【推しの子】感想。アイドルを取り巻く闇の物語
久々に漫画を読んだので感想を書きました。読んだのは週刊ヤングジャンプで連載中の作品【推しの子】。
まず一言、面白いです。個人の感想ですが。
原作担当は『かぐや様は告らせたい』の赤坂アカ氏。『かぐや様』はアニメから知った層だが、非常に好きな作品で、作者さんの話の展開や台詞が好みで、読む前からこれは期待できそうだなと思っていた。
作画担当の横倉メンゴ氏は名前を聞いただけでは分からず(すいません)。代表作を調べてみると『クズの本懐』…聞いたことはあるが読んだことはないな…と思ったら、見覚えのある作品の名前を発見。
大学の漫研で開催されたクリプレ交換で当たったのがこの『君は淫らな僕の女王』だった。
ついでにもう一冊同梱されていたのは『のび太の恐竜』。チョイスの差がおかしいだろ。サークルのクリプレって確かに大喜利大会にはなりがちだが。なるほど、確かに絵に見覚えはあった。
【推しの子】は赤坂アカ氏のTwitterで1話だけ掲載されているので、そちらでも読むことはできる。
この物語はフィクションである
というか この世の大抵はフィクションである
捏造して 誇張して
都合の悪い部分は綺麗に隠す
ならば
上手な嘘を吐いてほしいのが
アイドルファンというものだ
よくアイドルおたくが言う「やるならバレるな、バレるならやるな」というやつである。この時点で「これは面白くなる作品じゃん」というのを感じる。物語は産婦人科医の主人公の元に来た妊婦が【推しのアイドル】で、最初はショックを受けつつもそのサポートをしていく…という展開で進んでいく。タイトルの【推しの子】というのは文字通りで、妊娠出産した推しの秘密を守るため、一緒に育てていくハートフルコメディなのかな、と思っていると…
1話の最後で主人公は襲撃されて死に、気付くと【推しのアイドル】の子供に生まれ変わっていたという、急展開がブチこまれ終了する。【推しの子】を育てていくのではなく、自分が【推しの子】になるという。芸能人の妊娠が報じられると「今死んだら推しの子供に生まれ変われるかもしれない」というジョークが出回るが、それを漫画にしたというわけだ。
その後も急展開が来るので、読んでいて飽きない。こうだと思って読み進めていたら、それを裏切る展開が来る。テンポが良い。ジャンプ+では初回は全て無料で読めるので、最新話まで一気に読み進めてしまった。
本編のおおまかな話は【推しの子】として生まれ変わった主人公とその双子の妹が、母=【推し】のように芸能界でトップを目指していく…というもの。面白い要素のひとつは、芸能界の闇が色濃く描かれているところである。アイドルの闇、ファンの闇、そしてそれを操るような何かの闇…この物語は復讐劇でもある。次回から『恋愛リアリティーショー』をテーマにした物語が展開していくそうで、今何かと問題となったこの題材を今どう扱うのか?気になるところである。
もうひとつ作中で興味深かったのは、メディアミックス、特に実写化の展開について言及している点である。作中で少女漫画の実写ドラマに主人公が出演するシーンがあるのだが、このドラマ、演技経験のない若手イケメンモデルなどが出演しており、評判がすこぶる悪い。そもそも演者を売り出すためのドラマでしかなく、物語もキャラクターも原作のことは考えられていない。限られた話数の中に収めるため削られる部分もあるかと思えば、キャスティングの都合でオリジナルキャラクターが追加されていたり…このドラマも観ているのは原作のファンではなく、出演者のファンなのだろう。実写の際によく聞く話である。
この少女漫画の作者は他のメディア化経験のある漫画家から「過度な期待するな」と言われ、「終わる頃には皆悲しい顔をしている」と語っている。赤坂・横倉両氏共に実写化の経験を持つだけに考えさせられる。また「某アイドル事務所の子は教育がかなりしっかりしているから、礼儀正しいし現場の好感度も高くてハズレがなかったりする。たくさん使われるにはそれなりの理由がある」という台詞もあり、これはもしや…?と思ったり。他にも地下ドルの話もちらっと出るので、分かる人は思わず「わかる~~~」と頷いてしまう場面もありそうだ。
自分はアイドルが好きだ。それは表で見えるキラキラとした世界と、その背後にある影も含めて好きだ。光と影両方をエンターテイメントとして見ている、正直あまり褒められたものではないファンだという自覚はある。そういったものが好きな、華やかな世界の裏にある人間の闇が好きな人にはとても刺さる作品ではないだろうか。
ということで今度コミックス買ってきます。