小説家デビューが決まったら読む記事(3)その他
どうも入江君人です。
本記事はこれから小説家デビューする人に向けた雑務対策の記事になります。
締切の守り方
出版社と仕事をしていると締切があります。
これにも最初は苦労することでしょう。いままでの締切はせいぜい「賞の投稿がワンシーズンおくれる」とか「約束したネット投稿に間に合わなくなる」程度だったのが、いきなり予算と契約が関わってくるBtoBに変わるのですから、緊張感もひとしおというものです。
それだけに、締切に振り回されることも多いでしょう。
ですが当然、これは悪しき事柄です。
ではどうやったら締切を守れるのか? まずは適切な締切日の設定です。執筆速度は人と、そして作品によってちがうものなので、自分にあったスケジュールをこれから覚えていきましょう。
そして、進捗を逐一編集者に報告しましょう。その際、作業が遅れていても構いません。「遅れている」という情報共有がなにより大切だからです。
先程はBtoBだなんだと言っておいてなんですが、創作業はそこまでビジネスライクに進むものでもありません(だからこそ厄介なのですが)。編集者だって一年目の新人がそんなにストレートにいくことなど期待していませんので、気軽に真実を報告してください。
一年目ではとくに、締切に苦しめられると思いますし、なんなら破ってしまうかもしれません。
しかしそれも長く続くものでは有りません。ここでしっかりと時間感覚を掴んで、いずれは楽しく作業できるようになりましょう。
ただし、これが二度三度つ続いて改善されない場合は注意が必要です。
とくに、締切一ヶ月前になってようやく筆が動き始めるとか、どんなに長い締切があっても、結局ラストの二週間で全てかたづけている、となっている場合は創作の工程を見直すべきでしょう(たまにそれで何十年も生活しているクジラみたいな人もいますが)。
なぜなら、そもそもの話として執筆が楽しいものならば、その原稿は最速で出来るはずだからです。極端な話、絶好調でなければすべて不調だと考えて、自分の創作工程を見直しましょう。(こちらについては流石に長くなりすぎるのと、完全に創作論の領域になるため、本書の姉妹書籍「スランプから始める小説の書き方(近日出版予定)」を御覧ください)
著者校正の仕方
さて、めでたく新作の作業が終わり、完成原稿を送ったとしましょう。
すると、その原稿は校正によって入念にチェックされます。これは誤字脱字だけにとどまらず、出版社の自粛ワードや表現、なかには月齢や歴史などの面からも見てくれます。
そうしてチェックされた原稿を、今度はあなたが再チェックします。
誤字脱字だったら素直に修正し、あるいはわざとやっているなら「ママ(そのまま)」と書いて活かします。
このとき校正記号という記号をつかうことになるのですが、これは編集者に「一覧表と例をください」と言えば教えてもらえます。
ちなみにですが、ここでの大型修正はあまり褒められた行為では有りません。校正はあくまでミスチェックのためにあって、この段階で変えてしまうと、あとはもうチェックする瞬間がなくなるからです。
それでもよっぽどの問題点なら仕方ないですが、「締切に間に合わなかったので、最悪校正で直せばいいだろう」という考えはやめましょう。
出版社との付き合い方は以上になります。次からはその他の項目、人間関係、SNS、作業環境について説明します。
SNSとの付き合い方
Twitter、Instagram、Facebook、ブログなど、SNSアカウントは最低でもひとつはあると便利です。ウエブ上での窓口になってくれますし。そこから仕事に発展することもよくあります。
一方で、SNSが原因で仕事を失うという例も、最近は非常に増えています。発言には十分に気をつけてください。
これは「炎上しないように気をつけよう」というだけではなく、たとえばネット小説からデビューした人が、更新報告をする感覚で公式発表前の新刊発売日を漏らしてしまったりだとか。「〇〇県人ってホント田舎者で嫌だなー」と【自虐】を言ったつもりが、出身地を知らない人たちから顰蹙を買ったりなど。
また、「自分はSNSを前から使っているし大丈夫だろう」という人も意識の切り替えが必要です。作家のアカウントは一般人のそれとはまったく違うので、企業の公式アカウントを運営するくらいに思ったほうがいいでしょう。
これもあって、作家と個人のアカウントは別にしたほうが良いのです。それでも切り替え忘れなどのミスがありますので、くれぐれも注意しましょう。
感想、エゴサ
