ワクワクの総量が増え続ける道を行く/渋谷さんのLife story
「これまでの自分のことを誰かに話そうってあまり思わなかったけれど、自分がどんな人生を歩んできたか振り返りたくなったし、この経験が誰かの励みになれたら嬉しいなと思ったんですよね。」
2023年12月。33歳の誕生日を迎えた渋谷さんは、この人生の節目に自分のこれまでの軌跡について話てくださいました。
いつも笑顔で、人の夢を全力で応援する渋谷さん。そこには、失敗も苦労も笑い話に変えるくらい、真っすぐに志している想いがありました。
自信のない自分を変えたかった
━━33歳のお誕生日、おめでとうございます!これまでを振り返って、今の渋谷さんが一番影響を受けたなと思う出来事ってなんでしたか?
渋谷さん:ありがとうございます!そうですね……経験に優劣はつけられないけれど、21歳の頃かな。大それた目的もなく発信していたTwitter(現:X)を通して、たまたま繋がった摂食障害の方が仕事先まで会いに来てくれたことがあって。
今思うと、その人と出会ったあの日から「こんなふうに悩む人を減らしたい」「自分が何か役に立てないか」と考え始めたんですよね。今の自分がいるのも、それが始まりだったと思います。
━━渋谷さんは、摂食障害だった経験があるとのことですが……?
渋谷さん:実は僕、高校を1年で中退していて。辞めてから昼夜逆転の生活をしていたんですけど、直前まで野球部だったこともあって食事量はしっかり食べてたんです。そしたらまぁ、単純に考えて太りますよね(苦笑)
その体型で買い物に出掛けたら、ばったり中学の同級生と会って「太って誰だか分かんなかったよ!」って言われたんです。学校も行ってない、仕事もない、さらに太ってる。「やばい、これは何もないぞ」って自信を取り戻そうとまずはダイエットから始めて。
そしたら今度は体重が増えることが怖くなっちゃって、気付いたら摂食障害になってたんです。その後、食を気にしすぎるあまり、逆に過食嘔吐になったり。20歳でバイトを始めるまでは人と繋がることも怖かったし、繋がろうとも思わずにひきこもり生活を送っていましたね。
「登る山を決めたほうがいい」無気力だった自分の感情が動いた孫さんの言葉
━━今の社交的な渋谷さんからは想像できない過去。ひとりだった世界から今の世界へ足を踏み出せた、最初の一歩のきっかけは?
渋谷さん:20歳になった頃、孫正義さんとてんつくまんの動画を見て久しぶりに感情が動いたんです。孫さんの生い立ちや、てんつくまんの人生が突き動かされた体験を聞いて、それまで目標も何もなく、ただ生きているだけ状態だった自分が泣けるくらい感動したんですよね。この人たちの生き方が素直にかっこいいなって、自分もそうなりたいなって思ったんです。
渋谷さん:僕はひきこもりになったけど、生活には何不自由もなくって。ただひとつなかったものが人との繋がりだった。誰とも繋がっていない感覚から「今の生活をなくしていいから、誰かと繋がりたい」とすごく思ったんです。それから、初めて接客業のアルバイトを始めましたね。
━━えっ!ひきこもりからいきなり接客業なんて、怖かったでしょう……?
渋谷さん:いやー、めちゃくちゃ怖かったですね(笑)当時は電車を乗ることすら怖かったから、本当に近くのお菓子屋さんで働いて。お金を渡す手が震えるんですよ。バックヤードに戻る度に「自分の見た目、大丈夫かな」って鏡に映る姿を確認したりとか、自分が常に評価されているんじゃないかとか、裁かれるんじゃないかとか、全てが怖かったです。
でも、そんな状態の自分でも雇ってくれることが嬉しかったし、そんな店長や職場の人の役に立ちたいと思って。初めて自分と同じくらい大事にしたいと思える人、この人のために頑張りたいと思わせてくれる人と出逢えたことが本当に大きくって。
そこで摂食障害の人と会った時、自分がこの職場で感じたこの喜び感覚・体験を、過去の自分みたいな人たちと共有できたら人生が変わるくらい楽しいだろうなって。そんな場所をつくりたいなって、自分の登る山が見えたんです。
━━渋谷さんの「誰かのために」って想いが今も強いのは、その頃の体験が深く関係しているんですね。
渋谷さん:今思えば当時の自分がすごく若かったなぁと思うし、人との距離感が分からなかったから思い出すだけで恥ずかしいこともありますけどね(笑)それでもよく辞めなかったなぁって思います。母親のお陰もあると思うんですけど、続けられて今があるなって。
想いが強いからこその葛藤
渋谷さん:23歳の頃、摂食障害の人の雇用が作れたらいいなと考えて、初めて自分の支援グループの立ち上げのために動き始めたんです。その後8年間は、集まれるオフラインの場づくりやYouTubeの配信、講演会を企画したり、実際に販売できる機会を作って野菜やシフォンケーキを売ったりしていました。
でも、全部が初めてだったから。それこそ一番最初は、石川県で活動されているグループに学びに足を運んだ時期もありましたね。
━━行動力がすごい!その8年の間には、どんな変化があったんですか?
