千葉県柏市で地域共生社会の実現を考える
柏市社会福祉協議会と柏市福祉政策課の職員のみなさんへ「重層的支援体制整備事業における今後の地域づくり」をテーマに全3回の研修を担当しました。
生活における困りごとはこれまで地域の人たちで支え合えてきたものの、高齢化や人口減少などの社会的な変化によって支え合う基盤が弱まっているという状況が全国的に起きています。
人々の生活を支えるための社会保障制度も、高齢者・障害者・子どもなどの対象や機能ごとに整備されているため、課題が絡み合った複雑化なケースだと支援からこぼれ落ちてしまうことがあるのも現状です。
柏市では、制度や分野ごとの縦割りや支える人・支えられる人という関係を超えて、誰もが地域でその人らしい生活を送ることができる社会「地域共生社会」の実現に向けて力を入れています。
▼参考:地域共生社会のポータルサイト(厚生労働省)
地域で課題を抱えている人に対して、地域の人たち同士で課題解決をしていく仕組みを構築したい。市民に寄り添いながら、本質的な課題を解決するための支援体制を構築したい、と熱心に取り組もうとする職員さんが柏市にはたくさんいらっしゃいます。
地域の人と人がつながり、新たな挑戦が起こるには
研修1回目はIRODORIの谷津が担当しました。地域で新たな取り組みを行ことは、いくつものハードルが立ちはだかるものです。
IRODORIで実践してきた活動を通じて、地域で新たな挑戦が起きる法則や、小さく生んで地域に根ざした活動に育てるためのアクションを事例とともにご紹介しました。
コミュニティデザインラボ所長・松崎さんから三股町での実践を伺う
2回目は重層的支援体制整備事業の先進的な取り組みをされている、宮崎県三股町の社会福祉協議会職員であり、コミュニティデザインラボ所長の松崎さんをお招きしました。
「2025年までに200の活動・2025人の地域活動者を生み出し地域住民の活動で、地域課題を解決します」というミッションを掲げて活動されています。その背景にある考え方をご教示いただきました。
柏市の皆さんのお話を聞いていると「保健士」という福祉の専門職の立場で地域の人たちに関わりを持とうとすると、かえって支援を求めている人とつながれないという悩みをみなさんお持ちでした。
福祉が必要な人に、自然なかたちで出会い、必要な時に頼ってもらえる存在になることが理想です。
松崎さんは、人が困っている困っていないに限らず、率直に「面白い」「楽しい」場づくりをすることで、住民同士が自然につながる機会をつくられてきました。これまでの活動を伺うと、どれもユーモアに溢れていたりお洒落だったり、ワクワクするものばかり。
楽しい場を通じて出会った住民同士で、課題解決に取り組んだり。支援が必要な人も、できることや得意なことで地域で活躍する機会をつくられたり。地域共生社会の実現に向けた本質的な取り組みを伺わせていただきました。
会場の皆さんは「まさにそれが柏市に必要なんだ!」という共感の嵐でした。
松崎さんの講座の翌日は、私たちの拠点「ワガママ町家」にお越しいただきました。柏市の皆さんと松崎さんで作戦会議!
地域で暮らす人たちのワガママを叶えるまちをつくる、ワガママ会議
3回目は再びIRODORIが担当し、職員さん32人にワガママ会議の体験会を実施しました。
LEGO®SERIOUS PLAY®メソッドを使って、自分の生活におけるワガママを可視化します。
さらに「自分自身のワガママを叶えられるまち」とは、どんなまちなのでしょうか。LEGOを使ってイメージを膨らませながら、ワガママが叶った未来はどんな未来になるのかを考え、ビジョンをつくっていきました。
これらのワークを通じて、たったひとりの個人的なワガママでも、抽象度を上げるとまち全体のことになるという体感をしていきます。
社会福祉協議会は、様々な特徴を持つ市民と接する機会があります。
コミュニティデザインラボの松崎さんは、ひとりの人として「面白い」と思える場づくりを通じて住民たち同士がつながり、支え合う企画から仕組みづくりにつなげていきました。
そういった場づくりって難しい……と思いがちですが、職員さんたちが自分の中から企画を生む必要はありません。特徴がある人の得意なことを応援することから、オリジナルな企画になっていきます。
IRODORIはたったひとりのワガママを叶える挑戦を通じて、多様な市民の出番をつくり、支え合える仕組みづくりについてお話ししてきました。柏市での地域共生社会を実現するための重層的支援体制重層的支援体制に、引き続き伴走させていただきたいと思います。