胡瓜の味

特定のこれとは言えない、夏特有の匂い。
生命を持った街々。
何かしなくてはと焦る喧騒と、何でもできると錯覚させられる温度。
子供だった僕は、理由もなく外に出た記憶がある。1人で、友達と、家族と。
その記憶は、大人になっても簡単に引き出せる棚に仕舞われている。トリガーはまさしく、夏そのもの。

度々、その隣の棚も覗いてみる。
制服ではない友達の格好を、気にしてないふりをした。冷凍チャーハンにラップをかけてチンをした。皿を洗って、頼まれてた洗濯物を取り込んだ。ライオンのごきげんようを流し見した。
なんとなくだが、大人ぶっていた。

夏は、大人と子供の境目がなくなる稀少な季節だと思っている。
いつだって子供ぶれるし、大人ぶれる。
恥ずかしい気持ちは暑さに弱い。溶け出したその気持ちは蝋のように火を高め、自分の何かを激らせる。

この気持ちを歌詞にした。
子供じみた話し言葉で書いたり、大人ぶって辞書で調べた言葉で書いた。
大人を皮肉してみたり、子供をガキンチョにしてみたり。

この曲があなたの夏の記憶に、最後尾でも良いので潜り込めますように。

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