〜 舞踏会 〜
物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪
〜 舞踏会 〜
毎日練習をしていたワルツ
たまに足がこんがらがって先生の足を踏んでよろける
その度に、ジロリと見られる目が怖い
『お嬢様？落ち着いてステップを踏んで下さい。いいですか？今回は必ず行ってもらいますからね？お嬢様も、もう良い年頃です。お相手を見つけて・・・』
『はい！分かってる。行きます！行きますっ！』
思い出すと、思わず目を瞑って頭を抱える
きっと、こんな落ちこぼれは私以外にはいないだろう
ウォーキング、礼の仕方、色々な作法に言葉遣い
覚える事はたくさん
なかなか頭に入らない私は、たまに授業を抜け出して外の空気を吸いに行っていた
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ふーっと深呼吸して青い空を見上げる
天気の良い日は、お庭の花たちも喜んでいるようだ
綺麗に手入れをされた美しい庭を見渡してから、今度は伸びをする
『あと少し頑張るかっ！』
振り返って、部屋へと帰ろうと自分の部屋がある方へと体を向けるが
目の前には、仁王立ちをした先生が満面の笑みを浮かべて私を待っていた
ブルルッと体を震わせ、私は、目の前にある景色を見て我に返る
今日は、練習の成果をお披露目する事が出来る場所でもある舞踏会だ
と、言っても相手もいない私は、緊張してなかなか前へ行くことも、踊ることも出来ないのだが
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優雅に踊る婦人の横で、軽やかに踊る君を見つけた
艶のある茶色の短い髪に、切れ長の目、がっしりとしているわけでもないが、背も高く体格が良い、そしてなんと言っても目が合った時の、満面の笑み
あらゆる角度から総合した結果、その整った出で立ちの好青年は誰もが目を引く存在であった
もちろん、私も目を奪われる1人である
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『どちらの方なのかしら？』
『見たことないお顔な気がするのだけど』
『最近、街で有名な仕立て屋がいるって聞いたわよ』
『異国の方でなくって？』
口々に交わされる言葉に私も混乱する
この国の舞踏会は、まず主催者から選ばれた領主達が先に踊る
そして、一通り終わると次は、その者達に手を引かれたら一緒に踊る事が出来る、という仕組みだ
それは、男女関係なく
しかし異性の場合は、少し違う
異性からのダンスの申込みは、交際申込みと受け取られるので、舞踏会では、告白の場、プロポーズの場で使われる事が多い
運命の人と出逢えるかもしれない、婦人達はこの日に気合を入れないわけがない
各々がこれみよがしに着飾り、競い合う
私は、それが苦手な事もあり、舞踏会へ出る事をあまりしなかった結果が、ワルツの練習に結び付くという訳だ
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だが、今日はどうしてか来て良かったと思うのは
きっと君を見つけてしまったからだろう
うっかり見惚れていると、曲が終わったのか、婦人達が一斉にソワソワしだす
そして、ざわめく人並みから一本の道が出来た
少しずつ近付いてくる君は、私の目の前でしゃがみ込む
『手を取ってくれますか？お嬢様』
そう言って、私の手を取る君と、君の周りにいる婦人達から漏れる羨望の声に、私は少し戸惑う
『わ、私ですか？』
『この間、街でパンを盛大に落とした青年を覚えていますか？あの時、誰よりも早く駆け付けて、服が汚れるのも気にせず一緒に拾ってくれたあなたの事が気になっていました。まさかここでお会い出来るとは』
そう言われ、数日前の事を思い出す
確かに、少し薄汚れた青年達が運んでいるパンを盛大に落としていたが、あれは使用人だったのではないかと思った私は首をかしげる
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『はは。使用人と一緒に買い物に行っていたんです。あれは私です。私は、もっとあなたの事が知りたい、色んなあなたを教えて下さい』
ギュッと手を取り引き寄せられる私は、皆の前で抱き締められた
真っ赤な顔をして顔をあげると、満面の笑みで私を真っ直ぐ見つめ続ける
『私と踊って頂けますか？』
『は、はい』
俯き加減な私は、顔から火が出るかと思うくらい赤い顔をして、君に手を引かれていった
あの時、服を叩いて手を取り馬車へと送り届けてくれた君
慣れていると思ったのは領主様だったからなのかと、今になって気付く
『ここで出逢えるなんて、これは運命だと思う。あなたは私のそばにこれからも、いてくれますか？』
『え？ええ？！』
ぎこちなくワルツを踊る私は、今日の日が特別な物へと変わってく事になるとは、思いもよらなかった
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終
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