誰かのために20年も生活を整えてくれるってものすごい愛情|漫画『きのう何食べた?』第23巻
これまでの感想はこちら。
シロさん、還暦。
目下の憂鬱の種は、赤いちゃんちゃんこ。
ケンジはここ最近、家事も手につかないほど何か忙しそうに誰かと連絡を取り合っていて。
ダイエットもしている。
シロさんの誕生日には、こじゃれたレストランを予約したとは聞いていたが…
50歳の時も仰々しいくらいの赤いバラを贈られた。
様子からしてジルベールや富永さんたち当たりも絡んでいる。
還暦の今回は、50歳の時よりも更に暴力的な盛大さで祝われるに違いない…
そして。
誕生日、当日。
赤いちゃんちゃんこを着せられイジられることは運命だとして諦めることにして。
シロさんは指定されたレストランへとやってきた。
そう意を決して、レストランの扉を開けたシロさん。
出迎えたケンジは、早速、シロさんに着替えて欲しいという。
と、思ったが、渡されたのはスーツ。
言われた服に着替え、どのタイミングで赤いちゃんちゃんこが出てくるのかばかりを気にしていたシロさんの手をケンジが引きながら会場の扉を開けると
――そこに、待っていたのは。
それでも日常は続いていて、世界は少しずつ変わっている
ってのを、実感した巻でした。
いやー、そりゃあもう、皆さんおっしゃる通り、私だって扉を開けた先の話に感無量なワケですよ。
連載開始当初には、仮に今の自分が過去の自分に「こうなるんだよ」ってネタバレしたとしても「何がどうやって?!」ってなったと思うんだよね。
全然、伝わらなかったと思う。
でも、今、それを自然に受け入れられるじゃない。
「突飛なエピソードぶっ込んできたな」って思わないじゃない。
これだけ長い連載したからこそ、見れる世界というか。
中でも個人的にショックだったのは、富永さんちの悟朗くんよ!!(気づいてなかった!ウチの息子と同じ歳だわ(笑))
あの、佳代子さんが「ずっと自分たちには子どもが出来なくて、まさかおばあちゃんになれるなんて思ってなかった」って言ってた悟朗くんですよ!
その悟朗くんが言ってた
には衝撃でしたよ!
私の思春期の頃がちょうど商業BLの黎明期だったんだけど(青磁ビブロスや桜桃書房でBL漫画雑誌が隔月で発売され始めた)、その時はBLは親に隠れて読むもので、もちろん周りにも黙っているものだった。
ストーリーも、基本的に自分の性的指向をオープンにするなんてほぼなかったし、その先に周囲に伝える、なんて発想もなかった。
世界はゆっくり変わっていくから、気がつかなかった。
知らない間に、変わってたんだな。