たとえば娘にデザインの価値を教えるとして
デザイン、という言葉/概念/仕事は、たいへん広義なので説明が難しい。
そこに意欲的に切り込んでいる、秋山具義さんの『世界はデザインでできている』を読む。《ちくまプリマー新書》はヤングアダルト向けのシリーズなので、いま8歳の娘が高校生くらいになって「デザインをやりたい」と仮に思ったとき、本書をどう読むかな、という視点でこのnoteを書く。
いきなり率直に言うと、この本は10年後には、少々時代遅れになっているかもしれない。なぜかというと、令和元年時点の「いま」に立脚したエピソードが多いから。スマホ/Instagram/デジタルサイネージ/Netflix。5年後はともかく、10年後には、「世界」はだいぶ違う姿なんじゃないか。
だけどそれは、身近な世界の像を通じて、デザインを語る上での「必然」だし、だからこそ「いま」の読み手にはつよく訴える。急激に進化するデジタルメディアが日常を侵食し、その接点を舞台として、デザインが顔を出す。常に最先端にあり、常に変化する存在。人々はそれを「デザイン」でつくりあげていく。
娘が進路のことを考える頃には、おそらく世界そのものの表面が多かれ少なかれ変わっていて、さまざまに新しいデザインの工夫が世の中に満ちているだろう。
しかし、原理原則はいつの時代も変わらない。
『世界はデザインでできている』というタイトル、裏を返せばデザインが世界を作り上げているということ。デザインを理解しようとすれば、身の回りにある世界を理解し、それがなぜ、そのようにつくられたのかに考えを巡らす必要がある。
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『レントゲンは怖くない』という、小児病院のエピソードが登場する。この事例は、デザインか発揮する「力」を実感できるストーリーの一つだ。本書を通じて、デザインは人の認識に作用し、ひとの行動を変える仕事であるというふうに説明される。
誰かがカタチを創れば、それはデザイン。
ビジュアルや立体物をつくれる「職業デザイナー」でなくとも、デザイナー的な見方/考え方/とらえ方で世界と向き合う時、「だれもがデザイナー」になる。だれもがデザインできる。
だからこそ、第一線のアートディレクターである秋山さんが、どのように道を歩み、どんなことを考えながら、仕事をしてきたのかを読むことに意味がある。
未来のデザインはみなさんが作るのです。
クリエイティブを仕事にする者の一人として、娘には何かしら、デザインを学んでほしいなと思っている。それは単に表現の力を磨くためだけではなく、世界をつくっていく力を知るため。ひとと関わり、行動によってよりよい世界を目指すため。
この世界は、どんな人たちが、どんなことを考えながら、デザインしてきたのか。学ぶべきことは、限りがない。
ついでに一緒に読み返そうと思った本3冊をご紹介(値段表示が変ですけど……)。田中一光、原研哉、ドナルド・ノーマン。:
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