140字小説【逃げ場なし】
男はここに来るまで数知れぬ悪行を重ねてきた。己の欲の為に人様の幸せを奪ってきた。「お先にどうぞ…」男は長蛇の列に並びながら順番を譲っていた。親切な振りをして逃げる好機を窺っていた。そんなことはとうの昔にお見通しの閻魔様。大木のような逞しく長い腕で男を摘むと、奈落の底へ放り投げた。
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男はここに来るまで数知れぬ悪行を重ねてきた。己の欲の為に人様の幸せを奪ってきた。「お先にどうぞ…」男は長蛇の列に並びながら順番を譲っていた。親切な振りをして逃げる好機を窺っていた。そんなことはとうの昔にお見通しの閻魔様。大木のような逞しく長い腕で男を摘むと、奈落の底へ放り投げた。