サガシリーズの元ネタ紹介!番外編 高速ナブラ

お久しぶりです。やるやる詐欺でぜんぜん更新してなくてすみません…
記事書こうと思うと元ネタの本読み直さないといけなくて、結構気合い入れないときついんですよね…

今回は番外編として本を読み直したりしなくても書けそうなネタと言うことで、サガシリーズを代表する斧技、高速ナブラを取り上げようと思います。

高速ナブラはロマサガ2で初めて登場した斧技で、敵を逆三角形に切り裂くというものです。

この名前は数学記号の∇(ナブラ)から来てるんだろうなっていうのは何となく推測してたんですが、先日開発者の小泉さんがこのようなツイートをされていました。

というわけで、めでたく∇から来ているということが正式に確定しました。
でもこのツイート、∇の意味が分からない人にはあまりピンとこないかあということで、もうちょっと解説してみようかなと思います。

あまり物理や数学に詳しくなくても読めるように書くので、正確じゃない表現とか出てくると思いますが、その辺はご容赦ください。

ダイバージェンス?発散?div?

∇は数学のベクトル解析っていう分野で使われる記号です…って、もうベクトルって言葉だけで拒否感が出る人もいるかもしれませんね。

ベクトルは向きと強さのあるもの、もうちょっと言い換えると「矢印」だと思ってください。よく天気予報で、地図上に風向きと風の強さを矢印で表しますが、あんな感じのイメージです。風は矢印で表せるのでベクトルだということです。数式でベクトルを書くときは太字で書く習慣があります。

この「ベクトル」を分析するときの考え方で、発散(ダイバージェンス)というのがあります。たとえば、風は高気圧から低気圧に向かって流れるので、高気圧のところでは風が周りに向かって流れ出ていくし、低気圧のところでは周りから風が流れ込んできます。この風が流れ出る/流れ込むの量を図るのが発散、ダイバージェンスです。

つまり、「div 」という数式は、ある場所から風が出ていく量を表しています(風が流れ込んでくるときはマイナスになります)。
「発散している」というのをイメージとして描くと、こんな感じです(図の真ん中から周りに風が流れ出ていく)。

発散のイメージ

なお、「div 」という式は別の書き方で「∇・」とも書けます。
これが小泉さんの言ってる div → ∇ → 逆三角形!ってことですね。

なんでわざわざ∇って書き直すの?

とりあえず∇の謎は解けたんですが、そもそも div って記号をなんでわざわざ∇って記号に書き直すんでしょうか?

実はベクトル解析では、発散(div)のほかにも回転(rot)、勾配(grad)というのが出てくるのですが、これを∇という記号一つで表せちゃうので、とても便利なんですね。

まず回転(ローテーション)ですが、これはどのくらい渦巻いているかを表す量って考えると良いです。例えば台風をイメージしてみてください。台風の目の周りを風が渦巻いてますよね。あんな感じです。この台風の回転を

rot = ∇×

というように書きます。回転しているイメージとしてはこんな感じです(真ん中の周りを渦を巻いて風が流れている)。

回転のイメージ

私は高速ナブラは敵の周りを逆三角形に回っているので、「回転」から来ているものかと想像してたんですが、どうやら違ったようです…

次に勾配(グラディエント)ですが、これは今までと違って、向きの無いものに使います。例えば、気圧とか温度は向きが無いので矢印では書けませんね。

で、さっきの発散のところにも書きましたが、風は気圧が高い所から低い所に向かって流れるわけです。この「高い方から低い方に向かって」引いた矢印を「勾配」と言います。つまり、気圧の勾配が風になるってことですね。
※気圧と風の話はかなり単純化してますので、実際にはそんな単純じゃないはずです…私は流体力学詳しくないのであまりツッコまないで…

この、気圧と風の関係を数式で表すと、

  = grad 気圧 = ∇気圧

ということになります。「気圧」というベクトルじゃないものから、「風」というベクトルを作ってくれるのが勾配ということです。勾配のイメージはこんな感じになります(気圧の高い所から低い所に風が流れていく)。

勾配のイメージ

さて、div, rot, gradの3種類を解説しましたが、それぞれdivは∇の横に「・」を付ける、rotは「×」を付ける、gradは何も付けないと、∇の使い方が微妙に違ってます。 
ここでは具体的な話は書きませんが、この違いが実際に数式を計算するときにとても便利なんです。なので、わざわざ∇という記号を使うんですね。

実際の∇を使った数式

さて、今まであまり数式を使わずに説明してきましたが、実際∇を使った数式の実物を見てみましょう。

例えば∇を使った数式で有名なものに、電磁気の分析で使われる「マクスウェル方程式」というのがあります。皆さんが使っているスマホの電波も、この方程式に従って飛んでいるんだって聞くと、ちょっと身近に感じられるでしょうか?これはこんな感じの数式です。

∇・D = ρ
∇・B = 0
∇×E = ∂B/∂t
∇×H = j + ∂D/∂t

ただでさえ式が4本もあるのに、これを∇を使わないで表そうとすると、さらに本数が増えて複雑になっちゃうので、∇は大変ありがたいんです。

ちなみに一番簡単そうな∇・B = 0 だけ軽く説明してみると、Bというものは発散がゼロ、つまり絶対に発散しませんよって言っているんですね。
これをもうちょっと言い換えてみると、磁石には必ずS極とN極がセットになってて、S極だけとか、N極だけの磁石は作れませんよって意味になります。

また、この記事ではずっと風を例えに出してきましたが、ちゃんと風の流れを表そうとすると「ナビエ - ストークス方程式」というものになります。これはこんな感じの数式です。

v/∂t + (v・∇)v = -∇p + ν∇²v + f(x, t)

(v・∇)v の部分が顔文字みたいで可愛いですね。
※∇の左に・があるのは?とか、∇に²がついてるのは?とか、説明してない話が出てきますが、まあ、それは、うん…(解説放棄)

おわりに

というわけで、高速ナブラの元ネタになった数学記号の∇を解説しました。

数学が苦手な人にもわかるようなるべく簡単に書いたつもりですが、それでも嫌いな人には拒否反応が出るかもしれませんね…少しでもイメージが伝わってると嬉しいです。

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