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【古事記】神産み 〜100倍面白くなる小ネタ6選〜 解説編
どうも、いろはです。
神生みのストーリがさらに面白くなる小ネタを6つ紹介します。
まだ、前回の神生みのストーリを見てない方はコチラもどうぞ。
1.比婆山の場所
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イザナミの亡骸を葬ったとされている比婆山。
この比婆山は古事記では、出雲国と伯伎国の間にあると記載されています。
現在だと、島根県(出雲国)と鳥取県(伯伎国)の県境ということです。
では、実際、比婆山とはどこを指しているのか、いくつか説がありますので、紹介します。
《広島県庄原市の比婆山》
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広島県庄原市には、まさに「比婆山」という山があります。
「島根県でも鳥取県でもないやん!」とツッコミがありそうですが、地図を見てもらうと島根県と鳥取県の県境付近で、ご愛嬌ということで。
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この比婆山には、千引岩と言われる岩や越原越という場所があります。
千引岩は、古事記の「黄泉の国」のストーリに登場する岩です。
詳しくは、次回の「黄泉の国」のあらすじ編で紹介しますので乞うご期待!
この千引岩は、簡単に説明すると、この世とあの世の間を塞ぐ岩です。
また、この「黄泉の国」では、イザナギが死後の世界の悪霊達を追い払うシーンがあります。
その場所と言われているのが越原越です。
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その他にも、命神社や産子の岩戸など、イザナミに関係のある場所が多くあります。
イザナミを略さず言うと、イザナミノミコトです。
名前に命神社の「みこと」があります。
産子の岩戸は、国や神様をたくさん産んだイザナミに相応しいですよね。
また、昔、広島県庄原市には美古登村と言う村がありました。
またもや、イザナミの「みこと」がありますね。
ちなみに、美古登村は、現存は市町村の吸収・合併により、美古登村という名前の村はなくなりました。
そんな訳でイザナミに関係するものが多くあることから、この比婆山にイザナミが葬られていると考えられています。
《島根県安来市の比婆山》
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島根県安来市にも「比婆山」という山があります。
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比婆山の比婆は、製鉄所という意味の「火場」を意味しているとも言われています。
島根県安来市には、古代の製鉄場の跡が発見されています。
イザナミが大火傷を負ったとき、嘔吐物などから生まれた神には、鉄の原料が取れる鉱山にかかわる神が生まれており、製鉄と関係がありそうです。
ちなみに、安来市の「安来」という地名の由来は、出雲の風土記に「スサノヲがこの地に来た時、私の心は安らかになった」と言ったことから「安来」となったと伝承されています。
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また、この比婆山は、ツチノコや比婆ゴンなどの未確認生物の目撃情報もたくさんあり、ミステリー満載な山です。
《岩坂陵墓参考地》
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昭和33年、宮内庁は比婆山の特定調査を実施しました。
その結果、島根県松江市八雲町日吉の岩坂陵墓参考地を宮内庁の直轄地となりました。
また、陵墓や陵墓参考地とは、天皇もしくはその関係者の、お墓のことを言います。
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つまり、岩坂陵墓参考地は宮内庁が天皇に関わる誰かの、お墓と認めていると言えます。
その誰かとは、イザナミなのかもしれませんね。
ちなみに、岩坂陵墓参考地周辺は、地名神納峠という地名です。
神納峠の由来は、イザナミの魂を納めた場所とのことです。
《御墓山》
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鳥取県日野郡日南町の御墓山の麓には、「八石谷」という地名があります。
ここは、イザナミの死の原因となった、火の神様 火之迦具土神(ヒノカグツチ)の血から生まれた8柱の神が生まれた場所とされています。
つまり、ヒノカグツチの殺害現場です!
