厳しくて優しい人間賛歌ドラマ『僕たちがやりました』
今Tverで配信されているドラマ『僕たちがやりました』があまりにも好きな作品だったので語らせてください。
原作の漫画は未読です。
キャスティングが好みだったので、内容は知らずになんとなく見始めました。
最初は男子高校生たちのチャラチャラキラキラした青春コメディものかなーと軽く見てたんですが…
とんでもなかった!!!
これは人間の弱くて愚かな部分を全て肯定する
まさに人間賛歌のドラマでした!
※※※ネタバレ全開の感想になるので、嫌な方はここから先は読まないでください※※※
このドラマに出てくる登場人物はみんな、良いところも弱くて愚かなところも両方ちゃんと描かれています。
メイン4人の個人的な印象はざっくりこんな感じ↓
増渕トビオ・・・良い奴でも悪い奴でもない、作中では一番平凡なやつ。ちゃんとありたいという正義感もあるが、最初は犯した罪と向き合えず逃げようとする弱さがある。
伊佐美翔・・・ノリのいいチャラいやつ。明るくムードメーカー的なところはあるが、メインの4人の中で一番繊細な心を持っており、真っ先に罪悪感に押しつぶされてしまう。友情に熱そうに見えて意外とドライ。でも愛する人へはかなり一図。
丸山友貴・・・裏切るし人のお金は盗むしでわかりやすくクズに描かれてはいるが、一番ノリも付き合いも良い。先輩の寂しさになんだかんだ一番寄り添っていたのは実はこの男だったりする。
小坂秀郎・・・金でしか人を繋ぎ留められないちょっと可哀想な存在。痛いはしゃぎ方や発言がことごとくスベる割とウザいタイプ。(今野さんが演じてたのでドラマでは大分面白い感じではあったけど)でも、人間の弱さや愚かさを誰よりも理解していて、誰の事も否定しない。
と、こんな感じ。
メイン以外もみんな良いキャラをしていて、本当に捨てキャラが一切いなかった。
途中でちょっとしか出てこないヤングさんも相当良いキャラしてたし。
書きたい事は色々あるんだけど、まとまらないのでとりあえずザッと書いていきます。
◎トビオと市橋
序盤かなりえげつない行為を繰り返す、完全なる敵役の市橋。
友達のマルをボコボコにされて殺意を抱くほどの恨みを持つトビオ。
絶対に相容れないであろう2人だけど、中盤以降は良い友達になっていく。
そのせいで、一旦落ち着いていたトビオの罪悪感がどんどん増幅されていった。
この辺りのトビオの心境の変化の描き方が本当に好きでした。
いけ好かない高校の人間が死んだだけでは、なんとなくボヤけていた罪悪感。
でも、相手の事を知った事で、取り返しがつかない事をしてしまったという重たいものへと変わっていく。
犯罪による罪悪感は、規模とか人数ではなく、何かの実感を伴って、初めて感じるものなのかもしれない。
◎俺らただ楽しく生きたかっただけじゃ!
最終話で小坂が言い放ったセリフ。
ただ楽しく生きていたい、きっと誰もが思っている。
でも、容姿とかお金とか環境とか、何かしらの要因でそれはほとんど叶わない。
叶わないから、だからこそ「ただ楽しく生きていたいだけ」という平凡な願いは切実なものとなる。
◎青春を共にした仲間との別れ
10年後に4人は再会を果たすが、別れた後、伊佐美が「多分もう会わない」と今宵に言う。
きっと多分そうなんだろうな。
一生忘れられない青春を共にした仲間だとしても、それが永遠に続くとは限らない。
10年も経てば、それぞれが自分の人生を歩んでいる。
その人生に、あの時青春を共にした仲間が必要かどうかはまた別の話で。
でも、それは悪い事でもなんでもない。
私も学生時代につるんでいた友達や、一生懸命部活に打ち込んだ仲間はいたけど、成人になってからほとんど連絡をとっていない。
でも、あの時過ごした時間は確かにそこにあって、今の自分を形作っている。
どんなに疎遠になったとしても、自分の中からずっと残り続けるのだ。
◎死にたい程の苦しみと共に生きていく
トビオが最後の最後まで罪悪感の苦痛を背負いながら生きている姿で終わったのがとても良かった。
見ていて相当痛々しい姿で、きっと死ぬまで「生きたい」と「死んでラクになりたい」を繰り返しながら生きていくんだろう。
犯罪者のその後のという意味では、トビオのあの生き様が一番リアルな気がする。
決して明るいラストではないけど、どんなに苦しくても生きていかなければならないという、厳しくも力強いラストに思えた。
◎まとめ
かなりシビアで残酷な事を描いている作品でありながら、コミカルさとポップさが絶妙に織り交ぜられててとっても見やすい作品。
人間の弱さや愚かさは全開に描きつつも、それが人間なんだと優しく肯定してくれる。
作者はきっと“人間”が好きなんだろうなと思わせる。
でも、綺麗事を並べるわけでもなく、厳しい現実もしっかり見せる。
優しさと厳しさのバランスが絶妙で、私はとっても好きな作品でした。
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