異世界とは?/V.A - Prologue to ANOTHER WORLD [水戸芸術館」
Artist: Various Artists
Title: Prologue to ANOTHER WORLD
Label: 水戸芸術館
Genre: Sound Art, Field Recording, Experimental
Format: CD+Booklet
国内外の著名なアーティストや知識人などによる、水戸芸術館が発行したアート音楽の集大成。1992年11月に開催された「水戸アニュアル'93 アナザーワールド・異世界への旅 ~あるいはヴァーチャル・リアリティからの逃走」の物販にあたる代物。全99トラック/74分という大作である。
異世界とは何なのか?という問いかけについて、参加アーティストが音という媒体でアートとして表現している。
異世界とは何なのか?
昨今のアニメやラノベなどでは魔法と剣の世界の中世ファンタジーの世界に転生する内容などが多いが、異世界というのは実は意外にも身近に潜んでいるように思う。
「異世界」という言葉を見ると、「異なった世界」という意味であるように、こちら側とあちら側の間にある境界線の向こう側に位置する世界のことであると思う。では、実際に異世界に行く、もしくは体感する、少なくとも知覚するとはどういうことなのであろうか?異世界という言葉が存在するのは、そういった概念そのものが存在するということである。
異世界が身近に潜んでいるというのは、やはりキーワードは境界線であろう。一つの答えとしては、異世界を別の言葉で言い換えると非現実という言葉が当てはまるだろう。逆の言葉に位置する「現実」は「今」そのものであり、それは即ち自分自身の常識であり、認識出来得るものである。「非現実」と「現実」の間には明確な境界線があり、現実が自分自身の常識であるならば、非現実は知覚できないものに当たるだろう。
この境界線を越えて向こう側へ行くには、何か物事を考えていた時に火花が散るが如く、新しい発想が生まれる瞬間、これが異世界への扉を開くトリガーになるのではないかと思う。今まで考えもしなかったことが自分のものになる瞬間、これが異世界への扉の起点そのものにしてその本体であると思う。
本作は、ポエトリーリーディング、物音、パルス音、日常の風景を切り取ったフィールドレコーディング、アンビエント、効果音、それらを編纂したものなど、おおよそ一般的な音楽的な要素とは程遠い音で構成されている。
日常に潜む音や風景から、ふとした気付きで新たな価値観を得ることこそ、異世界へのプロローグである、そういったメッセージがあるよう思う。
ただ惜しむらくは、この展示には行っていないため、どのような展示だったのかは付属のブックレットから推察するしかないが、音を聞く限り、異世界へのプロローグとはこういったことなのだろうと思う。