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そして、山の名前に「墓」。
察しの通り、イザナギのお墓と言われています。
2.イザナミの死は、鬼界カルデラの火山噴火
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イザナミは、火の神様であるヒノカグツチを生んだ時に、お股に大火傷を負ったのが原因で死んでしまいます。
これは、出産の危険性を示しているとも考えられます。
しかし、火山の噴火を神格化にしたストーリとも考えられるのです。
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実際に、約7500年前、九州地方で鬼界カルデラの大噴火がありました。
この噴火は、九州地方に住んでいた縄文人が全滅したと言われるほど、大きな噴火だったようです。
しかも、マグマや火山灰で約200年間は住めない地域となったとも言われています。
まさに大地が死んだと言える大噴火です。
大地を生んだイザナミが、火によって死んでしまうストーリは、この鬼界カルデラの大噴火とリンクしますよね。
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ちなみに、九州って横たわる人にも見えます。
やはり、九州の南側で発生した鬼界カルデラの大噴火によって住めない地域となった出来事を、横たわった人(妊婦)から火が生まれて大地(イザナミ)が死んだと言う、神話にしたと思ってしまいます。
3.十拳剣と火山の噴火
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イザナギが、イザナミの死の原因となったヒノカグツチの斬った時に使った十拳剣。
その十拳剣から滴り落ちるヒノカグツチの血から生まれた神々の名前が火山の噴火を連想できます。
【十拳剣から生まれた神々】
石拆神
根拆神
石筒之男神
甕速日神
樋速日神
建御雷之男神
闇淤加美神
闇御津羽神
マグマが岩を割き(石拆神)、
根を割いて(根拆神)、
岩の隙間(筒)から溢れて(石筒之男神)、
火が物凄い勢いで噴き出し(甕速日神・樋速日神)、
雷が鳴り(建御雷之男神)、
煙で黙々と真っ暗になった。(闇淤加美神・闇御津羽神)
もしかしたら、鬼界カルデラの大噴火を表しているのかもしれませんね。
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ちなみに、ヒノカグツチの身体から生まれた神々の名前には全て「山」という漢字が使われています。
【ヒノカグツチの身体から生まれた神々】
正鹿山津見神
淤縢山津見神
奥山津見神
闇山津見神
志芸山津見神
羽山津見神
原山津見神
戸山津見神
「火」の神様と「山」。
やはり、山を連想してしまいますよね。
4.十拳剣と鉄製造
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先ほど、その十拳剣から滴り落ちる血から生まれた神々の名前が火山の噴火を連想できますと説明しました。
火山の噴火だけでなく、鉄を製造する工程も連想することが出来ます。
マグマが岩を割き(石拆神)、
根を割いて(根拆神)、
岩を取り出して(石筒之男神)、
火で溶かし(甕速日神・樋速日神)、
叩いて火花(雷)が出て(建御雷之男神)、
水で冷やす。(闇淤加美神・闇御津羽神)
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また、先ほど、ヒノカグツチの身体から生まれた神々の名前には全て「山」という漢字が使われているとも説明しましたが、この「山」は鉄の原料を取り出す鉱山を示しているとも考えられますよね。
5.比婆山の「比婆」
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比婆山はイザナミの遺体を埋葬した山です。
この比婆山の「比婆」には、製鉄場の「火場」という意味もあります。
比婆山の場所は特定されてはいないものの、鳥取県と島根県の県境付近では、古代の製鉄場の跡が複数発見されています。
もう少し補足すると、先ほどの説明とおり、十拳剣から滴り落ちる血から生まれた神々の名前が製鉄を連想できることから、イザナミの死には「鉄」が関連してそうです。
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他にも、比婆山の「比婆」には、「火葬」と言う意味もあり、イザナミは火葬されたとも考えられます。
昔の日本は、「土葬」が主流でしたが、710年には日本でも火葬の文化はありました。
ただし、当時、火葬ができるのは特権階級者のみでした。
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イザナミは、当時の特権階級者と同じく火葬されたことを比婆山の名称で表しているのかもしれません。
しかも、特権階級者のみにしか行われないことから、イザナミは特別な神様であることを古事記で示したかったのかもしれませんね。
6.泣沢女神
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イザナギが、愛しの妻イザナミの死に悲しみ、泣きに泣いて生まれたのが、泣沢女神です。
泣沢女神は、「泣き女」を神格化したものと考えらています。
「泣き女」とは、葬儀の時に、死者のために泣き叫ぶ役割を請け負った女性のことを言い、日本でも昭和初期までは、この文化が残っていました。
葬儀で泣き叫ぶと、死者の魂が慰められるとの言い伝えがあることから、この「泣き女」という風習があったようです。
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また、古代「泣き叫ぶ」と、この世とあの世を結ぶと信じられており、この後のイザナギが「黄泉の国」という、あの世に行くストーリの布石とも解釈できます。
ちなみに、泣沢女神は、奈良県橿原市木之本町にある畝傍都多本神社に祭られています。
ご神体が「井戸」という、とても珍しい神社です。
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そーいえば、奈良県橿原市木之本町は、中央構造線の近くに位置します。
もしかしたら、鬼界カルデラの大噴火の時、この付近で急に水が湧き出ることが起こって、それを神格化にしたのが、泣沢女神だとするとロマンを感じますよね。
まとめ
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神生みは、たくさんの神々が生まれるストーリが続きますが、最後にイザナミが死が待ってます。
結末は、とても悲しいですが、イザナミの死と引き換えに「火」や「鉄」の恩恵を受けられているとも考えられます。
世界の神話でも、「火」の恩恵を受けるために大きな代償を払っていることが多いです。
次回は、「黄泉の国」のストーリのあらすじを紹介します。
イザナギがイザナミを生き返させようと奮闘するストーリです。
手に汗握る、ハラハラ・ドキドキのスリル満点なストーリですので、お楽しみに!
それでは、また。