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実務編 | IR業務ツリー | ⑥コーポレート編

当コンテンツでは、新任のIR担当者がIRの全体像を理解するためのガイドとなることを目指します。

前回のコンテンツでは、IR担当者が押さえておきたい実務編のうち投資家対応についてお話ししました。
※IR業務ツリーの全体像はこちらをご参照ください。

今回は、IR業務ツリーのうちコーポレート系の業務について概説します。


1. はじめに | コーポレート系業務とは

これまで、ディスクロージャー系およびエンゲージメント系の業務について概説してきました。これらは、一般的にIR部門が主幹となり推進する業務です。一方で、今回取り上げる「コーポレート系」の業務は、IRの枠を超え、さらに大きなテーマに関わるものです。これは、IR以外の部門が主導、またはIRと連携して推進されることが多い業務領域です。

なお、「コーポレート系」という分類は当コンテンツ内での創作であり、一般的な分類方法ではない点をご了承ください。

コーポレート系の業務は、商事法務、ESG、ファイナンスなどの専門知識や経営戦略の深い理解を基盤に、IRの立場から多様なステークホルダーとのコミュニケーションを推進する役割を果たします。具体的には、SR(Shareholder Relations)やサステナビリティに関する対応、またM&Aや資本政策などの財務戦略やコーポレートアクションについて、IRの視点からマネジメントをサポートすることが含まれます。さらに、これらのアクションに対する資本市場からの反応を適切にフィードバックし、経営に活かすことも重要な機能の一つです。

2. 株式・SR

株式に関する業務は非常に広範で、専門的な知識が求められる分野です。このテーマだけで専任の部署を構えることが一般的で、特に会社法に精通することが重要です。主な業務には、株主リレーション(SR)、株主総会の運営、議決権行使の促進、法定書類の作成、公告、そして持株会やストックオプションなどの株式事務が含まれます。

IR業務を効果的に進める上で、会社法の基本的な知識は欠かせません。例えば、株主総会の決議要件株主の権利機関設計など、理解しておくべきポイントがいくつかあります。ただし、会社法に関する専門書は難解な内容が多く、IRの日常業務でそこまで高度な知識が必要になることは少ないかもしれません。そのため、深く専門的な知識に触れるよりも、まずは基礎をしっかり押さえることが大切です。

この点において、簡易な教材や東証が開催するセミナーを活用するのは有効です。また、SRコンサルティング(信託銀行の証券代行部門など)のサポートを受けることで、実践的なアドバイスを得ながら業務を進めることができます。こうした手段を活用することで、必要な知識を効果的に習得し、IR担当者としての業務をより高い視点で推進することができるでしょう。

3. サステナビリティ

サステナビリティは現在非常に重要視されている分野で、専門性が高く、ある意味トレンディーでもあります。IR担当者の中にはこの分野を苦手と感じる方も多いのではないでしょうか。

企業によってサステナビリティ関連業務の分掌が異なることや、まだ専門人材が少ないこともあり、この分野で苦労している企業が多いのが現状です。特に、IR担当者が関与することが多い統合報告書の制作は、外部パートナーや社内の各部門との連携が不可欠で、非常に手間がかかる業務です。

統合報告書の制作業務の負担を少しでも軽減するためには、外部パートナーと主管部門の協力体制を整えることが効果的です。例えば、全体で議論すべき総論と、各部門で自己完結できる各論に分け、各論部分については主管部門が外部パートナーと直接やり取りし自己完結することで、全体のとりまとめであるIRチームの負担を軽減できます。もちろん、各論が全体テーマとの整合性を欠かないよう、必要に応じて全体会議で調整するなど、フレキシブルな対応も大切です。

4. 戦略系

IRに期待される戦略的業務の一つに、経営へのフィードバックが挙げられます。さらに、投資家がとらえる会社の公正価値の評価や、資本政策、エクイティファイナンスなどの財務戦略に対しても、マネジメントはIR部門の見解を求めることがあります。これらの業務は明確な手順やフォーミュラが存在するものではなく、ジョブディスクリプションに明示されていないことも多いですが、経営に近いポジションにあるIR部門ならではの役割といえます。

若い企業やIPOを実施した企業では、IR担当者がこれらの業務をすでに経験していることも多く、CFOが自らIRを推進するケースも少なくありません。企業が成長するにつれ、IRの業務が拡大し、こうした戦略的業務は部長やリーダークラスが担う責務となりますが、実務担当者にとっても、これらに関わることは企業の財務や経営戦略に貢献する大きな機会となります。IRでの専門性を高めたい方、または次のキャリアステップを視野に入れている方も、この領域でのスキルを意識的に強化することが大切です。

5. まとめ

IR担当者は、ディスクロージャーやエンゲージメントの領域に加え、SRやサステナビリティ、財務戦略にも携わる機会があります。IRでの専門性を高めたい方、または次のキャリアステップを視野に入れている方も、この領域でのスキルを意識的に強化することが大切です。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回は、これまでの総括としてIRスキルマップについてさらに掘り下げていきます。


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