感想はとても嬉しいものですが、それだけに、受け取り方は注意しなければなりません。
まずもって、読者の大半は感想をネットになど書きません。エゴサで見れる感想は「ネットに感想を上げる」という習慣がある、ごく一部のものだけなのです。
またその感想にしても、作者が目にするとは思ってもいないような簡単な、精査のされていなものばかりです。
たとえば「〇〇に似ていてつまらなかった」という感想、こちらの「〜〇〇に似ていて」の部分はほぼノイズで、本当はただあわなかっただけです。
似たような言葉で「感情移入できた/できなかった」「キャラが立っていた/地味だった」なども、言葉の言い換えにすぎません。
何か読んだとき、私たちは反応したくなります。おもしろかったとか、つまらなかったという理由では満足できずに、説得力を増す言葉を付け足したくなります。しかし、それらは精査がされていない、あやふやなものでしかありません。
次に酷評についてですが、これはまったく気にする必要はありません。
酷評が発生する理由、それはほぼマッチングエラーです。
ネットも商業もそうですが、創作は人の目に触れると対象読者以外にも届くようになります。ホラー嫌いの人がうっかりホラー要素のある作品を読んでしまったり、「ランキングに乗っているので読んだのに、面白くなかった」というのもこれが理由です。
そうした悲劇は作品のせいではなく、ランキングシステムや売り方の問題ですので、やるとしたらそこからいじるべきであって、作風で対応する部分ではありません。
それでも、なかには意味のある貴重な批評もあるのだから読むべきだという意見もありますが、……しかし、それを担保するのは誰でしょう? 貴重な批評と意地悪な酷評は読んで見るまで違いが分からず、混じり合ったものもおおいです。
自分の心を守るためにも、距離を取りましょう。
ちなみにこれは残念ながら良い感想にも言えることです。感想の中にはとても嬉しいことを書いてくれて、心が救われるようなこともたくさんあります。ですがそういったものばかりを浴びていると、やっぱりバランスを崩してしまいます。
その最たるものがエゴサです。エゴサはとても楽しいもので、読者の生の反応は嬉しく、なかには貴重な意見もあります。
ですがそんな健康的なエゴサは、せいぜい一作品あたり数時間といったところです。
なんとなくエゴサをしていたら、それはただの中毒です。
これはインターネット中毒にもつながる根の深い問題なので、意識的に止めましょう。
協力するクリエイターとの付き合い方
小説を書いているとイラストがついたり、コミカライズすることがありますが、その時の相手クリエイターとの連絡は、基本的に編集者を挟みましょう。
なぜなら編集者にもその人なりの戦略や理想があって表紙を発注しており、それは作者の理想とは異なることも多いからです。これはネガティブなものではなくて、たとえば作家が知らないような販売上のテクニックや、広告の打ち方との兼ね合いのためだったりします。
「自分の本なのだし、自分でコントロールしたい」という気持ちは分かりますが、それは許されません。そもそもの話、他のクリエイターに仕事を依頼し、また身銭を切って報酬を払っているのはあくまでその出版社だからです。
さらに、その出版社のブランド力、販路、メディアミックス能力なども、当然その出版社のもので、作者は借りているにすぎません。すべてをコントロールした理想の本を作りたいというのなら、それは自分の責任と予算でやるべきです。
それよりもむしろ、作家側の行動で足を引っ張らないように気をつけましょう。
具体的には、「設定資料をください」という要望に対して自分専用の難解なテキストを10万文字も送りつけたりだとか、仲良くなろうと思ってSNSでやたらと話しかけて辟易されたりだとか、勝手に連絡を取り合って編集者も知らない要望をしたりだとか、あるいは先程のSNSでの発言で知らないうちにNGにされていたりなどです。
出版はどこまでいっても共同作業です。あなたにはあなたの仕事があり、手を出しては行けない領域もあります。ここで集団制作の基礎を学ばせてもらいましょう。
アニメ化
作品が売れるとアニメ化やドラマ化をすることがあるのですが……しかしすみません、ここに関しては、私も正しい立ち居振る舞いは「わからない」とさせてください。
というのも、ここまでくると個別の事例が多すぎて一般化できないからです。