渋谷さん:変化と言うと、前よりも長いスパンで物事を考えられるようになったかなぁって思います。それこそ最初は、参加者の多い少ないとか、イベント規模の大小だとか、他のグループと比較して勝ち負けで見ていた頃もあって。
渋谷さん:周りからも「行き急いでるね」「早すぎる。誰もついてこないよ」って言われるくらい焦ってたんですよ。早く結果を、成果を出さなきゃって。今思えば、せっかく共感して集まってくれた仲間の想いをもっと尊重したらよかったと思うんですけど、気持ちが先走ってたんだと思います。自分た立ち上げたグループなのに、孤独感を感じることもありました……。
━━想いは一緒なはずなのに、周りと温度差があるように感じたんですね。
渋谷さん:僕、可能性があることは全部やりたいって思っちゃうんですよ。例えば、その障害について知見のある専門家をお招きしてYouTubeで配信したいと企画した時。
僕は、講演会に足を運ばなくてもオンラインで見ることができたら、届けられるきっかけが増えるんじゃないと思ったんですけど、初めての試みに対する反対意見とかあったりして。
━━焦っている時って、もしかすると「早く認められたい。知ってもらわないと!」とか、人の目を必要以上に気にしてしまっていたのかもしれないなと思いましたが……。
渋谷さん:その通りだと思います。誰かに認められたいと思っていたし、認められないと自分には価値がないと思っていたんだと思います。
でも、そんな経験をしたからこそ、物事って速く進められることばかりじゃないって実感したし「今」必要なことに集中しようって。可能性があることは全部やるって姿勢は変わらないですけどね。
━━渋谷さんって、怖いモノ知らずというか「やってみよう!」精神がものすごく強いですよね?
渋谷さん:怖いことありますよ~。ジェットコースターとか(笑)
━━(笑)
渋谷さん:本当ですけど、冗談です(笑)でも、チャレンジ精神と言うか、やりたいことに対するストッパーがないのは24歳の時に”大きな失敗”をしたからかもしれません。
準備不足が招いた人生最大の大失敗
渋谷さん:当時、グループ作りを学ばせて頂いていた方に「社会起業家のコンペに出たら?」と言われて受けることにしたんですよ。
三次試験までなんとか進んで、次が自分の事業をプレゼンするという課題で。それに対して何も思い浮かばなくなっちゃったんです。そんな自分に「その程度の気持ちだったの?」って急に自信がなくなって。せっかく準備していたもの全部放りだして、南三陸の摂食障害の方のもとへ向かったんです。その年は、東日本大震災があった年でした。
━━登壇を諦めちゃったんですか?
渋谷さん:それが、その南三陸の方に「いや、行ってきた方がいいですよ」って言われちゃって。被災地を目にした時、やんなきゃ後悔するのかなって逆に応援されちゃって、急遽前日に新幹線に飛び乗って大阪の会場へ向かったんです。
でも、足の震えが止まらなくなるくらい緊張しちゃって。
━━いや、しますよね!だって、直前まで辞退しようと思っていたんでしょう?
渋谷さん:そうなんです。しかも、順番決めのくじ引きで最後のトリを引き当てちゃって(苦笑)一緒に登壇されたメンバーのなかには、今すごく有名になった方もみえるくらい、みんな当たり前に資料を作り込んできているし、熱量も高くて制限時間いっぱいにプレゼンしていて。
そんなすごい人のなか、テレビ収録並の大きなカメラがある会場の大舞台で、僕はペラ紙1枚だけで登壇。もちろん時間はめちゃくちゃ余って終わったんですよね。登壇した方から「やる気あるんですか」って厳しいメッセージもったりもして。
……でも、その経験があるから、あの時以上に緊張することってないよなって思うんです。準備さえしていれば、あの身一つで行く怖さってないし、絶対あの時よりは上手くできるわけだから。
━━その時の経験が、今の渋谷さんの糧になっているんですね。
自分で熱量を注げるのは、やっぱりこれだった
━━今でこそ良い経験だと思えることを沢山積み重ねてきたなかでも、今も心の支えになっているような忘れられない出来事もあるのでは?
