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小説・寒椿(仮)

まず初めにこのnoteに記録してある記事の土台となるOther  World Kingdomについて。本体はチェコにある例のアレだが、わたしはかの王国の在り方に倣って自身の世界の決まりごとを整えた。
そのまた一つ前身には、わたしが育った田舎での、ヒエラルキーの根強く残る生まれた邑での歴史がある。
詳しくは過去記事を読んで貰えばそのあらすじが見えることだろう。

その土台を踏まえてわたしを作るのが、「自分を取り巻く人間関係はトランプのようなもの」といった記事での一文である。
まず、この世界では女性が絶対的上位である。
その下にヒエラルキーが存在しており、そのトップはKING。KINGは女性の下に位置してはいるが、それ以外でのトップに位置し、通常一人の女性に対して一つしかその椅子はない。当然、不在の時期もある。
現実社会で一般的にはパートナーだったり社会的には「配偶者」の立ち位置にある。
次がJACKだ。
これはKINGのすぐ下位に当たり、世間でいう「愛人」または「恋人」「彼氏」などの呼び名が通称である。複数もつこともある。もちろん該当の個体がなければ不在の場合もありうる。
よく勘違いしている奴がいるが、たとえばKINGが不在だからといってJACKの誰かがKINGになることはない。KINGは出会いの最初からKINGであり、逆に降格のようにJACKに落ちることもまた、ない。
そのまた下に位置するのがPAGEだ。
これはまだ学生であったり年若いもので、言葉そのものは“見習い人”だとか“訓練生”などの意味だが、まあ小間使いのようなものたちである。
若いJACKが降格のようにPAGEに落ちることはあり得る。が、その逆はない。
この下に家畜がいる。
家畜は文字通り、生物学的にもヒトではなく完全に家畜、つまり牛や馬や豚や鶏、犬たちである。生活のため働かせて役に立てたり締めて食うためのもので、愛玩動物は含まない。
そしてslaveどもである。
slaveにも上層のものと下層のものがある。わたしにとっては持って生まれた資質で決めることが重要で、加虐に耐えうる強度などでは決めず上層と下層は入れ替わらない。
加虐への耐性なんてものは訓練や慣れだからな。

お前らに言っておくけどな、これが現実世界でのわたしの生きてきた環境だぞ?
夢物語や妄想ではないのだ。
そこに、夢物語や妄想を繰り返して拗らせ続けたマゾもどきがやってくるからおかしなことになる。
どうも齟齬があるような違和感を抱えたまま過ごしてきた。
その一つがこのヒエラルキーにあった。
わたしが「M男募集」と示すときこのM男はJACKだったりする。どうやら、そのほとんどがそうらしいと気がついたのは全くここ最近のことだった。

どうして家畜以下の奴隷にまんこ舐めさせるんだよ。
どうして人間以下の便器と名乗るくせに生理の経血はNGなんだよ。
どうして奴隷にしてくれというくせに同じテーブルにつこうとするんだよ。
全てがおかしいだろ?
そもそも奴隷が主人の食事の準備をすることもおかしい。
それはわたしの場合KINGか、KING不在の時はPAGEがするものだ。(JACKのこともある)
だというのにお前らは食べ物を差し入れようとする。
個包装の小さなお菓子くらいならまだよそへ配ることができるからマシな方で、日持ちしない要冷蔵のケーキなどを持ってくる馬鹿はクラブだと特に多い。

ケーキが嫌いなわけではない。健康のため嗜好品の取り方を制限している。わたしの好みや体調のサイクルを把握しているJACKやPAGEになら命じて用意させることはある。それでもこちらから命じた時のみだ。
だから持ち帰らせる。
贈り物の押し付けが無礼不躾だということをわからせる必要がある。


