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読み聞かせ『ポラーノの広場』
新幹線で東へ向かう車中、Kindleに入れた『宮沢賢治全集283作品→1冊』から、ポラーノの広場を娘に読む。
あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市…
フォント見本でおなじみのこのフレーズ。見覚えはあっても話の筋を知る人は少ないのではないか。
この作品は、役所勤めの主人公が、百姓に仕えるファゼーロ、羊飼いのミーロと一緒に、伝説の「ポラーノの広場」を探しに行く話。と、読み聞かせしたのは第2章まで、広場にたどり着く手前までだったが、そのあと一人で読み進めたら後半めちゃ面白かった。山猫博士との邂逅と切ったはった、「ポラーノの広場」という場所のかたち。
終盤の、主人公キューストの台詞。
そうだ、諸君、あたらしい時代はもう来たのだ。この野原のなかにまもなく千人の天才がいっしょに、お互に尊敬し合いながら、めいめいの仕事をやって行くだろう。
若者たちの仕事づくりと教育のありようが、強くリンクして提示される。
少し工業化されゆく東北農村部の情景は『銀河鉄道の夜』と似たところがある。丁寧なですます調、独特な言葉選びの宮沢賢治文体。風景も美しいし、会話文の続くダイアローグも平明で読みやすい。通しで読み聞かせするには、いささか長かったけど…(Kindleの合本だと長さがいまいち分からない)
宮沢賢治作品は、わかりやすい童話とそうでない物語があるけれど、ちょっと背伸びして、長い作品の美しい日本語を読んであげてもいいんじゃないか。全283作品すべて、「青空文庫」で無料で読める。
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![illy / 入谷 聡](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6468856/profile_a918aa52e36c5c804ed617900ebe2738.jpg?width=600&crop=1:1,smart)