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異文化理解力 ②評価方法と③説得方法

引き続き、異文化理解力のブックレビューです。
1回目はこちら

『異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』


指標② 評価方法

先日のコンテクストのレベルの違いとは別に、評価方法、すなわち相手へのネガティブフィードバックを間接的に与えるか否かが文化によって異なります。

コンテクストがローかハイかと、フィードバックを直接的に与えるか間接的に与えるかって、それぞれ対応しているように思いませんか?
これが違うのが、ややこしいところなんです。

アメリカ文化は極めてローコンテクストの文化で、ネガティブフィードバックもはっきり直接的に言いそうなものですが、実はポジティブなフィードバックに紛れ込ませ含みを持たせて伝えます。
逆にハイコンテクストな文化なのに、ネガティブフィードバックのみは直接的に伝えることで正義を通そうとする文化もあります(フランスなど)。
日本はハイコンテクストかつ間接的ネガティブフィードバックなので、この点では混乱は少ないですね。

図で見るとわかりやすいので、本書から引用します。

異文化理解力


イギリス、アイルランドなども、英語圏でローコンテクスト文化ですが、確かにネガティブフィードバックは間接的ですね。

実体験と気づき

以上のことを知らなくて失敗した経験があります。

実例1.
アメリカのクライアントの担当者がどうもプロジェクトに協力的ではありませんでした。こちらの要求をはっきり直接的に伝えなければと、ネガティブフィードバックを大胆に行なったところ、クライアントにブチギレられました…。

アメリカ人は率直大胆なコミュニケーションを好むとの誤解から生じた問題でした。

・今後の自分への課題
上記テーブルを活かし、傾向としてどのようなコミュニケーションが好まれるかを国ごとに参考にする。

指標③ 説得方法

この章では西欧内部における物事の理解や実践の仕方が異なることにも触れていますが、1番日本人にとって重要な違い、西洋文化と東洋文化における説得方法の違いについて述べます。

この2つの文化で決定的に異なるのは、思考アプローチです。西洋文化は特定的な、アジアは包括的な思考アプローチをとっています。

相手を説得しようとする時、アジア人は周辺の情報を話しながら本題に入り結論を述べますが、これが西洋人には冗長に聞こえるのです。

アメリカ人とアジア人を比較対象した実験があります。部屋にたたずむ1人の女性の写真を撮ってくださいと言ったところ、アメリカ人は顔のアップを撮る人が圧倒的に多く、逆にアジア人は人物全体を少し遠方から背景を含め写真に撮ることが多かったのです。

別の実験では、ある人物に関する何気ない日常のストーリーを聞いてもらい、その後話の要約をしてもらいます。その時、アメリカ人は要約でその登場人物に焦点を当てることが多く、アジア人は全体的なストーリーを要約することが多いのです。

これはつまり西洋文化が、中心人物に集中する思考パターンをとるのに比べ、アジア人はその背景や中心人物との関係に注意を向ける思考パターンをとることを示しています。

西洋文化では個別に物事を分析できるとする信念があり、一方でアジアでは環境が行動に影響すると言う強い信念が根付いています。

つまり西洋文化では、ミクロからマクロに物事を捉えるのに対し、アジアでは逆にマクロからミクロに物事を捉える傾向にあります。

この違いは至るところで見られ、例えば住所にしても、アジアでは県→市→町→番地の順番で表示されますが、西欧では逆に番地から県へと大きな視点に移っていきます。

日付は、アジアでは年月日と表示されるのに対し西欧では日月年として表示されます。さらには名前に至っても、アジアでは家族の名前(姓)から個人の名前で示されるのに対し、西欧では個人の名前の後に家族の名前が続きます。

特定的か、包括的か、、、そんなこと正直意識したこともありませんでした。
この違いで今までいろんな揉め事があったことに気が付きました。

実体験と気づき


実例1.
西洋の人は日本人に比べ、意思決定が早いとは思いますが、例えばクライアントからの無理な要求に、そこから生じるチームや請負業者たちへの影響、他のプロジェクトとの兼ね合いを考えないまま決断を下す傾向にあり、いつも不満に思っていました。

それは私が包括的思考アプローチにあるから違和感を感じる、個別の関係に着目する思考パターンによるものなのですね。

実例2.
もう一つ、私は同じチームで西洋系の部下とアジア系の部下と一緒にマネジメントしていたことがありますが、どうしてもタスクをこなすプレイヤーとしてはアジア系が勤勉で優秀だと思っていました。
アジア系は、全体像を説明すると、個々のタスクにおいても、互いの影響を考えた実行を行なってくれます。例えば、本質的に同じタスクAとタスクBについて、タスクAに変更があった場合、その影響がBにも及ぶか否かを考え対応することができます。
一方で西欧系のメンバーは言われたタスクしかできないと思っていました。それが未熟さや経験不足故かと思っていましたが、でもそれが彼らの思考アプローチで、その分特定のタスクに集中しているし迅速に対応することができるメリットがあるわけですね。

目から鱗が落ちまくりました。

・今後の自分への課題
自分の思考パターンでさえ自覚的でなかったので、今後自分が包括的アプローチをとっていることを認識する。
特定的アプローチを取る相手に対しては、まずは課題にだけ着目して解決策をとる。
その後、周囲との関係に範囲を広げ、相手を説得するアプローチを取る。
正誤ではなく、自分の思考アプローチを認識し、相手のアプローチに沿った説得方法を用いる。時間が許せば、このアプローチの違いを相手に説明するのも有効。

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