黒の扉をいくつ開けると

部屋は黒い扉で、土間に当たる部分を過ぎると奥にまた黒い扉がある。そこで🟥の奴隷は薄いメッシュ状のアイマスクをつける。そこを開けると奥に広い洋間があり、窓はない。
入ると、そこに造花を生けた花瓶の乗った簡易テーブルがあり、そのほかには洋椅子が一脚のみだ。
そしてそに椅子にご主人様が座っておられる。
「支度をしなさい」
「はい。かしこまりました」
ご主人様は立ち上がり、さらに奥の黒い扉の向こうへ消えていった。
どうやら今日のご主人様はワークパンツに黒のハイネックのノースリーブをお召しになっていらっしゃるようだ。パンツの裾はヒールのショートブーツにインしてあった。
自分(🟥の奴隷)と面会の時にはご主人様はあまりあのようなラフすぎる衣装をお召しにならない。上品なシャツに黒いタイトなパンツにミュールのようなオープントウのものが多い。ご主人様の仕事の合間に呼び出されることも多いからかもしれない。
🟥の奴隷は薄暗い視界の中でクローゼットを見つけ、荷物をそこに仕舞い、脱衣しその洋服もそこに畳んで仕舞い、全裸になったその状態で一呼吸した。
そして土下座し、待った。

しばしの間の後カチャリと奥の扉が開き、パタンと閉まった。コツコツと足音が迫ってきた。ご主人様だ。
「顔をあげなさい」
「はい。かしこまりました」
「立ちなさい、そしてついてきなさい。」
「はい、かしこまりました。」
さほど広い部屋ではない。ご主人様は再び扉をカチャリと開けて、🟥の奴隷を招き入れた。

そしてパタンと扉は閉まる。

奥の部屋は広かった。視力での確認ではなく肌での感覚だ。空間がもう少し広がっているように感じた。
先の間の3倍はあるだろうか。しかし、わからない。くの字に部屋が曲がっているようで、縦長の部屋の右奥が見通せない。全てが見渡せはしない。その前に自分(🟥の奴隷)は黒のメッシュ状のアイマスクにより薄暗い視界で、元々の視力の悪さもあり見渡してもあまりうまく部屋の状態を把握できない。
しかしその奥のベッドの上に、ベッドを土台にしその向こうの壁に大の字に磔状態にされている人物の姿を捉えた。

部屋は元々薄暗く窓もなく、しかも自分(🟥の奴隷)もメッシュのアイマスクのせいでベッドの枕元に立たされ大の字で磔状態に固定されている人物が、こちらむきなのか彼方向きなのかわからない。
目を凝らしてよく見るとどうやらこちらに背を向けているようだ。そして、当然のようにそれは男性だ。
どうやって括られているのだろう。手のひらあたりがよく見えない。布か?
頭部は真っ黒だ。編み込まれた紐が見える。頭の後ろで締め付けるためのものか。その端は縛られてはいなさそうで、そのままだらんと2本の紐が肩あたりまで垂れ下がっていた。
「🟥、こいつが泥奴だよ」
誘導鞭を持ったご主人様がひゅんと鞭で空を切りその先を男に向けた。

昼食を召し上がる際のご主人様

とある週末の正午に呼び付けられた奴隷への命令はこう言うものであった。
「ホテルのルームサービスの焼肉チョレギサラダ、それとサーロインステーキセットをオニオンソースでね」と言うもの。
ご主人様は仕事の昼食時に来られるため12時前後ではあるが、サラダはともかくステーキのルームへの到着時間が難しい。どうしよう。
さあお前ならどうする?
冷めたステーキを目にするご主人様。大変に失礼である。恐ろしい。
ご主人様が到着した後にサービスが届く。そっちの方がいいのかもしれない。が、調教をいただいている最中であったら?
それとも、到着してすぐにお食事されたいとお考えであったら?
質問をさせていただくことにしようか。
自分で考えろと言われそう。

と、奴隷がわたしの命令に考えを巡らせているであろう時。
1時間とわずかしか時間がないので時間に追われた食事はしたくない。わたしはそう考えている。
しかし、わたしの食事の時の奴隷の作法というものを一度教えておく必要があると考えている。
和室でのパターン、洋室低めのテーブル、洋室通常、立食パターンなどいろいろだ。最下層の奴隷の場合立食というのはまずない。
なぜなら最下層の奴隷を公の場に連れて行くことなどあり得ないからだ。
そもそも、通常食事の場に奴隷がいることは基本的にはない。
食事を用意するのはJACKかPAGEである(わたしの場合)。
密室で、つまり奴隷監禁状態などの際、調教を中断してわたしが食事をとる、これはあり得るだろ?そういう時のお前らの在り方だよ。

