まごうことなき神回……ッッ|漫画『神作家・紫式部のありえない日々』第5巻
これまでの感想はこちら。
すれ違いを経て結ばれた彰子と主上。
と、熱烈な一夜を過ごして
彰子の頭の中はピンク色。
その事実を知った紫式部が三日三晩、押しカプの進展にキュンキュンした結果。
筆がノリにノッて完成したのが
「須磨」、脱稿。
紫式部が、出来上がった「須磨」を1番に渡したのは小少将。
「今回の話 小少将さん好きかも〜〜」と言われ、恐れ多いとしながらも、「須磨」を読んだ小少将は叫びだしたい気持ちを抑え、心の中で叫んだ。
神回、「須磨」誕生である。
物書きの“業”を噛み締める紫式部
前半は、ポワポワの彰子さまと、それでテンション上がった紫式部が超速で書き終えた「須磨」の話なんだけど。
印象的だったのは、後半、権中納言俊賢とのエピソード。
俊賢に、「須磨」で官位を剥奪され左遷される光源氏は伊周をモデルにし、陥れる為に書いたのではないか、と問われた紫式部。
それを聞いた紫式部は、道長の臣下であるはずの俊賢が伊周と通じているのではないか、と密かに戦慄しながらも、俊賢に、「左遷された源氏で想像したのはご自身の父上では?」と聞き返す。
昔のことを思い出した俊賢は、左遷されて父についていった辛い日々を語りだし、中でも身分に合わない、中流貴族が通う大学寮での生活が1番辛かった、と語った。
学ぶことは苦ではなかったが、下位の者が着る浅葱の袍を着るのは屈辱的だった。
その言葉を聞いた紫式部は「物語に取り入れたい」「早く書きたい」ということだけが身体中を駆け巡り、俊賢との話もそこそこに机に向かって憑かれたように書き始めた。
もう、この他人の不幸さえも物語の肥しにしてしまう。
自分の不幸も他人の不幸も、貪るように食べ尽くして、それでも尚欲するその所業は、鬼か悪魔のようで。
全てを物語に捧げてしまう紫式部が、鬼気迫っていました。
いつもはコミカルで、それが面白いんですけど。
今回ばかりは、そんな物書きの“業”に飲み込まれていく紫式部が良かったです。
いやー、今回は震えたわ。