見出し画像

シードルの長期熟成について

一般的にシードルの長期熟成については、まだデータが多くありません。通常はタンクでの発酵に4〜7ヵ月、瓶詰めした後の泡を溶け込ませる発酵に2ヵ月以上かかるため、醸造に半年〜9ヶ月かかり夏頃に新酒が出来上がります。瓶内発酵が終わった時点で十分飲み頃なので、購入してあまり時間を置かず直ぐに楽しむのが一般的。しかしながら生産者達は、経験からその可能性について知っています。

実際私もシードルを沢山ストックするワインバーで、4年ほど前のヴィンテージのシードルを飲みましたが、とても美味しかったのを覚えています。

HÉROUT(エルー)では、今年2月にマリーアニエスが大切に保管してきたヴィンテージから熟成シードルを比べてテイスティングする会を開催しました。
私が保管庫を見学した時に、彼女は自分の「好奇心と研究の為に」この醸造所を継いだ時から毎年ストックし続けていると大切なそのコレクションを見せてくれました。「こんな事するのは私くらいかしら」なんておどけながら。

そして今年2月は、フランスのシードル業界においてひとつの大きな前進的なイベントがありました。ノルマンディー地方のカルバドス県の街カーン にて、初の国際的シードル見本市が開かれたのです。ヨーロッパを中心に多数の国から80を越える生産者達が集い、前半2日間は業界のプロ向けに、最終日には一般公開をして、シードル文化を分かち合いました。

画像1


HÉROUT(エルー)では先駆けて年明けにはスタッフ達で熟成シードルのテイスティングをしていたのですが、その会期に合わせて、ヴィンテージシードルを楽しむ会を公開で行いました。カーンで地元の食材を使用した創作料理のレストランFragmentsフラグモンのシェフにご協力頂き、1997年から2018年までのヴィンテージから12本をセレクトしそれに合わせたお料理でのマリアージュを楽しみました。
その経験は彼女の予想通り素晴らしいものだったと言います。
品質劣化はなく、各ヴィンテージの特徴を残しながら深みや凝縮感を増す味わいは、良質なシードルの可能性を物語っています。
マリーアニエス個人的には8〜10年くらい熟成したものが好みだそう。

フランスでは、シードルをワインのコードでガストロノミーとして楽しむ事がメディアを含めあちこちで提案されるようになってきました。まだまだフランスでも多くに知られている訳ではないですが、パリでもヴィンテージシードルや産地、生産者の違いを比べられる、そして積極的に新しいこの価値をシェアしてくれるソムリエやカーヴ(ワイン専門店)、飲食店が増えつつあります。

ノルマンディーでは13世紀には既にシードル名産地と言われてきた歴史がありながら、シードルはその飲み方が限定的なままで、ワインのようにその価値を世界中に広げるに至っていません。

栽培から醸造まで一貫して造るシードル・フェルミエの、潜在的な可能性と新しい文化これから益々知られるところとなっていくでしょう。そして、日本にも遅からずこの流れがやってくることでしょう。

いいなと思ったら応援しよう!