose-Radio-Traitor-Or-Radio-Patriot
↑参考映像
アメリカ合衆国に拠点を置く、アドベンチャー、犯罪、ホラー、音楽、SF、西部劇、コメディーといったラジオ番組や放送を専門にリリースしていたレーベルRadiolaより、第二次世界大戦中に日本政府が敵軍に厭戦や郷愁を煽るためにプロパガンダとして放送していたラジオとそのアナウンサー「Tokyo Rose(東京ローズ)」のインタビューの記録盤。
現在の音楽において、フィジカル媒体としてのインタビューなどの出版物は比較的珍しい物件であるように思う。というのも、インターネットや科学技術の発展により写真や動画での記録は容易になり、YouTubeやInstagramなどをはじめとする各種SNSに投稿されるようになった。更に言えば、それ以前の環境において、リアルタイム以外での情報の取得は、メディア媒体(新聞やレコード、雑誌など)の記録に残さなければ見返すことも聞き返すことも難しかったからである。とりわけ、インターネットの環境が整備される以前において、インタビューや実況などといった「情報の記録」はレコードというフィジカル媒体で、ニュース、スポーツ、競馬、相撲、飛行機のフライト記録、カーレースなど幅広い分野でリリースされていた。そういった意味合いでレコードは、音楽を楽しむという要素以外にも情報の記録や保存としても活用されていた。
東京ローズとは何者なのか?
本盤は、日本政府が第二次世界大戦中に「ラジオ・トウキョウ放送(現:NHKワールド・ラジオ日本)」にて敵軍である連合国側(イギリス軍、アメリカ軍、オーストラリア軍)などに向けて、厭戦や郷愁などによる戦意喪失を目的としたプロパガンダ放送にして、捉えた捕虜からの家族宛の手紙の紹介を、音楽や語りを交えて放送していた番組「ゼロ・アワー」(1943年3月~1945年8月14日)の記録である。東京ローズとは、ゼロ・アワーの女性アナウンサーでアメリカ軍将校がつけた愛称であり、本名が放送されることはなかったため、正体不明の人物であった。しかし、戦後になってアメリカ合衆国の従軍記者の取材に対し、アイバ・戸栗・ダキノなる人物が「東京ローズ」の一人であると唯一認めた。
詳細は上記のWikipediaを参照。
日本が第二次世界大戦において1945年8月15日に無条件降伏するその前日まで、戦闘行為はもちろん、ラジオ放送という文化的な活動を通してでも徹底的に交戦していたという驚きの記録音源。音楽を含む音は聴覚を通して、主に空気の振動を鼓膜で感知するものではあるが、記録媒体という物質的な存在になると聴覚以外にも記録という付加価値や歴史的資料にもなるという事例。また記録としてのレコードが持つ面白さは、それが何なのかということを調べたとき、自分が知らなかった歴史の一面を垣間見ることができることにあるのだと思う。