首吊りロープウェイ
アライさんの押入れの中には首吊り用のロープがあるのだ。それは去年の今頃に使ったものなのだ。アライさんは押入れを開こうとするたびにゾッとするのだ。触るとあの時の感覚を思い出すのだ。それがとっても怖いのだ。苦しいのだ。
なのに、嫌ではないのだ。
アライさんがアライさんとして、命を終わらそうとしたことは、アライさんにとって褒めてあげたいことなのだ。
あの時のアライさんは、大きな決心をした上で、それを実行に移すことができたのだ!
アライさんはまだまだ大丈夫なのだ。
それでも、やっぱり、ときどき悲しくなるのだ。どうしようもないのだ。だから、あの時のアライさんは、死なずに、今のアライさんになってしまったけど、あの縄を頼りに行ったり来たりしているのだ。
アライさんは、あの時のアライさんをひとりにはさせないのだ。
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