見出し画像

録音の始原を求めて/社団法人日本オーディオ協会50周年記念 - 音でたどるオーディオの世紀

Artist: V.A. (社団法人日本オーディオ協会)
Title: 音でたどるオーディオの世紀
Label: 一般社団法人日本オーディオ協会
Genre: Spoken Words, Classic, ….
Format: CD
Release: 2001

一般社団法人日本オーディオ協会(Japan Audio Society (JAS))は、「音・音楽を中心とした感性価値を向上させるために、オーディオ等に関するソフト、ハードに加えて視聴環境の調査研究、普及啓発、人材の育成などを推進することにより、オーディオ等の文化向上と関係分野の発展を図り、経済の発展や生活文化の向上に寄与することを目的としています。」という事業目的を掲げ、1952年に発足した一般社団法人である。

本作は、創立50周年を迎えた日本オーディオ協会が記念事業として制作したCD音源である。

オーディオの世紀とタイトルにあるように、オーディオの歴史をLP時代・ステレオ時代・CD時代と分類し、当時の状況を交えつつ、機材や技術の経時的な変化を年代ごとに大系的にまとめている。

19世紀の終わりに、音を記録に残すという魔術(科学技術)が発明された。トーマス・エジソンが開発した蓄音機の登場である。1877年にトーマス・エジソンが再生可能な蓄音機である錫箔円筒型フォノグラフを開発し、その10年後にエミール・ベルリナーが円盤式グラモフォン開発し、録音された記録媒体が再生可能な環境が整った。結果として、複製が容易であったレコードを再生できるグラモフォンが1900年代に普及することになった。

蓄音機が開発されるまでは、音楽は口伝による伝承もしくは楽譜として残ることが多く、伝承によるものは完全な再現は恐らくは不可能であっただろうし、楽譜として残すには音楽的な素養が必要であったしで、作曲家本人による演奏や指揮の完全な再現が不可能であった。

では、ここで一つの疑問がある。録音物として最初に残された音源は何なのか?
この盤の最も価値のある点は、オーディオの歴史を大系的にまとめあげている点であり、その媒体の最初の録音物が何であるかについて言及し、視聴可能な音源として残している点である。

トーマス・エジソンがフォノグラフを開発したときに最初に残したのは、トーマス・エジソンによる「メリーさんの羊」の朗読であり、エミール・ベルリナーがグラモフォンを開発ししたときに最初に残したのは、エミール・ベルリナーによる「きらきら星」の朗読であった。トーマス・エジソンの朗読については、開発当初のオリジナルが現存していないらしく、フォノグラフ開発10周年記念の際にエジソンが再び朗読したものであるらしい。

考えてみれば開発者本人の肉声などが最初の録音物であることは想像しやすいが、まさか「メリーさんの羊」や「きらきら星」などといった、誰しもが知っている童謡の類であるとは思わなかった。録音の始原を追い求め、それが何かを知らずに音源を掘り漁っていたが、思わぬところで目標を達成できたことに非常に驚かされた。

その音源が何なのか、どんな背景があるのか、これらについては付属のブックレットを読むとより理解度が深まる。単純に音楽として楽しむこともできるがその時代背景などを含めた解説や記録資料的な価値がある一枚。


いいなと思ったら応援しよう!