メディアミックスは、売れていれば必ずなるというものでもなく、プロデューサーの意気込みで決まることもあれば、会社内外の摩訶不思議な力学でお鉢がまわってくることもあります。また、現場の空気も「雇われ仕事だったが奇跡のマッチングでやる気満々になった」とか「やる気のあった立ち上げプロデューサーが飛ばされたので抜け殻状態になった」までばらばらです。
作者が全面協力することで良い結果になることもあれば、そのせいで駄目になることもあります。また放ったらかしで勝手に傑作になることだってあります。これは本当に時の運です。
こういうときは一般的に「後悔しないように選択をするのがいい」とされますが、それはちょっと耳目にいい言葉かなとも思います。まずは自分の活動の安全を確保し、用心深く観察しましょう。
新年会、授賞式の行き方
出版社には新年会や授賞式があります。こちらはコロナでしばらくなかったり、その後もいろいろな事情で変わったようですが、ぼちぼち再開してきているようです。
こちら、基本的には編集さんに「どういう格好で、なにを持っていけばいいのか?」を聞けば問題ありません。基本はスーツやドレスで、床屋に行き、風呂に入り、必需品と名刺を持っていけば手ぶらでも大丈夫です。ただし、授賞式はともかくとして、新年会のフォーマルは必須ではなく、私服で参加する人も2割ほどいます。
唯一の持ち物として、名刺だけはあると便利です。始めて行く新年会の場合は二〜三百枚ほど用意しておきましょう。
最後に注意点です、新年会に限らず、その場所の写真をSNSにアップロードする場合、かならず開催後にしましょう。
当然ですが、新年会には世界的に人気な作家さんが集まります。そんな人達の居場所が悪意ある人物にバレたらなにが起きるかわかりません。また、他の人の顔がわかる写真を上げる場合はかならず許可を取りましょう。これは基本的に取れないと考えていいです。
他の作家との付き合い方
デビューしたら、できれば作家の知り合いを作りましょう。
これについては向かない人もいますし、無理にとは言いません。しかし横のつながりはさまざまな面で助けになります。
正直、本書の内容は作家の知り合いが二〜三人いたらほとんど学べるようなものばかりです。一人では大きな悩みでも、知り合いと共有すれば重さは一気に軽くなります。
また、そこまで大したことでなくても、志を同じくする仲間がまわりにいるのは楽しいことです。
私自身、これまで創作をつづけられたのは間違いなく仲間がいたからです。皆さんもできれば試してみてください。
さて、では知り合いの作り方ですが、賞デビューの人はまず同期や直近の先輩作家さんなど「お互いに知り合いを欲しがっている人」と繋がりましょう。
仲間を作るには、相手も仲間を欲しがっていないと始まりません。その点、新人や一、二世代上の人ならつながりやすいのです。
この考えは他のデビュールートでも変わりません。同時期にデビューした人や、その年の新人さんなどに声をかけましょう。またSNSでの会話で仲良くなることもあります。
その際はくれぐれも無理に仲良くなろうと焦ったりせずに、失礼のないように接しましょう。作家業は公私が入り混じって勘違いしがちですが、お互いに競合他社の社長同士でもあります。
私が先程から「友人」ではなく、仲間や知り合いと言っているのはこのあたりが原因です。もちろん友人関係になることはありますが、似て非なるものであることは意識しましょう。
次に、新人以外のつながりですと、やはり趣味が強いです。
ゲーム、グルメ、飲酒、読書会、釣り、ハイキング、フットサル、車、バイク、TRPG、ボードゲームなどなど。
上の世代は人間関係も出来ていて、どうしても新人は入って行きづらいです。そんなとき、同じ趣味を持っていればぐっと話しやすくなります。
このとき、「是非遊びたいです!」とか「会場おさえますよ!」と行動できる人はとても強いです。たいがいが誘われ待ちで、誘う人は多くないので、それだけで一気に輪が広がります。
私自身、ボードゲームやTRPGには憧れがあって、大喜びで参加していましたが、おかげで、先輩方にもずいぶん良くしてもらいました。
最後に、最近は作家さんの交流を目的とした、限定のディスコードサーバーなどもあります。
健康について
作家業で最大の懸念、それが健康被害です。
近年、座りっぱなしの作業による健康被害が顕著に報告されるようになりました。人間の体は運動を前提に作られているため、長時間椅子に座って執筆するのはよくありません。そのため、作業環境はしっかりと整えておきましょう。
・運動、ストレッチ。
まずは最強にして最安の健康対策、運動です。
