事件・犯罪のないまちづくりを!『防犯紙芝居』の作成過程と苦労話!
2023年度、ぼくたち、認定NPO法人好きっちゃ北九州では、一般財団法人ハウジングアンドコミュニティ財団様のご支援をいただき、『防犯紙芝居』の作成にチャレンジしてきました!
その過程の全容と苦労話をアウトプットしてみます!!
1 活動概要と活動対象範囲
各地域における「防犯まちづくり」の活動として『パトロール』が実施されています。パトロール活動は直接的な効果や成果を感じにくい性質もあり、活動者が減少したり固定化しやすくなります。そこで、『防犯紙芝居』を組み入れることで、活動が活性化することを目的にしています。北九州市内での各地での活動へと展開していくことはもちろんのこと、データにてインターネット上に公開し、どこでも使用可能な媒体にしています。
2 活動に至った理由や背景
防犯パトロール活動は様々な地域で工夫されて実施していますが、無機質・機械的な活動になってしまいがちです。活動者が集合し、ただ黙々と地域内を歩いて回り、拠点へと戻ってきて終了というものが一般的です。
こうした活動に、ほんの5分程度の『紙芝居』での学びを組み込み、防犯や地域づくりに関する知識や目線について学ぶことで、活動の活性化や参加者どうしのコミュニケーションを促すものです。
3 活動内容と成果、課題と解決方策
(1)活動状況とニーズの把握、実行委員会の設置
本件の提案による活動を進めていくにあたり、北九州市安全安心推進課や各区役所、そして各地域と協議し、地域での防犯まちづくり活動の現状や課題・ニーズについて確認し、コロナ禍を経て前述のような課題がより一層深まっていることを確認しました。
当NPO法人内での防犯やまちづくりに精通したメンバー有志と北九州市立大学防犯・防災プロジェクトMATE’sのメンバーで、この取組みを主導して進めていく実行委員会を設置いたしました。
(2)作成手法・作成母体
実行委員会において、ZOOMを用いたオンライン会議にて、どんな紙芝居の内容にするか検討を重ねました。メンバーそれぞれが素案を持ち寄り、それについて相互に意見を出し合いストーリーを作り上げていきます。
4コマ漫画風に仕上げていくことを決定し、4段階の起承転結のストーリーを考えていきます。
紙芝居としての面白さを追求するとともに、防犯に関する知識を十分に組み込むことや、地域づくりとしてのコミュニティの育みの視点などを盛り込むことを重視することとしました。
また、当NPO法人内に設置した前述の実行委員会のみならず、北九州市立大学防犯・防災プロジェクトMATE’sにおいても、プロジェクト内で完結した作品をつくることとしました。
毎月2回の活動として、通年で24回の活動の場があることをイメージして、全24作品をつくっていくことを目標にしました。
(3)ストーリー企画の難しさ
単に防犯に関する1コマを作成することは容易いのですが、ストーリー仕立てにすることや、一方的な知識供与型にならないようにすることがとても難しく感じました。
例えば、「防犯において、注意すべき点はコレです。気を付けてください」というような伝え方では、活動者に対して上から目線の『指導』になってしまいがちです。そこで同じ生活者の目線に立ったようなストーリーを組み入れることで、受け取られやすさも重要視しました。
また、多世代が見て分かる、聞いて分かるストーリーにすることを重視することや、初見である読み手でも読みやすい、平易な言葉づかいやストーリー展開にするように努めました。さらには、4コマの1枚ずつにおいて、その絵が「見て分かる」ものにすることにも注力しました。
(4)イラスト作成
実行委員会として、ストーリーの素案を組み上げていくなかで、最も大きな課題は、イラストを描いていくことです。いくら防犯や地域づくりに関する知識や経験があったとしても、万人に伝わる絵が描けるかと言うと、その技術を持ち合わせることは困難です。
そこで上手に絵を描くことのできる方々に協働を依頼し、描いていただくようにしました。謝礼金の金額設定としても、プロの画家やイラストレーターに発注するというよりは、本件の趣旨にご理解・ご賛同いただき、ともに作成していくというスタンスとさせていただきました。
イラスト作成にあたり、学校法人中村産業学園造形短期大学部・造形芸術学科の黄禧晶教授及び研究室の皆さま、池廣佳澄様、森本優梨花様、そして北九州市立大学防犯・防災プロジェクトMATE’sの皆さまに作業にあたっていただき、ご尽力いただきました。
(5)イラスト作成の依頼方法
実行委員会にて検討したストーリーをもとに、簡素なデッサンをしたものに、読み文と注釈をつけて、絵を描いていただく方に渡します。
データ上で描く方、油絵で描く方、色鉛筆で描く方、なかにはAIを駆使して描かれている方もいらっしゃいました。
実行委員会メンバーが空想したストーリーが、実際に見事な絵になって表れてきたときには、何とも言えない感動を覚えました。
なお、作者名については紙芝居の読み文の紙面に記載させていただき、著作権においては当法人に譲渡していただき、今後のネット上での発信も含めて承諾をいただいております。
(6)実証実験
順次完成していくイラストを用いて、北九州市内の6箇所(広徳市民センター、陣山市民センター、医生丘市民センター、上津役市民センター、尾倉市民センター、貫市民センター)にて、それぞれにおいてテーマを設けて、実証実験いたしました。
① 企画内容が伝わるか
