展覧会レポ:「日常を芸術に変える」寺岡海の革新的な中継アート - 京都 Hakari Contemporary -
【約800文字、写真8枚】
「自宅の花を中継する」という企画。妙ちきりんな空気に惹かれてお邪魔した。
お部屋の花瓶を実況中継する
この展示は、ただの花瓶を通して、日常の1コマをYouTubeライブで中継するというもの。
「それを観測する人がいるかいないかに関わらず、それがそこにあることに惹かれています。」¹ アーティストがキュレーターに送ったメールの抜粋。
個人的な話だが、私は「観測をする人」がたいへんに好きだ。専門家が、よく分からない画面を見つめ続け、目盛りを読み、記録する。
たいてい専門家は記録し終わると、ふっと息を吐いて「間」を作る。その「間」は、知ることのなかった世界へと案内してくれる。
だが、作品のモニターには、見慣れた花瓶が映し出されたままだ。
「~ギャラリーの空間にかけられたモニターに、わざわざそのような日常的な光景が映し出されていることに不思議な感覚を覚えるかもしれない。~」²
自分はなんのために、花瓶なんぞを見ているのか?
何の変哲もない、花瓶だ。
この花は、え?
あ、…。
あぶねー、意識をもって行かれるところだった。
室内に広がる空
会場の奥、窓のないスペースに、空が広がっていた。
広島県福山市と、京都府京都市の空をプロジェクターで映し出している。
「雲の裏側を確かめてみたい」²と撮影を始めたらしい。ここでも、雲を観察するという行為が、私たちを知らない世界へと導く「間」を作り出す。
私と、私ではない私。あなた。あるいは、私たちがいない世界…
おっ、ベンチの横にスマホ落ちてるよー
「~そういえば、展示空間で時計をみないのはなぜだろうか?」²
時計だけではない。この会場には、作品の近くにあるはずのタイトルや解説文が一切ない。
もっとも、説明は不要だ。空だもの。タイトルなんぞ見なくても、わかる。いや、もしや「くう」と発音すべきなのか?
この妙ちきりんな世界観に没頭してしまう。これぞボットー体験だ。
時を刻む水
出入り口に置かれた作品《Snow Clock》。冬に降った雪を集め、砂時計職人に封じ込めてもらったこの作品は、氷が溶ける不確かな時間を測る³。
この展覧会に、どこを探しても新しい情報は何もない。もっとも、専門家も説明も不要だ。
体験するための展覧会。立ち止まって作品を感じる瞬間、かすかな「間」が空く。そのかすかな「間」に、心がゆらめいた。
今、空を見上げれば、そこにも新たな「間」が生まれるはずだ。
それは、きっと個人的でユニークな体験となるのだろう。
ソース;
¹:フライヤー「You (Me)|寺岡海」Hakari Contemporary
²:ステートメント「You (Me)|寺岡海」平野成悟
³:web【hakari contemporary】「Kai Teraoka / 寺岡 海」(Works)
https://hakari.art/artist/kaiteraoka/
※素敵な画像は、イラストACより「エトユニグラフィック」さんの許可をえて使わせて頂いております
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
スキ・コメント・フォローなどいただけますと、お礼の品をもって参上したいくらい喜びます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?