正直、コレさえ出来ていれば後はどうでもいいくらい効果があります。執筆中は一時間に一度は立ち上がりましょう。スマートウォッチや時報があると便利ですね。
また、日常的に体を動かす習慣をつけましょう。
これはなにもジムに通う必要はありません。日々のストレッチや、散歩で十分です。とにかく体を動かしてください。
私もよく散歩に出ます。ネタ探し、文章につまったとき、歩きながら考えるのはとても有用です。
・スタンディングデスク。
読んで時のごとく、立って作業できる机です。
イラストレーターさんや漫画家さんなんかがよく使っていますが、小説家はモニター位置を適切に調整すれば前傾姿勢にならないため、そこまでの効果はありません。
・二十四時間換気。加湿。
狭い部屋で長時間作業していると、それだけで二酸化炭素濃度があがって作業効率が落ちます。まずは二酸化炭素濃度計でPPMを測り、1000を超えるようでしたら24時間換気扇を導入するのがおすすめです。
その際は熱交換型換気扇にすると、エアコン効率が落ちにくくていいですね。ちなみにたまに勘違いしている人がいますが、エアコンに換気能力は(基本的に)ありません。あとお香を焚くとかも気分はあがりますが二酸化炭素をたくさん出しているので、換気が出来ないならおすすめしません。
また、冬場は特にですが、部屋の乾燥は目と喉にダメージがあります。タオルを干したり加湿器を導入して湿度をたもちましょう。その際、超音波式加湿器はパソコンにダメージを与えるのでおすすめしません。
・メンタルクリニック。
作家業はメンタルをやられやすいです。脳に何人もキャラを住まわせ、締切にキリキリしつつ、椅子に座ったまま感情を高ぶらせるという、わざわざ病むための訓練をしているのではないか? という作業をしているので当然といえば当然です。
私は不幸なことにメンタルクリニックに行くという発想自体なかったので、一時期などは不眠、蕁麻疹、注意力低下、遅刻グセ、緊張、など、いま考えたら絶対に行っていたほうがよかったなという時期にいけませんでした。
ですので、メンタルクリニックは軽い気持ちで行きましょう。
・ぎっくり腰。
まずならない対策ですが、ぎっくり腰は圧倒的に寒い時期が多いです。部屋と体を暖かくしましょう。そして毎日の運動とストレッチです。とくに、普段やらない運動(物の上げ下げとか、大掃除など)の前後には入念に準備体操しましょう。
それでもなってしまった時は、まず整骨院に行ってください。ちゃんとした医療品や治療を受けると回復時間がまるで違います。
また、痛いからと行って寝続けるのもよくないです。直感には反しますが、ぎっくり腰は立っていたり、歩いていたほうが治りやすいのです。
・腱鞘炎、肩こり。
創作に熱中していると、首や手首を痛めることがあります。固い机の上に手首を乗せていると、それだけで症状が悪化しますので、タオルやリストレストを引きましょう。
また、ディスプレイの調整もしましょう。まずは輝度調整です。極端にピカピカしたり、逆に暗かったりすると、それだけで目が疲れます。部屋の照明は明るめにして、ディスプレイも同じくらいに調整しましょう。
位置も重要です。作業する範囲は、視線が並行か、わずかに下くらいに調整しましょう。また、タッチタイピングができると首の稼働がなくなるため、肩こりが減ります。
基本的に、肩こり、腱鞘炎、ぎっくり腰は、なってしまう時点で作業環境がおかしいです。回復した後は、二度とならないように対策しましょう。
それでもなってしまう場合は整骨院で詳しく相談しましょう。
トラブルが起きた時、起こした時は
最後に、これまでのすべての場所で起こりうる、トラブル対策についての話をします。
作家をやっていると、いつかトラブルがおこります。
連絡ミスですぐに短編が欲しいとか。締切が縮まった。進めていたメディアミックスがなくなった。なんだか知らないところでスタッフが炎上していた。などなど。
憤懣やるかたない事がおきるでしょう。
そのとき、怒るなとはいいません。ただし、怒ったまま行動するのはやめましょう。
なぜならトラブル発生直後は情報がすくなく、誰に非があるかわからないからです。
たとえばこんな事例があったとします。
あなたは同人誌を作ろうと思って好きなイラストレーターに表紙を発注した、しかし何度かリテイクを出すもクオリティが悪く、結局別の人に頼んだ。すると元のイラストレーターは「ボツにされた」とSNSに投稿、あなたは炎上してしまった。
これだけならあなたは被害者ですね。
ですが、相手の認識がこうだったらどうでしょう?
