展覧会レポ:中谷芙二子「霧の彫刻」姫路市立美術館で体験する幻想的なアート
【約1,200文字、写真13枚】
アートに興味がない人さえも魅了する作品があります。展示された前庭では、手を伸ばし、作品の世界に浸る人たち。私もその魅力に触れてきました。
霧がアート?
この作品は、考えるのではなく、感じさせてくれます。身体の全感覚を使って体験するアートです。現代アートの世界は歴史や文脈を理解するとより楽しめると言われますが、この作品はとても幻想的な気持ちにさせてくれます。
「子供はもちろん若い人も老人も、そして犬もみんな大変喜んでくれた。それぞれ思い思いに眺めたり、中へ入って笛を吹いたり、佇んだり、瞑想的になるという人もいた。」¹
姫路市立美術館での展示
中谷芙二子氏の《白い風景―原初の地球》霧の彫刻は、姫路市立美術館の庭園で展示されています。霧は自然そのもので、液体窒素を使ったスモークとは異なり、飲み水としても使える³というこだわりがあります。
霧のアーティスト、中谷芙二子
1970年の大阪万博で「霧の彫刻」を発表し、国際的に高い評価を受けている中谷芙二子氏。彼女は「霧を通して子どもたちに自然を返したい」²と述べています。
霧に触れていると、なぜか不思議な気持ちになります。その場の空気を深く吸い込み、自分の中にあるプリミティブな部分が発露するのです。
姫路城と霧の共演
霧が吹き出し、立ち上がりながら寄り集まって、真っ白なドームを形作ります。風の動きが見えたり、お城が見えたりと、幻想的な光景です。
「四方から発生する霧は、互いに出会って交流し、風に吹かれて上昇する。」¹
この圧倒的な美しさはなんでしょう。凛としつつ、この土地の自然に溶け込んでいます。
中谷芙二子氏の作品を楽しみにきたら、真夏の雲に姫路城。一見バラバラな無数の点と点が絡まり合い、自然とアートの世界に没頭してゆきます。これぞボットー体験です。
霧の発生と包まれる体験
霧の発生は1時間に2回あります。何度か鑑賞しましたが、誰もいない回も。
今度は離れてのんびり見ようと、木陰へ移動します。
風の影響でしょうか、グッと霧が大きくなりました。数秒で、木の回りが白く包まれてしまいます。油断のためか、霧は恐ろし怪物のようでした。
足元から霧に包まれ、湿った空気が肌に触れる感覚。
この後、濃い白に包まれます。平衡感覚がつかめません。
「~人間と自然の境界線が曖昧なものとなり、視覚を奪われた私たちはやがて肌に触れる湿度に大気の揺らぎを感じ、湿った空気が引き立て土や草木の匂いから、自然がすぐそこに存在することを五感で知覚し、人間社会の日常から自然の世界へと意識を飛翔させる。」¹
自然の美しさと恐ろしさとでもいうのでしょうか。まさに畏怖の念を抱く、特別な体験をさせていただきました。
おまけ“商店街のアート”
姫路にお邪魔した日は酷暑だったので、脇に見えたアーケード街へ(グーグルマップを無視して)。こういうことをするから迷子になるんですよね。
日陰は涼しいです。商店街のアーケードの下を歩くのも久しぶりで、ワクワクします。
「おっ、鳥獣戯画?」と思ったら、トリックアートなんですね。上に立つと、オナラをしたことになるのね。楽しい街でした。
ソース;
¹:姫路市立美術館 美術館だよりVol.154「中谷芙二子『霧の彫刻』ーその原初性」小川美波
²:姫路市立美術館 美術館だよりVol.156・157「中谷芙二子《白い風景―原初の地球》霧の彫刻#47769」小川美波
³:NHK Eテレ 日曜美術館「中谷芙二子の『霧の彫刻』が体験できる場所」 2023.9.3
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