SS【日没の空】
土曜の仕事帰りに娘と待ち合わせをした。
月極駐車場で高校生の娘を拾い、東にあるショッピングモールに向けて車を走らせた。
フロントガラスから見えている東の空には、不気味なくらい巨大な灰色の雨雲が、まるで断崖のように立ちはだかっている。
晴れている時ならクッキリと見える高い山々も完全に姿を隠している。
「迫力のある雨雲だね」などと話ていたら、目の前の空に、見とれる美しさの大きな橋がかかっていることに気づいた。
北と南を結ぶ大きな虹の橋だ。
虹の橋の上に、更にもう一つの虹を発見した娘が「すごい! 二つあるやん」と歓声を上げた。
車を走らせているうちに虹の橋はいつの間にか消え、ショッピングモールに到着した。
車を降りて店の入り口近くまで来た時、また虹が見えた。
今度の虹は半分ほどで切れている。
先ほど見えた虹と同じだと言い張るぼくと、違うと言う娘。
買い物を終え駐車場に出てくると、日没だというのに不思議と明るい綺麗な藍色の空がどこまでも広がっていた。
西の空はひときわ明るくて、赤すぎない夕焼けが、今が明け方なのか日没なのか、時間の感覚さえ狂わしそうに思えた。
幻想的な空はいつでも見れるわけじゃない。
ぼくらは運良くそれに巡り会えた奇跡に幸せを感じながら帰路についた。
終
先日、仕事帰りに娘と買い物に出かけました。
その時に見た景色があまりに綺麗だったので、ショートショートにしてみました。
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