自分の守護霊にバブみを感じた話
「あぁ、理解されないなぁ。でも、理解されたいなぁ」
物心ついたときから、常に社会と自分の接地点を考えている。自分の考えはなぜ理解されないのか。どうやったら周りとうまく溶け込めるのか、必要とされる人になれるのか。
そんな爆発しそうな承認欲求を抱えつづけて、20数年。適応するにはやっぱり傾向と対策を練るしかなくて、傾向の部分、つまるところ内省の精度が成功を左右するといっても過言ではないことに気づいた。
個人的に、内省のポイントは、自分をあらゆる角度で刺してみたりスライスしてみることだと思う。気になったら凝り性な性格が幸いにして、やたら自己分析の方法に詳しくなった。
自分でも自分をユニークだと思うのは、型を追求するあまり型破りになったことだ。世の中に溢れている自己分析のフレームワークは基本的になにかの思想に基づいた法則(つまるところ概念)でできているので、見える形はバラバラでも、その根本の思想の種類はそんなに多くなかったりする。
70億ある性格の傾向を出そうとする試みは、結局統計学の延長でしかない。再現性が必須な科学の領域の心理学では、到底サンプル数が少ないように思えた。つまり、物足りない。MECEでない。
統計学の頂点にあるもの、それが占いであると思う。心理学が3次元の営みであるならスピは5次元の営みであるらしいので、それは人間にとって極みに達していると感じても不思議ではのではないか。
しかし占いも極め続けると、概念は数種類しかないことに気づいてくる。
人生の暦てきなものは四柱推命。
ランダムに引いた抽象的な絵でストーリーを作るのがタロット。
現在までの自分の積み重ねが手相。
27種類の曜日で考えるのは宿曜。
まじでこの概念は誰が作ったんだろうという点ですごさは感じるけど、その概念を使いこなすこと自体は正直そんなに難しくない。
巷のたいていの占い師は、これらの概念を目の前にいる相談者用にアレンジして解釈することが得意な人らしいという整理に落ち着いた。たしかに、人の心を救うにはそれで十分だから、フレームワークを使いこなせることに一定の価値はあると思う。
ただ、やっていくうちになんとなく言われることの予想がついてきてしまって、「ガチもん」に会いたくなってきた。
それが、霊視に興味をもったきっかけだ。
霊視を紹介ルートなしで受けようとするなら、「スピリチュアルヒーリング」という名前で検索するのが一般的らしい。なんだか怪しいものに公認を求めるのは世の常らしく、なんと霊視(レイキともいう)界隈にも大手の養成所的があることを知った。その養成所じるし、お笑いでいうなら吉本所属みたいなものが、霊能者のなかでのブランドの一つなようだ。
先日、その一人に会ってきた。
スピリチュアルヒーリングもいろいろタイプがあるのだが、多いのがオーラか守護霊。驚いたのが、守護霊を霊媒できる占い師をシフト制で囲って複数店舗を経営している会社が存在していることだ。今の世の中って、そんなカジュアルに守護霊と話せるところまで進化してたのか。
場所は、有楽町のとある雑居ビルの一角。鑑定室はA、B、Cと分かれていて、Aにリピーターがつくような人気の先生が3名、Bにフリーランス(?)の先生が1名。同じフロアの遠く離れたCにポツンと、ちょっと無名そうな先生がひとり。
A・Bは隣接しているのもあって平日の昼間でも並んでいる人がいて、なんだか賑わっていたが、離れた場所にあるCはお客さんが来ていなさそうだったので、なんとなくCにした。証拠に「すいませーん」と入ったら、ちょっとびっくりしていた。油断してんなよ。
領収書みたいな紙に鑑定依頼を書いていたら、「ここスピリチュアルヒーリングなんですが大丈夫ですか?」と聞かれた。大丈夫ってなにが大丈夫なんだよと思って、普通の占いとはなにが違うのか尋ねた。
「一番大きな違いは、スピリチュアルヒーリングは道具が使えないんです。だからタロットとか生年月日で占うとかはできなくて….」
そんなハンド使えないみたいなルールあるんかよと一瞬笑いそうになったけど、私が欲しいのはそれだよそれ!概念なしの、おのれのレイキのみでかかってこいや!本気でなにを言われるのか予想できなくて、胸が高鳴った。
「守護霊さんに聞きたい、悩みとかありますか?」
しまった、それ用の悩みを考えてこなかった!どうしよう!
「とくにないんで… 逆に、守護霊さんは私になんて言ってます?」
「聞いてみます…. ちょっと待っててくださいね」
そこから体感5分。鑑定時間は20分しかないのに、だいぶ待たされたような気がする。あれ、これって料理がなかなか来ないバイキングみたいなタイプのぼったくり?
「えーっと… 中の人に伝えます…. 自分にもっと愛情をかけてあげてほしいって言ってます」
これは、予想外すぎた。え、守護霊ってそんなママみたいな、抽象的であったか〜いこと言ってくれるん?ていうか、私のこと中の人呼び?
「へぇ… すいません… そもそも誰に聞いているというか…. 守護霊って何人いるとかあるんですか….?」
曰く、その霊媒師がチャネリングしているのは、主に守護霊と、そのさらに高次元にいる「まばゆい光の存在」。私の人は中の人と呼んでいて、守護霊は生まれた瞬間からずっと憑いているらしい。だから親的なスタンスをとっていて、わりと心配性。私に憑いているのは、若くて歳のわりに渋いヨーロッパ風の女性らしい。
その後いろいろ聞いたが、だいたい良識的な返事が返ってきた。なんだよ、私の守護霊めっちゃまともな人やん。
「最後に、中の人に伝えたいことはあるかどうか聞いてもらってもいいですか?」
「いつも諦めが早すぎる、負けるな。だそうです」
帰路につきながら、自分の守護霊について考えてしまった。なんか、私、23になってから初めて存在に気づいて、好奇心でコンタクトとって、申し訳なかったな。
彼女は、私をずっと見ていたのか。あんな良識的な答えを返してくれる人なら、私が不器用に生きている様子見てて、めちゃくちゃもどかしかっただろうな。ひねくれているときとか、なにやってんだよって叱りたくなっただろうし、すごく傷ついてショック受けているときとか、慰めたくもなっただろうな。それを、自分の存在に気づかれてもいないのに、黙ってて見てくれてたって、守護霊、すごいな。
全部わかってくれる人、すぐ傍に、いたじゃんね。
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