登場人物の名前には最大級の愛をこめて ~頭の中にすむ住人たち~
物語を作る人間にとっては当然のことかもしれないが、私は登場人物の名付けには細心の注意を払う。
かつて書いていたファンタジー小説の時なんて相当苦労したけれど(何せドイツ人名には詳しくないので)、今は得意の漢字を駆使してキャラクターに名前を与える。
その人物がどんな人間か。あらかじめ性格を決めてから名付けることもあるが、名前から性格が作られる場合も多い。もちろん、キャラクターは動かしていくうちに勝手に走り出していくので、名前は書き出し部分において重要、と言うことになるだろう。
母音かぶりを避ける
名前のこだわりは、なるべく登場人物名同士の母音がかぶらないようにすること。
一人が「あきひろ」だったら、もう一人は「い行、う行、え行、お行」からつける(「えり」など)。もちろん例外もあるが、主人公格については意識してつけている。
名字についても同様で、呼びやすさ、かぶりがないかどうか、名前との組み合わせはおかしくないか、などを考える。
*ちなみに、自分の子どもの名付けも同じような作業をしたわけだが、こちらは一生涯その子が使う名前になるので、より一層の注意を払って命名した。
長く使うものだから…
私は長編しか書けないので、書くとなると何ヶ月、あるいは1年近くの期間そのキャラクターと向き合うことになる。だから、「呼びかける名前」というのが大事になってくる。
登場人物たちは私に対して、こんな行動をしたいとか、話をしたいとか要求してくる。
それが物語の展開上必要なことであれば受け入れるし、やはり削るべきだと思えば採用しない。
そういった「すりあわせ」をするからこそ、語りかけやすく、愛着を持ちやすい名前が重要なのである。
愛着がありすぎて…
「脳が読みたくなるストーリーの書き方」の著者、リサ・クロンは、愛着を持った主人公にも厳しい態度で接し、人生のどん底に突き落とさなければ真に面白いストーリーは書けないという。
彼女の言うことはもっともだ。しかし私も多くの作家と同様、愛を持って育てたキャラクターをいたぶることが出来ない。もっと非情になって面白い展開のストーリーを書くべきなのだろうが、かわいい「我が子」のような存在を、ましてや殺すことなど出来ない。
未だかつて、主要な登場人物を殺したことはない(怪我をさせたことはあるけれど)。
また、愛着があるあまり何度も登場させたくなってしまう。
今回執筆中の「好きが言えない(1,2)」には、かつて別の話に登場したキャラクターに出てもらっている。こちらに出てもらったお陰でずいぶん深みのある人間になったのではないか、と思っている。
気に入っているのでもうちょっと目立つ形で(主要な語りをさせて)書きたいと思っているが、彼にその器があるだろうか。成長を待ちたいと思う。
頭の中の物語は面白い。
ずっと以前はただ面白いだけだったけれど、最近になってようやく「人生のテーマ」みたいなものを軸にかけるようになってきたと思う(我ながら成長!(苦笑))。
読んだ方が少しでも共感してくださったら、また生きる上で何かしらのヒントになれば幸いである。
※トップ画像は超・初期設定のため、今の内容とは異なる点もある。あくまでも「参考資料」として見て頂ければと思う。