まず、何と言っても、こちらが表現したいことが紙芝居によって伝わっているかを確かめました。初めて紙芝居を実施したときには、とても心細かったですが、実施してみると皆さんから大きな拍手をいただき、感想を聴いてみると、「とても分かりやすかった」「良い気付きになった」「もっとこんなストーリーがあると良い」「以前にこんな事件があったことがあった」など、狙い通りの反響をいただきました。紙芝居を通じて、視点の育みやその後のコミュニケーションの活性化には有用なものであることを確認しました。
初めて実証実験してみたときの様子。
② サイズ感、材質
次に、紙芝居のサイズ感や材質を確認していきました。全国どこでも使用していただけるよう、A3サイズを前提としており実験してみたところ、「十分見える」というご意見ばかりで、サイズはA3で確定いたしました。
また、画用紙にプリントアウトした紙面を貼ったものと、ラミネート加工したものの両方で実施したところ、ラミネート加工の方が見えやすい上に、保管して使用することを考えると、汚れたり老朽化しにくいラミネート加工の方が望ましいとのご意見もいただきました。
③ 時間の長さ
防犯パトロールに組み込む展開としての紙芝居において、その時間の長さはとても重要です。長過ぎると飽きてしまったり集中力が続かなかったり、一方で、短か過ぎると実施する甲斐がないものとなります。紙芝居一枚当たりに1分も掛からない程度で、4枚でも3分程度で終わる長さに構成したところ、長過ぎず短か過ぎずちょうど良いとの反響をいただきました。
④ 多世代にわたる展開
実験を重ねていくなかで、「この話を是非、子ども達にも聞かせてやってほしい」という意見をとても多くいただきました。パトロール隊の大人向けを前提に作成してきていましたが、子ども達に向けて実施してみると理解が及ぶのかなど確認してみました。
実施してみると、子ども達はとても真剣に聴いていただいており、その後の感想のアウトプットにおいても、『地域の人たちに、もっとあいさつがしたい』と頼もしい声を多く聴くことができました。子どもに対しても有用であることを確認しました。
⑤ “紙芝居形式”か“単語カード形式”か
紙芝居を完成させていくにあたり、とても大切な課題がありました。それは紙面の両面をいかに構成するかです。
おもて面のイラスト部分は、もちろん1枚目⇒2枚目という順に展開するわけですが、読み文は裏面に書いていますので、1枚目を持っている段階では、4枚目の裏面に1枚目の読み文を書いておく必要があります。1枚目を読み終わって、1枚目の読み文を一番後ろに回したときに、2枚目の読み文が書いている構成です。これを“紙芝居形式”と定義します。このデメリットは、たった4枚しかないストーリーにおいて順番が複雑になることや、データで展開する際にややこしくなるというものです。
一方で、“単語カード形式”とは、おもて面のイラストの裏にその読み文があることです。順番が分かりやすい上に、後のデータ展開も容易となります。
この双方を実験してみたところ、単語カード形式においては、紙芝居の展開において、紙面を置く⇒次の紙面に持ち換える、この手間が入ることや、読み手の一人で完結することが難しいこと、そして紙面の置き場所が必要なことから、やはり“紙芝居形式”を採用することとしました。
作業量が増えましたが、データ展開するための別のデータを用意することとしました。
⑥ スクリーンでの投影による活用
A3サイズの紙芝居において、その現場にいる参加者が目の届く範囲での実施となるとご覧いただける人数は限定されてしまいます。
一方で、多くの人数が参加している会場においても、この紙芝居が使えないかと実験してみました。スクリーンに投影して映し出すイラストに合わせて、読み文を読んでいきます。
これについても一定の効果・成果を確認できて、有用であることを確認しました。一方で、パソコンや手元を見ながらの読み方よりも、画面と実際の紙芝居の双方を示して読んだ方が、より伝わりやすいということも判明しました。
(7)ホームページへの掲載
当NPO法人のホームページにこの紙芝居を掲載しています。
もちろん無料で、全国どこでも、すぐにプリントアウトして使用できる素材になっていますので、多くの地域で活用されることを願っています。
画面上でイラストと読み文の双方が確認できる画面閲覧用と、プリントアウトして使用できるPDFの双方を掲載しています。
参考まで、
『不審者ってどんな人?』の紙芝居を添付します。
もうひとつ参考まで、
『子どもからのあいさつ』の紙芝居を添付します。
4 今後の予定
実際の紙芝居を20セット作成しました。市役所や各区役所、関係大学や地域などに展開して使用していきます。北九州市は130の校区があるため、実物での展開は今回はできませんでしたが、ホームページ上にデータを公開しているため、各地域の活動において、それぞれでダウンロードして、プリントアウトしていただき、順次使用していただくなど、より多くの地域で活用されるよう働きかけを継続していく予定です。
みんなでせっせとラミネート作業などをするときの様子(笑)
どこから依頼されたわけでもなく、
どこから宿題にされたわけでもなく、
自分達から、「こんなものが地域活動に必要だよな」って自発的に取組みはじめたチャレンジでした。
成果や効果が出始めるのはこれからだと思います。
とても大切な大きな一歩を踏み出したと思っています。
作って終わりにならずに、これからの展開がより一層重要だと思いますので、この記事をご覧の皆さんは、活用していただいたり、宣伝したいただいり、気にかけていただけると嬉しいです。
事件や犯罪の無い、住み良いまちは、住民みんなの共通の願いです。
そんな防犯まちづくりへ、ちょっとしたツールとなっていってくれることを願っています。
今日もご覧いただきありがとうございます。
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