到着するといつも通りスッと扉が開き、奴隷が言う。
「本日も来ていただいてありがとうございます。お食事の用意が整っております。ご確認いただけますでしょうか」
「うん。」
ソファーの前のローテーブルにチョレギサラダとサーロインステーキ、付け合わせのスープ、ライスが並んでいる。封筒は汚れないようにかソファーから見てテーブルの右上に位置しており、テーブル手前中央の食事の空中ごく近くに手をかざすと十分にまだ温かい。
「いい感じ。」
コートを脱ぐと奴隷がさっと立ち上がり「お召し物をお預かりします」と、いつも通り受け取ってクローゼットに仕舞った。
ソファーに腰掛け、奴隷が定位置に正座したのを確認して、「土下座」と命じ、奴隷の土下座を確認すると、
わたしは普段殿ような時も食事の際はそうするように手を合わせて「いただきます」といった。

サラダはチョレギが好きだ。
それにわたしは肉が大好き。魚も好きだ。アレルギーはなく、好き嫌いもない。
今日は朝早くに出社でお腹が空いている。美味しい。
肉を食していると、幼い頃生家にいた家畜の牛や豚の可愛い顔が思い浮かぶ。「残さず食ってやるからな」
サラダは少し取り分けた。
奴隷には与えずに食事を進める。無言だ。
奴隷の土下座がきちんとなされているか随時確認しながらの食事だ。主人も大変である。ちゃんとやれよ?お前ら。
モゾモゾと動いていたり、こっそりと楽をしようとしている様が少しでも見られたら食事を中断してでも即しつけなければならない。
こいつのため・・・わたしの気が散らないようにしつけておくこと・・・つまりこいつのためである。

ステーキを食べ終わりサラダも終えたのでサラダ皿にステーキの付け合わせのポテトや野菜を移した。それから先ほど取り分けた分のサラダも、その皿に戻した。
立ち上がり、土下座の奴隷の頭の近くにその皿を置く。
「顔を上げて、お前も食べなさい。」
奴隷が「ありがとうございます」と言って顔を上げる。
「手を使って食べなさい。」直接口から食べるような犬食いは嫌いなのだ。前から言っているが、わたしは犬(みたいなこと)が嫌いだ。
衛生を気にした様子をしたが、皿は持ち上げずにすぐに聞き手で摘んで食べ始めた。えらいぞ、いい子だ。
わたしはテーブルに戻り、スープを半分くらいまで飲むとそれも奴隷のところへ持っていき、「今日は特別だ。」とカップを床に置いた。
口をつけた飲みかけのものを与えることは滅多にない。何かの褒美か、よほど機嫌がいいかどちらかだ。
驚いた表情をして「あ!ありがとうございます」と言った瞬間、奴隷の手元からサラダの中のコーンが一粒落ちた。
「ああ!申し訳ございません!!」瞬間、
「この馬鹿者!」という声と共にカップのスープが顔面にぶちまけられた。
スープまみれになり、奴隷は目を閉じた状態で「申し訳ありません!申し訳ありません!」と必死にいうも、立ち上がったわたしはその日一つだけ持ってきていたゴム製の鞭を奴隷の体に振るった。

「顔を洗ってこい」「はい。ご主人様」
その後奴隷が戻ると、「仕事に戻る」といい支度をした。
奴隷がクローゼットからわたしのコートを出すのでそれに肩を通す。用意した飲み物を並べさせ、受け取り鞄に仕舞った。
チラと封筒を見て目を逸らすと、「お願いします、お願いしますお受け取りください、どうかお願いします」と奴隷は懇願した。
封筒を受け取るとそれを鞄に仕舞い、再びテーブルに視線を向けた。ライスだけが手付かずで残っている。
わたしは昼食で米を食べないのだ。
「お前、わたしが出て行ったらこの米を食べろ。」
「?はい。かしこまりました」
「いいか?床に正座だ。米だけはきちんと箸で食べろよ?」
「はい。かしこまりました。」

野菜は手を使える生き物が犬食いしていいものではない。
米は手を使うことができる生き物が、みっともなく犬食いしていいものではない。敬意を払え。米はお前より上だ。
間違っても便器がうんこ食う時と同じやり方をするな。