渋谷さん:もちろん!そう聞かれて思い出すのは、講演会に初めて立った時に聞いてくれた人達の姿ですね。自分の活動や経験が、ちゃんと人の役に立ってるって思えた瞬間に、やり続ける意味があったなって、よかったなって思えたかな。
それから、グループに初めて人が来てくれた時。実は、立ち上げてから1年半は誰も来ない時間を過ごしていたから、コツコツ続けていたブログ経由で出会えた時は嬉しかったです。4年くらい関わってくれた人も、グループの活動以外にも別のコミュニティにも関われるようになったり、人の繋がりや活動の幅が広がるきっかけをちゃんとつくれていたことも嬉しい出来事でしたね。
━━人との繋がりが途絶えていた20歳の頃から始まって、今、当時の自分が願っていたものが全部叶ってる!そこに至るまで行動し続けてきたのって、やっぱりすごいです。
渋谷さん:確かに……。やることが上手くいかない時とか、自分の器の小ささで嫌になることももちろんあったし、20代後半の時なんて、無償活動だったから「お金にもならないことをいつまでやってるの?」って恋人に心配もされたこともありましたし。
「他にも選択肢はあるはずなのに、なんで自分はこの道を選んでしまうんだろう」って思うこともあったけれど、自分が変われたのはグループがあってこそだったなって思うし、こんな中途半端では終われなくなっちゃったのはあるかもしれないですね。
━━傍から見ると中途半端なことは何ひとつないけれど、渋谷さんにとってまだまだ道半ばという感覚なんですね。どんな瞬間に「達成した!」と思えるんでしょうね?
渋谷さん:う~ん……。今直近で目指している過程は、就労支援施設を作ること。摂食障害の人達のことを考えると、今の仕組みだけでは足らないって僕は思っているし、そのためには職員や携わる人が自分たちの経験、知識を活かせる環境も必要で。それを理想をつぶやくだけで終わらせたくないんですよね。
ただ、その場所づくりだけが目的というよりは、作った障がい支援施設と地域の人とが、もっと日常で当たり前に声を掛け合ったり、お互いの困りごとをサポートし合える地域をつくりたいなって思うんです。障がいの有無で特別視するのも、されるのも違うから、もっと人として繋がれる関係性を作れる場を作りたいなって。
そう考えると、次から次に課題は出てくるので、やっぱり永遠と終わらないですね(笑)
━━今よりも良い社会を理想としているからこそ、終わらない。でも、それを想像しながら挑戦し続ける渋谷さんはワクワクしているように見えますよ?
渋谷さん:ワクワク、してますね!それに、仲間がいればもっと良くなるってことは常に思っちゃうんですよ(笑)まだまだ大変なこともあるだろうし、つらいこともあると思うけれど、それれさえも笑って一緒に取り組める仲間と、これからも出逢っていきたいなと思います。
━━総じて、この32年間はどんな時間でしたか?
渋谷さん:いや~、なんですかね?でも、ワクワクし続けてきたなぁ時間だったなぁと思うし、世界が広がり続けたなって感じてます。まだまだ勉強したいことは沢山あるし、それで来年学校にも通いますし、福祉事業所の見学だったり、あと遠出だったりやりたいことも沢山。
何歳になっても、見たことない景色を見に行ったり、その道中も面白がっていたいなって。自分がそんな生き方をすることで、出会った人と「あなたの夢、いいね!」って応援し合える人生でいたいなって思います。
インタビューを終えて
初めて渋谷さんと出逢ったのは、2023年の5月。すごく無邪気に目を輝かせながら人の話を聞き、応援してくれる人だなぁと思ったことを今でもよく覚えています。
そんな渋谷さんが繰り返し口にしていたのは「そこに大それた目的なんてものはなくって」という言葉。可能性が見えるから、その見えたものをやる前から諦めたくない。自分の人生に対しても、誰かの役に立ちたいと行動し続けた時にも、そのシンプルだけど強い想いが、今の渋谷さんを築いてきたんだろうなと感じるし、その渋谷さんらしさに、私も何度も勇気づけられています。
どんな経験も、自分の人生の糧に変えて。そこにワクワクが加わることで、さらに自分のいる世界を面白いものにしていくことができる渋谷さんだからこそ、周りに人が集まってくるんだろうなと。まだまだ続く、その夢の道中にどんな景色が見えるのか、また一緒に見られる時が楽しみです!
今ここにいるひとりひとりの
今ここにある想いをつなぐ
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