イラストレーターは忙しいスケジュールのなか、発注者の「あなたの絵のファンだ」という情にほだされて書くことにした、ところが発注者は小説はプロだがイラストは素人で、見当違いのリテイクで手間が掛かってしまった。イラストレーターはギリギリのスケジュールの中でなんとか納品したが、ある日ボツにされていたことを知る。すでに告知もしていたイラストレーターは自分のファンに説明せざるを得ず、それは十分に抑揚の効いた告知だったが、どうしても言葉の端々に恨みが見えてしまい、タイミングも悪くてバズってしまった……。
どうでしょう? こうなってくると、どちらかというと悪いのは自分ですよね。
このように、トラブルで一番多いのはどちらもちょっとずつ悪い状態が、あるきっかけで爆発したときなのです。
本来なら二人で「こんなつもりではなかったのですが……」と謝罪して、あとは手をとりあって解決できたはずなのに、あなたが最初に怒り狂ってしまったらどうにもなりません。
ですので、トラブルが起きたらまず、怒りとは別に「トラブル対処モード」に入り、原因究明と着地点を探しましょう。
ただし、例外が二点あります。
それは「相手が怒り狂っている場合」と「明確に悪意がある場合」です。
相手が怒り狂っている場合というのは、先程の逆パターンですね。相手が激怒して、あなただけが悪いと思いこんでおり、どんな客観的な言葉も届いていない状態。
この場合はもはや、仲直りを目的にはできません。あなたはあなたを守るために、周囲への説明や、警告文の送付、訴訟の検討などをしなければなりません。
つぎに「明確に悪意がある場合」ですが、これも相手が最初から詐欺師なら話は簡単なのですが、心変わりによるものの場合は厄介です。
相手はもはや、あなたを弾除けや生贄としか思っていないのに、あなたはまだ以前の友情を信じて被害を拡大させてしまう……なんてことになりがちです。
繰り返しになりますが、あなたはあなたと、そしてなによりあなたの作品を、まずは守らねばなりません。「怒り」の力はそのために使いましょう。
あとがきに代えて、これらはあくまで瑣末事
以上で【小説家デビューしたら読む本】を終わります。お疲れ様でした。
さて、本書では出版契約からトラブル対策まで、さまざまな対策を書いてきましたが、これらはあくまで瑣末事であり、創作の本質とはなんの関係もありません。
いくら税金対策をしたところで、文章はうまくなりませんし、トラブルを華麗に解決しても、執筆は一文字も進みません。せいぜんその経験を創作に活かせるくらいですが、それは人生のすべてに言えることです。
いちばん大切なのは、まずなによりも書くことです。あまり入れ込まないようにして、自分の創作に集中しましょう。
ちなみに、創作で悩んでいる方は、本書の姉妹作にあたる【「書けない」から始める小説の書き方(近日出版予定)】にて解説していますので、どうぞご覧ください。
最後になりますが、本書は二十名以上の作家や編集者に取材はしてありますが、あくまで私の経験をまとめたものでしかありません。
まだまだ足りない部分はあることでしょう。そういった疑問は逐次アップデートしたく思いますので、入江君人のTwitterアカウントまでお送りください。
それではみなさん、執筆頑張ってください。私もがんばります。
入江君人