「床を片付けろ。野菜も残すな。わかったか。見送りはしなくていい。」
扉は開かれ、そして閉じられた。


黒い扉の男・泥奴

奥の部屋の磔の男の前に🟥の奴隷は立ち尽くしている。
「こいつが泥奴だよ」と紹介されたのはいいが、その後ご主人様は一切口を開かないのである。
薄暗い視界の中ただただ立っていると、フラッとよろめきそうになる。
誘導鞭を持ったご主人様も、🟥の奴隷の向かって左側に立ってじっと壁の男を見ている。
沈黙。
「うぅ・・・」男が呻いた。
どうやら口枷をされているようだ。前頭マスクで息も苦しいのかもしれない。
「反省したかな?」ご主人様がその男に言った。
うっすらと目が慣れてくると、その男・泥奴の背中に赤い?太い線がいくつも縦に走っているのがわかる。これは、見たことがある。何度も。一本鞭の後だ。
ご主人様の鞭は最終的に背中を覆い尽くす。が、その途中経過では左肩から右腰にかけてのものと、右肩から左腰にかけてのものから中央縦へと埋まるので、最初の段階では大きくV字状態に出来上がってゆく。
自分(🟥の奴隷)をここへ呼ぶ少し前にご主人様が打ったのだ。改めて意識された。
反省したかな?の言葉を受けてか、男は「うぅ、うぅ」と漏らしながら頭を上下に振っている。

「じゃあ今から食事の時間だ。」
誘導鞭を置いて、続けてご主人様が言う。
「🟥、蝋燭を立てろ。そこにあるナイフを熱しな。」
「はい。かしこまりました。」
右奥の床に燭台と白い仏壇用らしき蝋燭(なにぶん視界が悪い)、チャッカマンがあった。ふらついて転んだりせぬように慎重に進み、しゃがんで用意をした。
燭台は鈍い金色で、一本用の仏壇用らしく安定感があるものだった。

バチン!「うーっ!!グムうぅぅう!!!」突然男が声を上げた。
男の足元にぽたぽたっと何か水分のようなものが落ちた音がした。足元のシートが硬いのか、はっきりと音が聞こえたのだ。
「ふー・・・フゥゥゥ」息を荒くしている。
近づいてきたご主人様に、小ぶりなペンチに挟んだ小さな塊をペンチごと渡された。「落とすなよ」「はい」
子供の小指の爪ほどもない何かサラミの切れ端のようなものが挟んである。しかしすぐにそれが何かわかってしまった。
「熱したナイフでそれを焼け」「・・・はい。かしこまりました」「焦がすなよ?」「はい。承知しました」

視界が悪いのでメッシュの間から目を凝らして対象物を凝視し焦がさないよう緊張し、冷や汗を感じた。ペンチの先のものを熱したナイフに当てると、ジュッ・・と音を立て一筋、煙が上がった。
裏返してまた同じようにした。
ナイフの熱はすぐ低温になってしまうようで、再度加熱して次は一旦それを跪いた自分の膝において、挟んでいる箇所を変えて同じようにした。
ジュッ・・・
煙が上がる。
焦がしてはならないとなるとこれで十分な気がする。
「できたか?」
ご主人様が言う。「はい、できました」「寄越せ」
顔を上げるといつの間にか男の前頭マスクが脱がされている。頭部はスキンヘッドかそれに近いようで丸みを帯びた肌色が視界に入る。自分(🟥の奴隷)はペンチごとそれをご主人様へと渡す。
ご主人様はそれを受け取り、移動して男の顔のところへ持っていき、「食え」といった。がちん!と音がした。どうやらペンチの先と男の歯が当たったらしい。
「・・・・・・・・・」「・・・・」
その後ガムを噛むような咀嚼音が数回聞こえ、男が何かをごくりと飲み込む音がはっきりと聞こえた。

男の右足の足元を見るとペットシーツを重ねたような状態になっており、その後ろ近くにあれは・・・盆栽のハサミ?キッチンバサミだろうか。持ち手が大きくその持ち手に比べると刃が小さめなハサミがある。血痕のようなものがそのハサミを染めているようだ。
それを見ているとハサミのある自分(🟥の奴隷)の視界にご主人様が現れた。
ご主人様はしゃがんでそのハサミを手に取り、使えるように手に収めた。

一度閉じたハサミの刃をシュッ、と開くと同時に目があった。
目が合ったまま・・・窓のない部屋、メッシュの目隠しの薄暗い視界の中で、血まみれの裁ち鋏を持ったご主人様は笑った。


















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